著者
島田 三惠子 鮫島 道和 保 智巳 新田 紀枝 大橋 一友 白井 文恵
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

妊娠中から産褥期の母親の生活リズムおよび生活習慣と、乳児の睡眠覚醒リズム等のcircadian rhythmの良否および生活習慣との関連の有無を明らかにする事を目的として行った。対象:大阪府内の研究協力病院の母親学級(参加者の合計328名に説明)と妊婦外来でリクルートし、研究参加に意思表示した妊婦75名のうち、同意書が得られたのは平成19年11月迄に出産予定の妊婦60名であった。縦断的に追跡調査できたのは産後1ヶ月の母子53名、産後4ヶ月の母子41名であった。方法:妊娠末期、産褥1ヶ月・4ヶ月の計3時点で、(1)生活習慣と生活リズムの質問紙調査、(2)睡眠表1週間記録と平行して(3)アクティグラフで睡眠覚醒リズムと活動量を4日間測定と(4)唾液を1日4回3日間家庭で採取した。同時にこの妊婦から生まれた乳児の生後1ヶ月と4ヶ月の2時点で、母親と同時に(2)乳児の睡眠表記録1週間と(3)アクティグラフ(4)唾液採取し、メラトニンを測定した。結果:妊娠出産に伴って睡眠覚醒リズムは変化し睡眠の質が悪化するが、妊娠末期から産後4ヶ月では、睡眠が分断されても最長睡眠時間は夜間にあり、睡眠覚醒のリズム周期は24時間であることが明らかにされた。妊娠末期から産後4ヶ月の期間は最長睡眠の入眠時刻が早いほど最長睡眠時間は長くなり、早寝は産後の睡眠状態の改善に役立つことが明らかにされた。また、妊娠末期に妊婦が早く寝ることによりその新生児が夜間多く眠ることが明らかにされ、ヒトにおいても母体の生活リズムを基本として胎児期に発達し始めることが明らかにされた。新生児の睡眠などの生活リズムはその後の乳幼児の基本的な生活習慣の形成あるいは生活習慣病の発症との関連が示唆されている。従って、妊娠期から規則的な生活習慣を持つこと母子の生活習慣病の発症の予防に資する重要な意義がある。今回の対象には、妊娠合併症を持つ異常妊婦は数名しか同意が得られず、妊娠中の生活リズムや生活習慣が妊娠・分娩・産褥経過に及ぼす影響については十分検討できなかったため、事例を積み重ねて今後の継続課題とする。
著者
佐藤 珠美 エレーラ C. ルルデス R. 中河 亜希 榊原 愛 大橋 一友
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.63-70, 2017-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

目 的産後女性の手や手首の痛みの有症率,痛みの出現時期,痛みの部位と手や手首の痛みの関連要因を明らかにする。対象と方法産後1年未満の女性876名に無記名自記式質問紙調査を行った。分析対象は産後1か月から8か月の有効回答514部(58.7%)である。調査内容は手や手首の自発痛の有無とその部位,痛みが発症した時期とその後の経過,痛みに影響を与える要因,属性とした。結 果35.2%の女性が産後に手や手首の痛みを保有していた。痛みの出現時期は妊娠期から産後7か月までと長期にわたっているが,産後1か月から2か月に出現した人が多かった。痛みの訴えは両側性が多く,左右の割合の差は少なかった。疼痛部位は橈骨茎状突起,橈骨手根関節,尺骨茎状突起,母指中手指節関節,母指手根中手関節の順に多くみられた。年齢,初産婦,手と手首の痛みの既往が痛みに関連しており,有意差を認めた。一方,母乳育児,産後の月経の再開,モバイル機器の使用時間との関連はなかった。結 論産後女性の3人に1人は手や手首の痛みを経験し,痛みの多くは産後1か月から2か月に出現していた。年齢が高く,初産婦で,手や手首の痛みの既往がある産後の女性では,手や手首の痛みに注意する必要がある。
著者
井關 敦子 中塚 幹也 山口 琴美 山田 奈央 大橋 一友
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

