著者
李 徳周 Deok-Joo Rhie
出版者
基督教研究会
雑誌
基督教研究 = Kirisutokyo Kenkyu (Studies in Christianity) (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.1-32, 2011-12-05

同志社大学神学部と韓国教会の関係は日本組合教会の朝鮮教化の展開から開始された。しかし1919年三・一独立運動の後、組合教会を背景にする留学生は減り、様々な教派あるいは神学的な背景を持つ神学生または牧会者たちが留学した。1920年代から彼らは同志社の自由主義的な雰囲気の中で、カール・バルトの新正統主義神学、脱西欧的日本神学、実践的なキリスト教社会主義などを学んだ。50余りの留学生たちは帰国後、彼らは韓国の教会、進歩的神学、教育、社会運動等様々な分野で活躍した。
著者
タガー・コヘン アダ Ada Taggar-Cohen
出版者
基督教研究会
雑誌
基督教研究 = Kirisutokyo Kenkyu (Studies in Christianity) (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.63-81, 2009-06-26

ヘブライ語は多層からなる言語である。今日おもにイスラエルで話されている現代ヘブライ語はその最新の段階にある。本稿はヘブライ語の諸層を概観する。ヘブライ語は何世紀もの間、ユダヤ人にとって聖なる言葉であり、彼らに宗教的なアイデンティティーを付与してきた。19-20世紀に復興した現代ヘブライ語は非宗教的な文脈で用いられる。この変化は、現代のユダヤ人が自らの言語を「イスラエル・ヘブライ語」と呼んで、古代ヘブライ語が付与するのとは異なるアイデンティティーを求めていることと関連している。
著者
小原 克博 Katsuhiro Kohara
出版者
基督教研究会
雑誌
基督教研究 = Kirisutokyo Kenkyu (Studies in Christianity) (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.14-32, 2002-07-29

本論文では、基督教史の中で現れてきた、戦争をめぐる三つの類型、すなわち、絶対平和主義、正戦論、聖教論の間に生じる緊張関係を解釈し、また、それらが歴史的にどのように受容されてきたのかを考察する。平和を実現するために自らが信じる正義を実行するという考えはキリスト教社会においても、イスラーム社会においても同様に見られる。現実には両者の正義はしばしば衝突してきたが、キリスト教の伝統的な正戦論の中では他の宗教の正義の問題はほとんど扱われてこなかった。本論文では、そうした課題に応えるために比較宗教倫理学的視点を導入する。
著者
藤原 佐和子 Sawako Fujiwara
出版者
基督教研究会
雑誌
基督教研究 = Kirisutokyo Kenkyu (Studies in Christianity) (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.39-58, 2018-06-26

本稿は、ブラジル出身のエコフェミニスト神学者イヴォネ・ゲバラとLonging for Running Waterの貢献についての考察を目的に、1章ではコンスピランド・コレクティヴ、2章ではラテンアメリカにエコフェミニスト神学が誕生する経緯を概観する。3章では、ゲバラのライフヒストリーを概観し、4章では、身体に強調点を置く、ゲバラのポストドグマティックなイエス理解を検討する。
著者
三宅 威仁 Takehito Miyake
出版者
基督教研究会
雑誌
基督教研究 = Kirisutokyo Kenkyu (Studies in Christianity) (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.1-23, 2015-12-15

リチャード・スウィンバーンを第一人者とする哲学的有神論は、ア・ポステリオリな帰納的論証により、「神は存在する」という仮説の真である確率が真でない確率よりも高い(神の存在の蓋然性が2分の1以上である)と主張する。スウィンバーンはこの命題を論証するための方法論として、ベイズの定理に基づく確認理論を応用する。ベイズの定理により、「神は存在する」という仮説の事後確率は、この仮説の事前確率と証拠の事前確率と証拠の事後確率の関数として評定される。本稿はスウィンバーンのこの方法論を分析し、どのような場合に「神は存在する」という仮説の蓋然性が上下するかを検討する。
著者
中野 泰治 Yasuharu Nakano
出版者
基督教研究会
雑誌
基督教研究 = Kirisutokyo Kenkyu (Studies in Christianity) (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.11-35, 2005-11-05

バークレー神学で展開される普遍贖罪論は、正統派カルヴィニズムの二重予定説に対抗する形で、「内なる光」、「主の訪れの日」、「反抗しない、受動性」という三つの概念によって展開される。しかし、特にこの「受動性」という概念を巡って、バークレー神学の評価は大きく分かれる。本稿では、彼の思想の持つ意義を、当時の神学的思想的状況の中で批判的に考察することによって解明する。考察の結果として分かるのは、「反抗しない」という事態は「信仰さえも求めない」程に徹底した受動性を意味し、神の働きかけに対して魂の扉を開けるという積極的意義を持つことである。それ故、フォックスと同様に、彼はあくまで神の働きかけを深い沈黙の内に待ち望むべきと説くのである。よって、バークレー神学は、消極的態度の根源であるとの従来の評価とは異なり、クエーカーの素朴なメッセージを保持することに重要な役割を果たしたと言えるだろう。