著者
千坂 武志 布施 守
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.180-188, 1969-07
被引用文献数
1

栃木県葛生町付近に石炭系(?)〜二畳系の地層が発達しているが,これらは下部は栃木層群,上部は安蘇(あそ)層群に分けられている。安蘇層群の下部には石灰岩の発達した地層があって,鍋山層とよはれている。鍋山層はさらに下部から上部に向って,山菅石灰岩部層,羽鶴苦灰岩部層,唐沢石灰岩部層に分けられる。山菅石灰岩部層は日本のParafusulina帯の化石産地の標式地域として有名なところである。筆者らは葛生町付近の山菅,和田両部落付近の山菅石灰岩部層の地質および古生物について研究した。本部層の略々中央部には不純石灰岩の薄い層があり,そのすぐ下にMinojapanellaの多産する地層がある(この地層を中部層とした)。中部層より下部にあるものを下部層とし,上部にあたるものを上部層とした。Parafusulina kuzuensis n. sp.は殻が特に大きく,円筒形でaxial fillingは軸に沿うて細長く発達し,septaの発達は内部でよく,外方にいくにつれて少なくなっている。Parafusulina wordensis Dunbar and Skinner (Word formation, Glass Mountains, Texas, U. S. A.)に比較するとchomataが小さくapeatureがよく発達していない。Parafusulina nakamigawai Morikawa and Horiguchi(葛生町,アド山層産)に比較するとseptaの褶曲が弱いParafusulina iisakai Igo(岐阜県舟伏山産)に比較するとaxial Fillingが発達している。それで新種として記載した。この大型鐘紡虫は上部層に多く下部層には少ない。上部産のものは一般に大型化したものが多い。Parafusulina進化した型として非常に興味がある。進化の系統樹については将来さらに研究する。
著者
松田 伯彦
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.17-27, 1968-06-30

本研究は,学業不振および学業促進者のクレペリン精神作業検査の総合判定にもとづいて因子分析をおこない,比較検討することを目的とする。中学2年生における国語の学業不振,学業促進群および統制群にクレペリン精神作業検査を実施し,そして,判定,作業量(休憩前・後),誤謬率(前・後),初頭努力率(前・後),終末努力率(前・後),最大差(前・後),動揺率(前・後)および休憩効果率および知能(偏差値),学力(偏差値),テスト不安得点および一般不安偏差値を加え,因子分析をおこなった。結果は次のとおりであった。1)学業促進群の知能は他の2群より低く,そして,学力は他の2群より高かった。2)学業不振群の判定,作業量(後)および休憩効果は他の群より低かった。学業不振群の動揺率(前・後)は他の2群より大きく,そして,学業促進群の動揺率は統制群より小さかった。3)各群の第1因子および第2因子に基づく因子布置より,知能,学力および動揺率が異っていた。すなわち,知能と学力において学業促進群のそれが他の2群と異っていた。また,動揺率において学業促進および学業不振群のそれは統制群のそれと異っていた。付記,本研究を実施するにあたり,野崎修君のご協力を得た。記して感謝の意を表します。
著者
松田 伯彦
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.55-66, 1970-07-31

