著者
津間 文子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.573-582, 2013-01-01
参考文献数
14

<目的>祖母が子ども世代に対する子育て支援として「孫育て」を担うことで,祖母自身にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにする。<研究方法>対象者は郡部に居住する祖母15名。半構成的面接法で質問し,質的帰納的に分析を行った。<結果>分析した結果【健やかに育つためにできる限りの支援をする】【喜びが新しい役割の形成を促進する】【生活の中心が変化する】【対応を必要とする負担がある】【多様な役割を体力と気力に応じて身に付けていく】【よい関係を築く努力をする】の6カテゴリーと15サブカテゴリーが抽出された。<考察>祖母の「孫育て」は,子ども世代の期待する祖母の役割に沿うことであった。祖母としての役割形成の発展は,家族と良好な関係を築き"元気である"という自覚となり,経験的にいわれてきた親密な人間関係は心身の健康によいという生理学的な効果を支持していた。さらに祖母の自らのライスタイルに子ども世代に対する子育て支援としてかかわる選択は,孫が成人した後も継続する概念となっていることが推察される。
著者
梅野 貴恵 宮崎 文子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Japanese Lournal of Maternal Health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.327-335, 2008-07-01
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究では母乳育児を継続している10名の女性の,分娩直後から産後12ヵ月までの血中ホルモン濃度の推移を検討した。血中ホルモンとしては,エストラジオール,プロラクチン,LH,FSHに着目し,産後2日目,産後1ヵ月,3ヵ月,6ヵ月,9カ月,12ヵ月目の合計6回測定した。10名の女性のうち,4名はそれぞれ産後6ヵ月目,8ヵ月目,10ヵ月目,12ヵ月目に月経が再開した。月経が再開した対象者を「月経再開群」,産後12ヵ月までに月経の再開がなかった6名を「月経なし群」とした。血中エストラジオールは,両群ともに産後1ヵ月には減少するが,「月経再開群」は産後3ヵ月から上昇傾向を示した。「月経なし群」は産後12ヵ月まで低値を維持したままであった。母乳育児中の女性のプロラクチンは,産後12ヵ月まで徐々に減少傾向を示すが,1日の授乳回数の影響をうけ,授乳回数の減少とともにプロラクチンの低下が進行し月経が再開する。
著者
杉下 佳文 上別府 圭子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.444-450, 2013-01-01
参考文献数
21

周産期は,気分障害が出現しやすくうつ病の時点有病率は10〜15%である。一方で,子ども虐待死亡事例における実母の精神的問題は「うつ状態」が約3割を占め,全国で産後うつ対策が展開されている。死亡した子どもの年齢は,生後0日児の割合が高いことから,虐待死は母親の妊娠期の精神状態に左右され,妊娠期からの抑うつが関連していることが考えられる。産後うつをスクリーニングする尺度はエジンバラ産後うつ病自己評価票(以下EPDS)が広く使用されているが,妊娠期の使用は検討段階であり,欧米においても妊娠期EPDSの得点と産後うつ病発症予測の的中率については議論中である。そこで,妊娠期におけるEPDS使用の臨床応用および妊娠うつと産後うつの関連についてEPDSを用いて検討することの2点を研究の目的とした。定期妊婦健康診査で同意が得られた妊婦161名に妊娠期と産後の2時点でEPDS調査を行った。参加率は79.4%,質問紙回収率100%,産後回収率85.0%であった。妊娠期EPDS高得点者は14.3%であり,産後EPDS高得点者は19.8%であった。妊娠期EPDSの高得点者が産後EPDS高得点者になる相対リスクは17.0であり,両者には中程度の相関が確認された。妊娠期にEPDSを使用することは,産後うつ疑いを抽出する意味があり,臨床への応用が示唆された。
著者
天貝 静 江守 陽子 村井 文江 小泉 仁子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.387-395, 2014-07

本研究は社会経済的地位と,妊娠週数33〜37週にある女性の抑うつあるいは人生満足度との関連について明らかにすることを目的とした。地域の中核病院である一施設において, 225名の妊婦に対し,抑うつと人生満足度に関する自記式質問票を配布した。また,産褥2〜4日に,妊娠期の調査に回答した女性のうちの192名に面接を行い,社会経済的地位について調査した。最終分析数は153件であった。その結果,研究対象者の年齢は20歳代が多く,学歴は夫婦とも高くなく,拡大家族が多かった。これらは調査施設周辺の地域の特徴を反映したものと思われる。さらに,女性を人生満足度得点と社会経済的地位で比較を行ったところ,人生満足度得点はパートナーの学歴と関連があった。妊娠中の抑うつ感情では,抑うつ傾向のある女性は抑うつ傾向のない女性より経済的困難感を自覚し,パートナーの学歴と年収が低かった。一方,女性が経済的困難感を自覚するとき,妊娠中に抑うつである確率は4.611倍(p=0.015, [1.341, 15.850]),パートナーの雇用形態が正規雇用のときは,抑うつである確立は0.099倍(p=0.001, [0.016, 0.631])となることが示された。よって,医療者が周産期にある女性の社会経済的地位と健康との関係に注目する意義は大きいと考える。
著者
久保 恭子 刀根 洋子 及川 裕子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Japanese Lournal of Maternal Health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.303-311, 2008-07-01
参考文献数
4
被引用文献数
5