MtF当事者は社会適応が低くqolが低いと報告される.MtF当事者2名にインタビューを行った.共通する点は,性別違和についてネガティブな価値観を持つとは限らずその価値観も多様であった.日常生活において他者の配慮があれば大きな困難なく生活でき,就業や経済状態が安定していること,家族がいることは重要であった.その他,29年度は,性の多様性に関わる以下の活動や研究を行った.29年9月に看護職,教育,研究職向けの講演会「LGBTを理解する」を岐阜大学は開催し,研究責任者は講師となった.LGBT支援団体からの協力も受け,科学研究費を活用しこの講習会を遂行した.この講習会は看護,教育,医療従事者のLGBTに対する認知を促した.29年12月には中部地方の看護職の.GBTに対する認識について質問紙調査を実施し,その結果は30年3月のGID学会で発表した.また,28年12月に実施した「岐阜県内の小中学校に勤務する養護教諭のLGBTに対する認識」に関する質問紙調査の結果が、30年3月GID学会誌に論文として掲載された.これらの調査や活動から,今後の研究を遂行するうえで重要な情報を得た.また研究を遂行するうえで,協力者を得る機会になっている.
著者
東田 有加 大橋 一友
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.153-159, 2014-04

本研究では周囲からのタバコ煙の曝露を受ける非喫煙妊婦(受動喫煙妊婦)の実態と原因喫煙者を検討した。5ヵ所の産婦人科クリニックを受診した823名の妊婦を対象とし,喫煙状況を自記式質問紙調査した。受動喫煙妊婦は妊娠初期54.7%,中期54.3%,末期56.5%であった。原因喫煙者は夫が最も多く,妊娠初期79.4%,中期75.2%,末期76.2%であった。試験紙による尿中コチニン濃度を用いてタバコ煙への曝露レベルを半定量的に評価し,高濃度曝露群と低濃度曝露群に分類した。受動喫煙妊婦の高濃度曝露のリスクを高める原因喫煙者について多重ロジスティック回帰分析で検討した。高濃度曝露率は妊娠時期による差はなかったが,高濃度曝露のリスクを高める原因喫煙者は中期では夫(OR 11.8, 95% CI 1.4〜100.5),末期では夫以外の家族(OR 4.6, 95% CI 1.3〜15.8)であった。職場の喫煙はどの時期でもリスク要因ではなかった。妊婦の受動喫煙,とくに高濃度曝露の予防のためには,妊娠時期に応じた原因喫煙者を妊婦に伝え,家庭内での完全禁煙をめざす指導を行うことが重要である。
著者
佐治 文隆 木村 正 大橋 一友 松崎 昇 鮫島 義弘 古山 将康
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

ヒト初期胚の着床過程において、初期絨毛と子宮内膜細胞の相互作用について検討した。(1)子宮内膜細胞における細胞外マトリックスとこれを分解するプロテアーゼ(MMP)子宮内膜細胞におけるMMPの発現を期質含有ポリアクリルアミド電気泳動法を用いて検討し、72KDと92KDゼラチナーゼの発現パターンが性周期によって変化していることを明らかにした。また異所性子宮内膜細胞はその伸展に従ってMMP産生が亢進したが、TIMP(インヒビター)産生は不変であった。(2)子宮内膜における細胞外マトリックスの分泌免疫組織学的検討により基底膜の細胞外マトリックス(ラミニン、IV型コラーゲン)は内膜腺上皮の基底膜と間質細胞周辺のマトリックスに存在した。間質の細胞外マトリックス(フィブロネクチン、ビトロネクチン)は子宮内膜の間質全体および内膜腺上皮の基底膜部分に局在した。(3)胎盤絨毛の増殖分化とサイトカイン胎盤絨毛ではIL-6とそのレセプターによるhCG産生系が存在し、この系はIL-1とTNF-αにより分泌亢進がみられ、TGF-βでは制御がみられた。しかし初期絨毛ならびに培養絨毛癌細胞系ではTNF-αによるhCG分泌阻害が観察された。また初期胎盤から得られた絨毛細胞はフィブロネクチンと特異的に接着することが判明し、着床過程におけるフィブロネクチンの関与が示唆された。