著者
東田 有加 大橋 一友
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.153-159, 2014-04

本研究では周囲からのタバコ煙の曝露を受ける非喫煙妊婦(受動喫煙妊婦)の実態と原因喫煙者を検討した。5ヵ所の産婦人科クリニックを受診した823名の妊婦を対象とし,喫煙状況を自記式質問紙調査した。受動喫煙妊婦は妊娠初期54.7%,中期54.3%,末期56.5%であった。原因喫煙者は夫が最も多く,妊娠初期79.4%,中期75.2%,末期76.2%であった。試験紙による尿中コチニン濃度を用いてタバコ煙への曝露レベルを半定量的に評価し,高濃度曝露群と低濃度曝露群に分類した。受動喫煙妊婦の高濃度曝露のリスクを高める原因喫煙者について多重ロジスティック回帰分析で検討した。高濃度曝露率は妊娠時期による差はなかったが,高濃度曝露のリスクを高める原因喫煙者は中期では夫(OR 11.8, 95% CI 1.4〜100.5),末期では夫以外の家族(OR 4.6, 95% CI 1.3〜15.8)であった。職場の喫煙はどの時期でもリスク要因ではなかった。妊婦の受動喫煙,とくに高濃度曝露の予防のためには,妊娠時期に応じた原因喫煙者を妊婦に伝え,家庭内での完全禁煙をめざす指導を行うことが重要である。
著者
大賀 明子 佐藤 喜美子 諏訪 きぬ
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.423-431, 2005-01
被引用文献数
4

周産期における生活状況をとらえ, その生活状況から現代の里帰り出産の実態を明らかにすることを目的に, 東京近郊都市に居住する乳幼児の両親を対象に調査を実施した。回収率25.2%, 506組の夫婦を分析した結果, 次のことが明らかになった。出産前に自宅を離れた妊婦の92.0%, 出産後自宅以外に退院した褥婦の95.7%は妻の実家で生活していた。生活サポートは, 実母が81.8%など親族ネットワークに支えられた状況であった。父親の21.9%は分娩前から, また28.1%は出産後から母子と別れて生活していた。(1)妊娠中から妊婦が自宅以外で生活, (2)実家に近い地域で分娩, (3)自宅以外に退院, (4)妊娠中から分娩後まで父親は新生児とは別に生活, (5)母親と新生児の自宅への帰宅は3週間以上後, (6)父親と新生児の接触は数日に1日以下, という6つの条件すべてを満たす伝統的里帰り出産をしていたのは17.2%存在した。里帰り出産における医学的な問題は解決の方向に向かっているが, 親役割獲得の上では, 新たな社会的問題が潜在する可能性がある。里帰り出産がわが国の習慣として存在し続ける背景を明らかにし, 内在する社会問題に対する取り組みが必要である。
著者
松岡 知子 堀内 寛子 山中 亜紀 伊藤 倫子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.398-404, 2000-12-01
参考文献数
16
被引用文献数
5
著者
永松 美雪 矢野 潔子 原 健一
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.519-529, 2014-01

女子大生および既婚の就労女性とパートナーの避妊に関する要因を明らかにすることを研究目的とした。平成23年10〜12月までに,九州北部地域で,同意を得た女性466名へ調査を実施した。調査項目は,女性とパートナーの年齢,社会的立場,避妊行動,人工妊娠中絶の経験,避妊の意思決定,女性とパートナーの関係性,女性自身と女性からみたパートナーの平等主義的性役割態度,将来の避妊に対する自己効力感で,佐賀大学医学部倫理委員会の承諾を得て実施した。有効回答を得た241名のうち現在パートナーが存在する114名で,妊娠を望んでいる女性11名を除いた103名中,本研究の分析対象は20歳代未婚の女子大生40名と30歳以上既婚の就労女性44名とした。女子大生が避妊行動を実行できることは,避妊の意思決定ができること,女性とパートナーの関係性が良好で,将来の避妊に対する自己効力感が高いことが関連していた。避妊の意思決定ができることは,女性からみたパートナーの平等主義的性役割態度が高いことが影響していた。既婚の就労女性が避妊行動を実行できることは,避妊の意思決定ができること,将来の避妊に対する自己効力感が高いことが関連していたが,女性とパートナーの関係性や平等主義的性役割態度は影響していなかった。
著者
齋藤 祥乃 岡山 久代
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.396-404, 2014-07