本研究の目的は孫をもつ女性のインタビューで得られた資料をもとに,祖母性と祖母力について分析し,祖母自身の生涯発達における意味について,また祖母の育児支援のために専門家として支援することは何かについて明らかにするための資料を得ることである。結果,1.本調査の対象となった祖母性の特徴として,[癒し体験][いきがい][命のつながり][浄化][重荷][家族の変化][夫婦関係の好転]があった。2.祖母力の特徴として,孫の成長発達にあわせて育児全般すべての項目において支援を実施していた。これらのことから,祖母になるということ,育児を支援するということが祖母の生涯発達におおむねよい影響を及ぼしていることがわかったが,育児支援が[重荷]であると感じる祖母もおり,どのような育児支援が負担となるのか詳細な分析を行う必要がある。
著者
儀間 繼子 仲村 美津枝 大嶺 ふじ子 玉城 陽子 宮城 万里子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Japanese Lournal of Maternal Health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.358-364, 2006-07-01
参考文献数
16
被引用文献数
2

妊娠中に行った運動(骨盤底筋体操,ストレッチング,ウォーキング)が分娩にどう影響を及ぼすかを検討した。対象者は,妊娠異常・合併症のない初産婦161人で帝王切開例,吸引分娩例や分娩時薬剤使用例などを除く自然分娩例57人とした。調査期間は2000年1月〜2001年7月である。骨盤底筋体操,ストレッチング,ウォーキングの3運動の実施状況から点数化し,合計得点0点を非運動群とし,運動群は運動の実施強度により,1〜6点の6群に分け,運動との関連を検討した。自然分娩例57人の運動群は47人,非運動群は,10人であった。3〜6点の運動群は34人で59.6%いた。運動群47人中45人はウォーキングを行っていた。運動群間で有意差がみられたのは分娩第1期所要時間であった。3〜6点の運動群の分娩第1期所要時間393±198分は,非運動群640±428分より有意に短縮していた。ウォーキングと骨盤底筋体操,ストレッチの3運動群,または,ウォーキングとどちらかを組み合わせた2運動群は,非運動群に比べ分娩第1期所要時間で有意に短縮していた。運動によって,初産婦は分娩第1期所要時間が短縮されることは,産後の疲労を軽減し,産後の回復にもつながることが示唆された。
著者
柴田 眞理子 尾島 俊之 阿相 栄子 中村 好一 岡井 崇 戸田 律子 北井 啓勝 林 公一 三砂 ちづる
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.374-383, 2005-07
参考文献数
14
被引用文献数
1

妊娠, 出産における医療, 助産に関して, 実施したほうがよいか否か, 議論のある20項目について, 助産師の考え方や実態を明らかにすることを目的として, 日本助産学会, 日本母性衛生学会の名簿から無作為抽出した1, 807人を対象に自記式郵送調査を行った。その結果, 実施に賛成で重要性も高い事項は, 授乳時間を定めない, 塩分制限, 産婦の希望による分娩時の体位決定であり, 低い事項はルーチンな会陰切開, 会陰縫合を通常の縫合よりも1針多めに行う, 入院時洗腸などであった。80%以上の症例での実施割合が高い事項は, 砕石位での分娩, 分娩第2期に仰臥位にする, 授乳時間を定めない, 点滴をするであった。実施時の考慮事項では, 妊産婦や児の身体状況, 施設の方針, 妊産婦の希望の順であった。今後の方針をみると, 母乳育児や分娩体位などでは, 積極的に進めていくや減らしていきたいを支持し, 薬剤使用, 医療処置などでは, 現状維持を支持していた。以上から, 妊娠, 出産における医療, 助産の実践に関しては, 助産師の立場からのエビデンスの蓄積と, それに基づいた適切な実施を検討していくことの必要性が示唆された。
著者
宮本 政子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.554-562, 2012-01-01
参考文献数
14

本研究は妊娠期に生じる抑うつ的な気分が,妊娠経過中の出来事や妊婦が生育過程で得た抑うつスキーマとどのように関連するかを明らかにする目的で,128名の妊婦に調査を行った。そのうち19名はエディンバラ産後うつ病自己調査票(EPDS)の測定値が9点以上の抑うつが疑われる妊婦であった。この19名を高群とし,妊婦全体やEPDS1点以下の低群20名との比較を事例検討も含めて行った。その結果,高群の妊婦には次の特徴がみられた。1.胎児発育が悪く身体的合併症や産科的異常を複合して発症する妊婦や,精神科などの既往歴を有する妊婦が多い,2.抑うつスキーマが低群や妊婦全体に比べて高く,なかでも他者依存的評価得点が高い,3.妊娠期間中に日常生活や家族関係の問題が発生し,負担度の大きな問題が発生した妊婦では抑うつスキーマが低い場合も抑うつ気分が強い。以上の結果から,妊娠期からEPDSを測定し,9点以上の抑うつが疑われる妊婦や上記1に該当する妊婦は抑うつスキーマを測定することが望ましい。そして,妊婦の心身の状態や抑うつスキーマを継続的に把握し,妊娠経過中必要な精神的ケアや生活指導を行い,適切な時期に専門的治療につなげられる支援体制を整える必要がある。
著者
清水 嘉子
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.47-53, 2007-04

本研究は、母親の心理的育児ストレスおよびその対処について明らかにし、さらに尿中ストレスホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、コルチゾール)との関係について検討した。乳幼児期の育児をしている母親21名から得られた心理的育児ストレス33項目およびその対処に関する回答および採尿をもとに分析を行った。その結果、母親の尿中ストレスホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、コルチゾール)と心理的育児ストレスの関係では、尿中アドレナリンの高い母親と総ストレス値の高い母親、「夫の育児サポート」や「育児に伴う束縛感」のストレスが高い母親に比較的強い相関が認められた。尿中コルチゾールは「夫の育児サポート」のストレスが高い母親に比較的強い相関が認められた。尿中ノルアドレナリンが高い母親とドーパミンが高い母親に強い相関が認められた。(著者抄録)