著者
窪寺 恒己 天野 雅男 森 恭一 青木 かがり 篠原 現人 西海 功 大泉 宏 庄司 隆行
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中深層性大型イカ類に関しては、特殊水中ビデオカメラ・ライトを開発し深海の環境を乱すことなく、それらの行動生態を記録し生物量の推定を試みた。2011年には小笠原沖でNHKと共同して有人潜水艇から世界初となるダイオウイカの生態観察・撮影に成功した。一方マッコウクジラに関しては、加速度マルチロガーと超小型水中カメラロガーを直接取り付けることにより、潜水中の行動を3Dで捉えることに成功し、餌となる大型イカ類を追跡・捕獲する行動パターンを明らかにした。また、深海の腐肉食性ベントスの蝟集実験を行い、蝟集物質の科学的組成を解析するとともにベントス群集の時間的変遷を明らかにした。
著者
三宅 裕志 窪寺 恒己 奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.38-41, 2005-07-30

Video images of a very large squid (ML 1m<) were taken by the ROV Hyper-Dolphin at a depth of 1161m near the bottom of Sagami Bay in March, 2004. It was tentatively identified as Gonatopsis sp. (Gonatidae), and may represent an undescribed species. It is surprising that the existence of such a large squid in Sagami Bay has not been recorded to date, despite a tremendous amount of sampling and fishing.
著者
奥谷 喬司 リンズィー ドゥーグル 窪寺 恒己
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.32-36, 2007-08-31

ヒレギレイカCtencpteryx siculus (Verany,1851)は沖合性で稀にしか採集されない小型のイカである。鰭があたかも魚類の鰭のように軟条で支えられているように見える風変わりなイカで,固定標本を見ると大抵軟条間の薄膜は切れぎれになっているところからヒレギレイカ(瀧巌)の和名がある。筆者の一人(D.L.)は昨年3月,房総半島鴨川沖で,スーパーハープ・ハイビジョンビデオカメラを搭載した無人探査機ハイパードルフィンによって,世界ではじめて本種の遊泳する姿を観察・撮影した。映像に撮られた証拠標本はハイパードルフィン装備のスラープ・ガン(吸引式採集器)により採集した。
著者
金子 奈都美 窪寺 恒己
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.38-43, 2007-02-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
14

Specimens of two small octopus species collected from intertidal waters of the Ryukyus were identified as species of Abdopus, based on the following combination of characters: small to medium body (<70mm ML) with long arms (>4×ML), arm autotomy, number of gill lamellae (6-7 per demibranch), enlarged suckers on second and third arms of male, hectocotilized arm with small ligula (<2.3% of hectocotylized arm), and highly sculptured skin. Two specimens collected at Oku and Sesoko, northern parts of Okinawa Island were identified as A. abaculus due to the presence of large circular white spots on dorsal mantle and dorsal arm surfaces. Four specimens collected from Awase at Okinawa Island, Kabira at Ishigaki Island, and Nakano at Iriomote Island were identified as A. aculeatus by their brownish yellow body color, comparatively large body (37.7-51.0mm), long arms (6-9×ML), and highly sculptured skin with primary papillae on dorsal mantle and above eyes. Abdopus aculeatus had been confused with Octopus oliveri in the Japanese literature. These two species were distinguished by arm length (<5×ML in O. oliveri), number of gill lamellae (7-8 in O. oliveri), body color (dark purple in O. oliveri), presence of papillae above the eyes (absent in O. oliveri), and shape of penis (V-shape in O. oliveri versus linear in A. aculeatus). These specimens are the first records of Abdopus from Japanese waters as well as the northern-most records for both species.
著者
濱谷 巌 窪寺 恒己
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3-4, pp.113-120, 2010-03-31 (Released:2016-05-31)
参考文献数
11

深海性後鰓類シンカイウミウシ属Bathydorisの1種1個体が,北海道釧路沖の日本海溝の深海(3108~3265m)から採集された。本属の既知種は世界に9種あるとされ,何れも深海産で,本記録が追加され10種となる。シンカイウミウシ属は咽頭部が強大な顎板によって保護される。触角は左右が離れ,非退縮性で,触角鞘を欠く。鰓葉は個々に独立し非退縮性である。Bathydoris japonensis n. sp. ヤマトシンカイウミウシ(新種・新称)生時の背面は淡紫色を呈し,触角と鰓葉の基部は黒褐色の輪状色で囲まれる。固定標本は大形(体長125 mm)で楕円形。鰓葉は約12葉で約6群にまとめられ,円形に配列する。外形はB. ingolfianaに似るが,本種の雌性生殖門の外部の襞には切れ込みが無く平滑である。口球は大きく,歯式は49×n・1・n。中央歯は概ね台形で通常歯尖を欠くが,歯尖を有するものが稀にある。本種の側歯はすべて歯尖を有し歯尖は斜立する傾向があり,鋸歯を欠く。第1側歯は中央歯よりやや大きい。側歯列は外側歯に移るに従って,基板は次第に縦長の長方形を呈する。しかし数個の最外側歯の基板は次第に幅広く,縦方向が短くなる。歯尖は歯列の中程のもの程細長く,数個の最外側歯の歯尖は次第に短くなる。タイプ産地:北海道釧路沖の日本海溝(水深3108~3268 m)。
著者
久保田 正 塩原 美敞 窪寺 恒己
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.15-20, 1991-01-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
10
被引用文献数
2 8

