- 著者
-
遠藤 章
- 出版者
- 公益社団法人 日本農芸化学会
- 雑誌
- 化学と生物 (ISSN:0453073X)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.4, pp.276-280, 2010-04-01 (Released:2011-08-29)
- 参考文献数
- 20
コンパクチン(ML-236B,メバスタチン)とその最初の同族体ロバスタチン(モナコリンK,メビノリン)が発見されたのは30年以上前の1970年代である(コンパクチン同族体をスタチンと総称).ロバスタチンが商業化スタチン第1号として登場してから(1987年)でも20年以上が過ぎた.現在では,その後開発された半合成および合成スタチンを加えた計7種のスタチンが,世界中で毎日約4,000万人の患者に投与され,すでに500万人の命を救ったとされる.スタチンの年間売り上げは3兆円(邦貨換算)を越す.卓越した安全性と薬効が認められたスタチンは,ペニシリンと並ぶ‘奇跡の薬’と呼ばれている.医学と医療に与えたインパクトが巨大なだけでなく,世界の医薬品産業でも史上最大の売上げを記録して,産業界からも注目されている.このような例は百年に幾度もないだけに,ペニシリンの例に倣って(1),発見と開発をめぐる事実を正確に後世に残すのが,筆者に課せられた責務と考える.