本研究の目的は,分娩後の女性において,骨盤ベルト(トコちゃんベルト)着用が子宮復古を促進し,マイナートラブルを減少させることを仮説とし,解剖学的に,また質問紙調査によって検証することである。対象は,正期産で単胎を経膣分娩した分娩後3〜7日目の褥婦とし,骨盤ベルトを着用する介入群30名と非着用の対照群11名に分類した。評価方法は,縦型オープンMRを用いて分娩後1週間, 1か月, 2か月の各時期の内子宮口を撮像し,恥骨尾骨ラインまでの距離を計測した。また,同時期のマイナートラブルの発症数を検討した。結果,内子宮口の位置は,介入群では分娩後1週間から1か月(p<0.01), 1か月から2か月(p<0.05)に有意な下降を認めた。同様に対照群は, 1か月から2か月のみに有意な下降を認めた(p<0.01)。分娩後1か月の時点では,介入群が対照群よりも有意に低くかった(p<0.001)。一方,マイナートラブルは,両群に差がないことが示された。介入群において分娩後1週間から1か月の内子宮口の下降が促進されたことから,分娩後1ヶ月までの子宮復古における骨盤ベルトの有用性が実証された。ただし,マイナートラブルに関しては,効果が検証されなかった。
著者
下敷領 須美子 宇都 弘美 佐々木 くみ子 井上 尚美 嶋田 紀膺子 藤野 敏則
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.171-179, 2006-04
被引用文献数
3 2

奄美群島は,南方文化の影響を受けつつ独自の文化的背景をもち,合計特殊出生率・第3子以上の出生割合が高率であるという特徴を有している。本稿の研究目的は奄美群島の子育て環境の地域特性について明らかにすることである。まず,母子保健事業と保育施策について実績値の分析を行い,さらに奄美群島全市町村の母子保健担当保健師と母親を対象に,子育て支援の実態と課題について聞き取り調査を実施した。その結果,以下の結論を得た。(1)母子保健事業の実態としては,28週以後の妊娠届出率が高いなどの課題をもつが母子保健推進員が整備活用されている。(2)保育所が整備され,待機児童は実質的に0である。(3)保育師からみた子育て環境の地域特性は,家族・親族近隣からの豊富な子育て支援,大らかな子育て観,「子は宝」という価値観などがあげられた。(4)母親からの聞き取り調査からも,子育てに関して地縁・血縁による支援を受けていることが明らかになり,その背景には受け手側も支援者になる支え合いが存在していた。(5)子育て中の一番の支援者は夫であったが,複数の支援者から臨機応変に支援を受けており,多くの母親が楽しみながら子育てをしていた。
著者
松崎 愛 本多 千恵子 布施 明美
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.390-403, 2005-07
被引用文献数
1

比較的高強度の運動を定期的に行う若年女性の月経随伴症状の出現傾向を年代間で比較検討することを目的に, 部活動で陸上競技を行う中学生(J群), 高校生(H群), 大学生(U群)について, 身体的, 競技的背景, 月経現象, および月経随伴症状について調査し, 以下のことがわかった。月経周期が正常である選手は, J群50.9%, H群59.1%, U群71.0%であった。月経随伴症状は, 「下腹部痛」の頻度が最も高く, J群45.0%, H群51.5%, U群61.3%で, 加齢に伴い明らかに高頻度を示した。J群とH群は月経2日目に症状が集中した。一方U群は, 月経1日目に高頻度を示す症状が多く, さらに「イライラ感」や「乳房痛」が月経前に高頻度でみられた。U群は他2群と比較し正常周期が高率であったことから, U群の年代で女性ホルモンの分泌が安定する選手が多くなると推測される。U群の諸症状が月経1日目に高頻度を示すのは, 症状が月経前から月経前期まで持続する選手の割合が高かったことが影響していると考えられる。以上のことより, 若年競技者は大学生を境に, 月経随伴症状の出現に変化が現われることが示唆された。
著者
藤岡 奈美 村上 彩乃 山科 尚子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.86-94, 2014-04

