著者
我部山 キヨ子 岡島 文恵
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.198-206, 2010-04-01
参考文献数
12

医療の進歩および看護・助産の知識や技術の向上に対応し,今後の助産師の卒後教育のあり方を探る目的で,京都府下の産科関連30施設の勤務助産師254人を対象に,卒後教育が必要な理由,卒後教育の時期・内容・問題,助産師免許更新制度などについて自記式質問紙調査を実施し,以下の結果と示唆を得た。1. 99.2%の勤務助産師は,「自身の能力の維持・向上」「本や資料で得られない知識・技術を学ぶ」などの理由で卒後教育が必要と考えていた。教育内容では,70%以上の人が「産科救急」「乳房管理」「新生児蘇生」を重要と答えた。とくに全年代が重要としたのは「異常や救急」,20歳代では「診断や技術」,30歳代以上では「助産管理・医療安全教育・職業倫理」などであり,年齢層や経験に即した卒後教育が重要であることが示唆された。2. 卒後教育で重要な時期は「1年目」が最も多く,74%が3年以内と答えた。3. 卒後教育上の問題は,「時間がない」61.8%,「受講料が自己負担」45.7%であった。これらの結果から,重要と考える教育内容は年齢層で異なるため,助産師の経験や専門性を考慮した教育内容が重要であることが示唆された。また,助産師数は看護師数に比べると極めて少ないことから,「卒後教育のための時間確保」や「受講料の援助」などの卒後教育環境の整備も必要である。
著者
斉藤 早苗 町浦 美智子 末原 紀美代
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.223-230, 2007-07

未婚就労女性221名を対象に,Beckerの保健信念モデル(Health Belief Model:以下HBM)を基盤にし,社会的認知理論の自己効力感を用いて,性感染症(sexually transmitted infections:以下STI)予防のためのコンドーム使用の自己効力感に関連する要因を分析した。対象者の平均年齢は27.5±5.02歳,性交経験率は82.4%であった。避妊をいつも実行している割合は47.5%で,最も多い避妊法はコンドーム法71.9%であったが,91.0%がコンドームを携帯したことがなかった。過去1年間にSTI予防でコンドームを使用した割合は30.1%であった。STI予防のためのコンドーム使用の自己効力感ありの女性の割合は71.5%であった。しかし,そのうち88.8%がコンドームを携帯していなかった。STI予防のためのコンドーム使用の自己効力感は,STIへのおそれの認知,コンドーム使用の負担感,一般性自己効力感,性交経験の有無,STI目的でのコンドーム使用と関連があった。本研究の結果,未婚就労女性に対して,効果的なSTI予防活動を実施するためには以上の関連性を考慮した看護介入の必要性が示唆された。
著者
半藤 保 小林 正子 久保田 美雪
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.21-28, 2007-04

大学生381人(男子100人,女子281人)に無記名アンケート方式により,性行動,性感染症に対する現況と知識,および意識について調査した。その結果,以下の点を明らかにした。1)初交年齢のピーク:男子16歳,女子17歳。2)18歳までの性交経験率:男子78.9%,女子76.1%。3)複数人の性パートナーをもつ割合:男子52.7%,女子56.4%。4)性感染症(STI)の種類について回答者の50%以下しか知らなかったもの:性器ヘルペス,淋病,B型肝炎,C型肝炎,尖形コンジローマ。5)性交時,必ずコンドームを装着するもの:約2/3しかなく,1/3は「ときどき」あるいは「全く」装着しなかった。しかも,装着は避妊目的であって,STI予防を目的としたものは約20%にしか過ぎなった。6)STI予防のためコンドーム装着の必要性を自覚するもの:男子55%,女子80%。7)STI罹患疑いのとき,性パートナーともども病院を受診するとしたもの:39%。
著者
増田 匡裕
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.444-453, 2012-01-01
参考文献数
12

本研究は不育症の体験が夫(胎児の父親)の対人関係に与える影響を分析し,夫に対するソーシャル・サポートの必要性を探ることを目的とした探索的研究である。当事者グループ会員の40組の夫婦が個別自記入・郵送回収式の質問票に回答した。流産体験が夫の対人関係に及ぼす影響を説明する自由記述回答(アカウント)は帰納的分析法でコード化された。夫へのサポートに対する夫婦の態度を組み合わせ,40組の夫婦は「妻もしくは両方が否定的」「夫婦共に肯定的」および「妻のみ肯定的」の3群に分類された。クロス表分析の結果,「妻もしくは両方が否定的」である夫婦の多くが夫の対人関係に流産の影響はないと記述しているのに対し,「夫婦共に肯定的」な夫婦はなんらかのよいまたは悪い影響について述べているケースが多かった。さらにサポート源に関する変数とのクロス表分析からは,「夫婦共に肯定的」群と「妻のみ肯定的」群の違いが示唆される結果が得られた。
著者
池田 智子 鈴木 康江 前田 隆子 原田 省
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.129-138, 2011-04
被引用文献数
1

