- 著者
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奥谷 喬司
- 出版者
- 日本貝類学会
- 雑誌
- ちりぼたん (ISSN:05779316)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.3, pp.93-99, 2006-10-10
以前からそういう話を聞いてはいたが,先頃茨城県にある「あ印」というタコの加工会社に招かれて工場を見学させて貰ったところ,タコが大量の貝を「採集」して来ることを実見した。過去にどこかに誰かが,同様の情報を書いているのではないかと探してみたところ,築地の中央魚類(株)にお勤めの会員石川謙二氏から氏がタコが採って来る貝について1986年春相模貝類同好会でご発表になり,同年,雑誌「アニマ」夏休み特大号に写真付きの記事を掲載されたとご教示を戴いた。その上,同氏から1996年2月23日に同好会に配布された「アフリカのタコが携帯してくる貝」という資料(本稿付録に掲載)も戴いた。いっぽう,岡本正豊氏からは「週間文春」1981年4月16日号に掲載された「タコのおみやげ」というカラーグラビアのコピーをご提供戴いた。この記事には明石市の冷凍たこの解凍場に勤務する伊藤明夫氏という人が集めた貝の写真が付いている。このような週刊誌の貝類関係記事を保管しておられる岡本氏のマメさにも感服したが,同好会や学会のマニア以外にも伊藤氏のような隠れた貝類収集家がいるのも驚きであった。石川氏の業績や「週間文春」の記事に比べれば,今回のコレクションは僅か1回きりのしかも短時間の採集努力に留まったが,筆者としては初めての体験でおおいに興味をそそられたので,小文とした。