In this paper, a stomach content analysis of frilled shark Chlamydoselachus anguineus is presented based on 139 specimens caught incidentally by sergestid shrimp midwater trawling or bottom gill-net fishing conducted in Suruga Bay from 1984 to 1988. The food items of this shark were mostly decapodan cephalopods and fishes, which were found at the frequencies of 60.5% and 10.5%, respectively among the stomachs containing food. Food items found in the stomach, except for two cases of common squid Todarodes pacificus were digested to such an extent that it was not possible to identify the original shape. Therefore, species identification of decapodan cephalopods was performed by their beaks. These included bathypelagic species as well as epipelagic species. The empty stomach rate of specimens examined was 73.4% showing an extremely high level as compared with other deep-water sharks.
著者
武田 正倫 斉藤 寛 窪寺 恒己 松浦 啓一 町田 昌昭 A.AZIZ W.W.KASTORO M.KASIM Moosa 松隈 明彦
出版者
国立科学博物館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

平成4年度においては、平成4年11〜12月および平成5年1〜2月にアンボン島において、現地研究者の協力を得て、魚類・棘皮動物、軟体動物、魚類寄生虫、甲殻類の調査を行った。各動物群とも、多数の標本を採集して国立科学博物館へ持ち帰った。平成5年度においてはロンボク島各地を主調査地とし、補助的にスラウェシ島メナドにおいても調査を行った。調査方法は前年度と同様で、磯採集やキューバダイビングによって採集を行った。したがって、調査は主として潮間帯から水深20〜30mに達する珊瑚礁域で行われたが、その他、砂あるいは砂泥地においても各種動物を調査、採集した。魚類はおよそ2000点の標本を得、また、棘皮動物の標本はヒトデとクモヒトデ類を主として千数百点に上るが、すでに同定が行われたアンボン島産のクモヒトデ類は9科25種であった。軟体動物はロンボク島において多板類14種、大型腹足類約170種、二枚貝類約60種が採集された。このうち多板類は12種が日本南西部に分布する種と同種か、極めて近縁な種であり、その中の2種は新種と考えられる。また、頭足類は3科5種に同定された。甲殻類の標本数はおよそ1000点に達するが、造礁サンゴと共生する種の多くは琉球列島にも分布するものである。分類と分布だけでなく、生態に関しても特に興味深いのは、ウミシダ類やナマコ類と共生するカニ類で、数種の新種が確認された。魚類寄生虫に関しては、市場で新鮮な魚類を購入し、鰓や消化管に寄生する単生虫・二生虫・条虫・線虫、鉤頭虫・甲殻類を取出し、圧平標本や液浸標本として固定保存した。多くのものは沖縄と共通すると思われるが、ボラやボウズコンニャクの食道や腸から得た旋尾線虫や二生虫類に新種が発見された。すでに論文として、あるいは口頭で発表したものもあるが、分類学的研究が終了したものから順次国立科学博物館研究報告、動物分類学会誌あるいはそれぞれの動物群を対象とした専門誌に報告する予定である。
著者
窪寺 恒己 天野 雅男 篠原 現人 西海 功 天野 雅男 篠原 現人 西海 功
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、大型トロールネットや深海探査艇による大規模な調査とは異なり、日本の先進技術であるマイクロ電子機器を組み込んだ超小型・軽量の水中撮影システムおよび赤色系LEDを用いた照明機器を用い、深海環境への撹乱を最小限度に止めることにより、中深層性大型頭足類のみならず深海性動物の自然状態に限りなく近い生態を撮影・記録し、それらの実態に迫ることを目的としている。平成18~20年度の3年間、後藤アクアティックスと共同で開発した深海HDビデオカメラシステム3台を用いて小笠原父島周辺海域において、地元の漁船を傭船して各年9月から12月にかけて約4週間の野外調査を実施した。水深600~1100mの3層にシステムを降し、延べ120時間を超す撮影を行い、アカイカ、ヒロビレイカ、ソデイカ、カギイカなど中・深層性大型イカ類の遊泳行動や餌を捕獲する行動などがハイビジョン映像とした詳細に記録された。また、ヨシキリザメ、シュモクザメなど大型魚類の遊泳・攻撃行動も撮影された。これらの映像をコンピュータに取り込み、フレーム単位で詳細に行動様式の解析を行い、それら中深層性大型頭足類の行動生態に関する多くの新たな知見が得られた。また、平行して行われたマッコウクジラの潜水行動を探る超小型バイオロガーを用いた調査では、数回にわたりロガーの装着に成功し、マッコウクジラが日中は水深800~1000mに繰り返し潜行し、夜間は500~600mと浅い水深に策餌層を変える行動が明らかにされた。さらに、三次元加速度データから餌を襲う際の詳細な行動様式に関する新たな発見がなされた。