著者
有村 源一郎 上村 卓矢 八代 拓也
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.428-432, 2019-07-01 (Released:2020-07-01)
参考文献数
13

植物由来アロマ成分(香り・匂い)は,植物の生存戦略において重要な役割を担う.われわれのよく知る花の香り以外にも,害虫に食べられることでも植物の匂いは放出される.これらの匂いは,害虫の天敵をひきつけ,周囲の植物にも「危険」を知らせる警報としての役割を担う.このように,動けない植物は匂いを駆使することで周囲の生物とコミュニケーションを図る(1).植物アロマ成分であるテルペン類は,抗虫性,抗炎症,抗がん,およびリラクゼーション(抗ストレス)などの多岐にわたる薬理効果が備わることから,世界中の研究者や医療関係者から注目されている.本稿では,植物が作り出す揮発性テルペンなどの生態系における機能,当該成分を利用した有機農法の開発,新たな医薬品(漢方)および機能性食品成分としての可能性について紹介する.
著者
川口 正代司
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.94-101, 2016-01-20 (Released:2017-01-20)
参考文献数
40

マメ科植物と根粒菌の共生は地球上で最も成功した相利共生の一つである.この共生により,マメ科植物は窒素栄養分が乏しい環境でも生育することができる.一方,根粒の形成と窒素固定には多くの生体エネルギーが消費されるため,根粒の着生数は植物によって厳密に制御されている.この制御には根粒形成のオートレギュレーションと呼ばれる制御系が深くかかわっており,これは葉と根の遠距離コミュニケーションによって構成されている.オートレギュレーションの現象の発見から,今日の分子レベルでの理解まで,遠距離コミュニケーションの全容について紹介する.
著者
安岡 顕人
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.891-896, 2012-12-01 (Released:2013-12-01)
参考文献数
36

食品に含まれるポリフェノールのなかには何らかの生理活性を示すものがある.多くの場合,その作用機構は抗酸化活性で説明されてきたが,特定のタンパク質との相互作用が報告されているものもある.本稿では,特に食品ポリフェノールによる核内レセプターの活性化と,その結果生じる代謝調節作用について概説する.