本研究は,比較的等質な学級(小学4年生10学級)に対して,賞あるいは罰を与える比(学級集団での賞あるいは罰を与えられる人数の比)を,いろいろ変化させることによって,賞あるいは罰の効果が学習にどのように影響するか,そして,それを観察している者(暗黙の強化を受けている者)の学習成績にどのように影響するかについて,文章問題を学習課題として,検討することを主な目的とした。そして,強化パターン(連続強化と部分強化)についてみることである。さらに,被験者の内省報告から,賞あるいは罰,あるいは,暗黙の強化によって,学習者がどのように動機づけられたか,また,被験者の実験者に対する好悪の感情と学習との関係を者察した。文章問題の平均正答数および平均正答率について,第1日目を100とし,各群の5日間の正答数%正答率%の分散分析,および各日ごとの群間の効果の分散分析をおこなった。その結果次のようである。1.学級の少数が賞を受けた時の大多数の無視群,学級の大多数が罰を受けた時の叱責群と無視群の両方,これらの3群では,5日間正答数の有意な上昇がまったくみられない。他のすべての群では多かれ少なかれ5日間に正答数の有意な上昇がみられる。2.賞は学級の少数に与えられる時および学級の多人数に与えられる時も,非常に効果的で,罰は学級の全員に与えられる時最も効果的である。3.学級の大多数の者が賞あるいは罰を与えられる時,無視された者は直接の賞罰以上に間接(暗黙)の強化を受ける。4.連続強化群と部分強化群を正答数で比較した場合有意差はみられないが,正答率において部分強化群がすぐれている。5.内省報告から,賞を直接受ける者およびそれを観察している者は賞を再び得ようとし,罰を直接受ける者およびそれを観察している者は,賞を得ようとする傾向と罰を避けようとする傾向がみられた。6.実験者に対する好悪の感情は,賞を与えられた者は接近的・好意的な傾向が,罰を与えられた者は回避的・非好意的な傾向が漸次増加すると言える。各群の成績ではなく,学級成員全員の成績を考えた場合,全員賞賛または全員叱責ということが最も効果的であるように思われる。しかし,人間関係をも考慮すれば,全員賞賛ということがより効果的で,この点教育上興味深いことである。附記本研究に御協力いただいた千葉市立院内小学校長鈴木将七先生,緑町小学校長勝山正徳先生,寒川小学校長地引登志夫先生,新宿小学校長宍倉芳衛先生,轟町小学校長八代進先生,学級担任の諸先生および児童の皆さんに深く感謝の意を表します。なお,白鳥礼,宇佐美仁孝,山田幸子,松岡和子,二宮砂子,西村信子,斎藤文子君およびその他多くの学生諸君に協力をいただいた。
著者
村瀬 隆二
出版者
千葉大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.19-41, 1959
著者
林 史典
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. 第1部 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.95-108, 1973-08-31

本稿は,日本字音史のたちばから,法華経の読誦に際してもちいられた字音の体系と性格とをあきらかにしようとする意図のもとになされる研究の,基礎的考察の一部をなすものである。ここでは,法華経の諸音義所載の反切の比較・検討を通じてそれらの相互関係をあきらかにせしめると同時に,誤写およびそれぞれの音義に特有の反切に注目することによって,現存の諸音義にみえる反切の背景を想定し,あわせてこれらの反切のはたしえた役わりについても,一応の歴史的なみとおしをえようとする。
著者
松田 伯彦 時田 光人 西村 正司 宮野 祥雄
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. 第1部 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.101-110, 1975-12-26

教育実習を初めて体験する大学3年次生を用いて,ロールプレイングによる実演が実際の授業過程に及ぼす効果を,統制群法により実験的に検討することを第1の目的とした。さらに,ロールプレイングが,教職への態度・意識の変容および教育実習への動機づけの変容におよぼす影響についてみることを第2の目的とした。結果は次のとうりである。1.ロールプレイング群の内省から,この群では教育実習や教職に対して,強い印象・感動があったことがうかがえた。2.授業技術についてみると,両群とも,最初の授業から最後の授業へ望ましい方向に変化しているが,ロールプレイング群でよりそれが著るしい。特にロールプレイング群では"児童が理解しやすい話し方"をするように変化した。3.授業過程の印象は,両群とも好ましい方向への変化がみられたが,ロールプレイング群でよりそれが著るしかった。4.教職に対する態度では,ロールプレイング群は「教職が精神的満足の得られる仕事だ」 と大きく賛成に変化し,さらに教職に対し"あたたかい"イメージの方向に変化した。5.教育実習への動機づけの変化をみると,ロールプレイング群は積極的・意欲的になった。最後に,実践的研究の問題点にふれ,ロールプレイングの有効性について考察し,さらに教生の指導方法について述べた。