著者
西 英二 田代 幸寛 酒井 謙二
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.559-565, 2017

<p>現在の犯罪捜査において,ヒトDNA型鑑定は多くの事件に活用され,犯人の特定や犯罪事実の証明に欠かせないものとなっている.しかし,いまだに解決できないさまざまな問題があり,昨今のあらゆる種類の犯罪に対応できていない.しかしながら,人体に存在する微生物叢を網羅的に解析するヒトマイクロバイオーム解析の発展に伴い,微生物を法科学分野にも利用する動きが見られるようになった.このヒトDNA型鑑定とは異なるアプローチによって,現在の法科学分野のさまざまな問題点を克服できる可能性がある.つまり,従来の一般の鑑定手法では有効な情報を得ることができなかった資料について,そこに存在する細菌叢を利用して個人の異同識別が可能であることがわかってきた.</p>
著者
小林 達治
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.10, pp.604-613, 1970-10-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2
著者
並木 健悟
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.64-67, 2020-01-01 (Released:2021-01-01)
参考文献数
7

本研究は,日本農芸化学会2019年度大会(開催地:東京農業大学)での「ジュニア農芸化学会」において発表されたものである.「アリと蚊を共存させると蚊が死ぬ」ことを発表者が偶然見つけたことから本研究は始まった.長期にわたる観察,分析実験を繰り返し,ヒトスジシマカに致死的な影響を与えるクロクサアリの分泌ガスの成分を明らかにした.クロクサアリの放つ強力なガスの詳細解析は防蚊剤の開発につながる可能性が期待できる.
著者
林 徹
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.345-349, 2012-05-01 (Released:2013-05-01)
参考文献数
15

食品照射は食品にガンマ線や電子線を照射することにより食品の貯蔵期間の延長,衛生化などを図るための技術である.馬鈴薯,タマネギ,ニンニクの発芽抑制は20~150 Gy(グレイ),穀物や果実の殺虫は0.1~1 kGy,肉類などの殺菌は1~7 kGy,香辛料やハーブなどの殺菌は10 kGyでその目的を達成できる.放射線照射した食品は照射食品といい,原発事故で問題となっている放射能汚染食品とはまったく別物である.食品照射および照射食品を正しく理解していただくことを目的に,食品照射について解説する.
著者
山口 夏希 長田 茉莉 新谷 愛佳 吉田 真歩子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.777-779, 2013-11-01 (Released:2014-11-01)

本研究は,日本農芸化学会2013年度大会(開催地:東北大学)での「ジュニア農芸化学会」において発表され,銅賞を表彰された.レインボー植物は,白い花の花弁を染料で着色して虹色に染め分けた一種の造花であるが,花弁ごとに異なる色で均一に染め分けることは難しいとされる.発表者たちは,植物の吸水・蒸散と花弁の染まり方との関係を調べるとともに,花茎から花につながる維管束構造を丹念に観察することで,花弁が均一に染色される条件および花弁ごとに染め分ける方法を追求しており,得られた結果は非常に興味深いものとなっている.
著者
吉田 彩子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.240-247, 2020-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
19

微生物のもつ多彩な機能を利用して,多くの有用物質生産に微生物による発酵法が用いられている.そのなかでもグルタミン酸発酵を発端としてわが国が主動的な役割を果たしたアミノ酸発酵技術の発展により,ほとんどのアミノ酸の微生物による生産法が確立されている.発酵生産技術の開発過程で,さまざまなアミノ酸の生合成経路やその代謝制御機構の存在が明らかとなり,代謝制御発酵が進んだ一方で,生合成機構や調節機構の詳細はあまり明らかにされてこなかった.筆者らはこれまで構造生物学的手法などを用いて,リジン生合成の鍵酵素の活性調節機構を明らかにしてきた.本稿ではリジンをはじめとするアミノ酸の生合成機構やその進化,生合成酵素の調節機構について,筆者らが行った研究を中心に紹介する.
著者
横井 毅 織田 進吾
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.412-420, 2017-05-20 (Released:2018-05-20)
参考文献数
25
被引用文献数
1

薬物代謝の情報は,医薬品開発におけるリード化合物の選択に,毒性発現の解明に,治験における有用性と安全性の確保に,臨床における個別薬物療法の実践において重要な役割を担っている.近年の医薬品開発を取り巻く状況は,目覚ましい変化の渦中にある.こうした状況下で,薬物代謝や薬物動態の研究成果は,非臨床および臨床研究を広範に支えており,創薬の効率化と加速化に貢献している.本稿では,薬物代謝・薬物動態研究の視点から,今日の医薬品開発研究に関する最近の進歩を中心に解説する.