本研究の目的は,(1)高校生における月経痛と関連する因子の実態調査,ならびに(2)リラクセーション法による月経痛の軽減効果を検討することである。実態調査は,高校生1,339名を対象に無記名自記式質問紙法で実施した(有効回答953名)。その結果,月経痛がある者は865名(90.8%)で,日常生活に影響があるとした者は448名(51.8%)であった。月経痛に関連する因子として,睡眠状態の不良(オッズ比:1.43,95%Cl:1.06〜1.92),生活上のストレス感(オッズ比:1.42,95%Cl:1.06〜1.90),冷えの自覚(オッズ比:1.84,95%Cl:1.40〜2.41)などが見出された。そこでストレス感と睡眠に着目し,呼吸法とアロママッサージ併用によるリラクセーション法の月経痛軽減への効果を検討した。月経痛のある高校生で研究協力の得られた者を無作為に介入群(16名)と対照群(16名)に割り付け,介入群にはリラクセーション法を実施した。介入群では,対照群に比べ月経1日目,2日目の月経痛は有意に軽減し(P<0.05),日常生活への影響は2日目で有意に減少した(P<0.05)。POMSの緊張-不安が有意に低下した(P<0.05)。リラクセーション法の実践により月経痛の軽減効果が示され,有効な対処法として活用できると考えられた。
著者
坂梨 薫 勝川 由美 臼井 雅美 鍋田 美咲 大賀 明子 永井 祥子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.482-489, 2010-07

韓国の産後ケア施設の現状と課題を明らかにし,日本の新たなサポートシステムとしての産後ケア施設導入の可能性を考える目的で本研究を行った。梨花大学教授,韓国助産師会会長,ソウル助産師会会長のヒアリング,韓国の産褥ケア施設長および施設利用者へのインタビューから,1.産後ケア施設の業種としての位置づけが医療機関ではなく宿泊業に分類されている,2.産後ケア施設は医療機関ではないため,運営においては一般の人々や企業の参入を可能にしている,3.褥婦や新生児に異常が生じた場合,病院や診療所との連携システムが構築されていない,4.新生児を1ヵ所に収容した施設では,新生児に感染症が発症した場合,感染拡大の危険性が生じる,などが課題であることが明らかになった。しかし,利用者の支援内容に関する満足度は高かった。2008年開設された,わが国初の産後ケアセンターも宿泊業と産業分類されており,今後,わが国において産後ケア施設を導入し,拡充していくためには,産後ケア施設先進国である韓国での課題を自国の問題として検討していくことが必要となる。
著者
清水 嘉子 関水 しのぶ 遠藤 俊子 落合 富美江
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.367-375, 2010-07

本研究では,母親や末子の年齢,子どもの数といった属性が,母親の肯定的情動としての育児幸福感に影響があるかどうか,母親の就労状況別(フルタイム群,パートタイム群,家事従事群)に比較し検討する。参加者は,764名の0〜6歳の子どもをもつ母親である(フルタイム219名,パートタイム234名,専業主婦311名)。育児幸福感の測定には清水らが開発したChildcare Happiness Scale(以後CHSとする)用いた。母親年齢,子ども数,末子年齢を独立変数,8つの育児幸福感の下位尺度得点を従属変数としたモデルを,パス解析で多母集団同時比較を行い検討した。その結果,すべての群において子ども数は,CHSの8つの下位尺度得点に全く影響を与えなかったが,しかし末子年齢は,フルタイム群において「親としての成長」の得点に正の影響,そして専業主婦では負の影響があり,一方パートタイム群では影響がなかった。フルタイム群において,母親年齢は「子どもの成長」尺度得点に正の影響を与えたが,他の群においては影響がみられなかった。この結果より,フルタイムで働く母親にとって,母親や末子の年齢が増すことは「親としての成長」や「子どもの成長」の育児幸福感を高めることが示唆された。さらに,就労形態の異なる母親に対する育児教室における支援について検討した。
著者
嶋田 容子 板倉 昭二
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.337-339, 2007-07

母親による乳児の泣きの音声の擬音語でのとらえ方,また擬音語表現と解釈との関連を質問紙によって調査した。比較的単純な擬音語が欲求として解釈され,この解釈には共通性が高かった。多様な変化を含む擬音語表現は,感情と解釈され,さらに乳児の手足の動きを伴うことが高い頻度で記述された。
著者
木村 好秀 齋藤 益子 菅 睦雄
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.66-73, 2007-04

昨今,性意識の変化により若者の性行動か活発化し,10代の望まない妊娠や性感染症が増加している。われわれは,平成13年10月から4ヵ月間に,看護系6大学の学生に主として避妊法・性感染症についてスライドを用いて講義を行い,その際にわれわれが作成した性意識と性行動に関する自記式アンケート調査を行った。325名から回答が得られ,平均年齢は21.3歳,平均初経年齢は11.2歳で,初経に対する意識は嫌だったが44.6%,嬉しかったが21.2%であった。これまでの性教育受講経験は96.3%にみられ,その内容は,小学校3年以上では月経と射精が88.2%,性交と避妊が中学校で55.0%,高校では58.1%で,高校で中絶50.5%,性の倫理20.4%であった。性交経験率は69.2%で,平均初交年齢は17.9歳,季節は夏29.8%,春24.4%であった。初交時の避妊実行率は68.9%で,そのうちの96.8%がコンドーム法であった。ピルの知識があったものは34.1%であったが,今回の講義で91.2%に増加し,講義後のピルの使用意向は52.3%であった。