本研究は,男子大学生の性行動・避妊行動の実態,およびこれらに影響する性意識,性的態度との関係について明らかにすることを目的とし, A県内の男子大学生318人(有効回答数277)に実態調査を行った。この結果,対象の平均年齢は, 20.9±1.2歳であり,性交経験「あり」と回答した者は186人,初交年齢の平均は17.6±2.1歳であった。性交経験者のうち,現在のパートナーの有無について,その人数は,「1人」89.7%,「2人」4.3%,「3人以上(最大8人)」6.0%であった。避妊行動は,「あり」と回答した者は178人で,避妊行動の頻度は,「毎回」140人,「ほとんど」8人,「半々」5人,「ほとんどしない」8人であったが,その一方で,避妊行動の必要性について「必要だ」と大半が認識しているものの,実行が伴わない状況であった。性的態度は,性交経験の有無において,性交経験がある者が性に寛容であり(P<0.001),とくに初交経験が早い者のほうが寛容であることを示した。一方,避妊行動を実施している者が性の責任感は強く(P<0.05),とくに毎回避妊している者が高かった(P<0.001)。
著者
山本 浩世 田中 美樹 高野 政子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.110-117, 2009-04
被引用文献数
2

本研究の目的は,母乳不足感を訴える母親の認識と,その認識が母乳育児の中断にどのように影響しているかを明らかにし,母親のニーズに基づいた看護職の支援のあり方について示唆を得ることである。調査対象者は1ヵ月健診を受診した異常がない母親および乳児で,無記名の19項目からなる自記式質問紙を用いて調査した。母乳不足感がある母親のなかには母乳育児への強い思いや,医療職からの励ましにより母乳育児を継続できている人がいた。一方で,「母乳をあげても児が泣き止まない」「母乳が足りないと思いミルクを補足したら児が泣き止んだ」という体験をした母親は「赤ちゃんが満足するのはミルクではないか」や「ミルクをあげれば泣き止むから,母乳より簡単」というような認識をもち,その認識が母乳育児の中断に影響を及ぼしたのではないかと考えられた。今回の調査から,母乳不足を感じた母親がミルクを補足するかどうか不安になる頃の支援が重要であり,母乳育児を継続できるよう,産後1週間頃に看護職が電話で様子をたずねたり,産後2週間健診などの看護介入の推進が示唆された。
著者
武田 江里子 小林 康江 加藤 千晶
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.86-92, 2013-04

産後1ヵ月健診を受診した母親177名を対象に,「現在のストレス内容」について自由記述によるアンケート調査を実施した。有効回答の得られた166名(有効回収率93.8%)を分析対象とした。SPSS Analytics for Surveys 4.0を用いてテキストマイニング分析を行った。全体では【今後の心配】【夫の協力がない】【子どもが寝ない】【子どもの泣き・ぐずり】【家事が大変】【寝不足】【思いどおりにいかない】【情報の混乱】【母乳の不足感】【育児が大変】【自分に対するやるせなさ】【自分の時間がない】【自分へのねぎらい】【複数の子育て】の14カテゴリーが抽出され,そこに【初産】【経産】というカテゴリーを加え16カテゴリーとし,カテゴリー間の結びつきをみた。初産婦・経産婦で同じストレスは多く,そのなかでも【思いどおりにいかない】ストレスは両方に多くみられた。それぞれに特徴的なストレスもあるが,いずれのストレスにおいてもそのストレスのみでなく,他のストレスとの結びつきをみることで,ストレスの本質的なものが察知できると考えられた。
著者
佐原 玉恵
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.132-141, 2007-04
被引用文献数
1

本研究の目的は高校生の性に関する知識,価値観,行動について分析し四国A県の高校生の性の実態を調査することである。四国A県の高校6校に通学する高校生630名を対象に性交,避妊法,妊娠,人工妊娠中絶,性感染症についてアンケート調査を実施し565名から回答を得た。四国A県の高校生の性の実態調査の結果,知識面の特徴は,1.性に関する基礎的な知識が不足していた。価値観の特徴は,2.性交については全体の約6割の人が容認していた。3.人工妊娠中絶について全体の約8割が否定的な意見であった。行動の特徴は,4.女子の性交率は全国平均よりも高く,避妊率は低い結果であり,全国平均に比して女子は性行動が活発であるという特徴が示された。知識,価値観,行動の関係の特徴は,8.性に関する価値観と行動にはずれが生じていた。9.コンドームの使用法の知識について男女間の差はみられなかったがコンドームでの避妊の実施率は男子より女子が有意に低かった。以上のことより,性に関する基礎的知識の教育,女子に対する避妊法,避妊することを要求できる行動の教育が必要であると考えられた。