著者
小関 友宏 佐藤 剛 國家 全
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.37, 2008 (Released:2008-12-01)

【目的】 当院では,2004年より大腿骨頚部骨折クリニカルパス(以下CP)を導入し,一般病棟から回復期病棟入棟後も継続して運用している。また,医療機関の連携体制が評価されるようになった2006年からは地域連携パスも導入しており,他院から継続してCPを使用する頻度も増している。そこで今回,CP適応患者の現状を調査し,CP運用に影響する因子を検討したので報告する。【方法】 平成19年6月から平成20年3月までに当院に入院した大腿骨頚部骨折者で,当院で手術施行した35例,他院で手術施行した33例計68例のうち,受傷前ADLが車椅子レベルであった者、術後免荷期間が与えられた者,合併症により転科及び転棟した者を除く35例を対象とし,アウトカム達成した群19例(以下達成群)と,アウトカム達成できなかった逸脱群16例(以下逸脱群)に分類した。 当院CPは,後期高齢者が多い現状を考慮し,手術から回復期病棟入棟までを約1週,入棟から退院までを約12週と仮定し,アウトカムを約100日と設定している。 2群間で,年齢,手術から日中座位3時間の獲得日,手術から排泄動作自立日(ポータブル含む),手術から各歩行練習開始日までの平均日数の関係を比較検討した。統計的分析はt-検定を行い,危険率5%未満を有意水準とした。 【結果】 達成群・逸脱群の平均値をそれぞれ比較すると,年齢79歳・84歳(P<0.05),手術~平行棒内歩行9日・20日(P<0.01)手術~日中座位3時間獲得11日・22日(P<0.01),手術~排泄動作自立(ポータブル含む)26日・40日(P<0.05)であり,年齢,平行棒内歩行開始日,日中座位3時間獲得日,排泄動作自立日に関しては,2群間に有意差を認めた。 相関関係については,日中座位3時間獲得日が早ければ在院日数が短い(r=0.72),平行棒内歩行開始日が早ければ在院日数が短い(r=0.70),退院時の歩行が自立する日が早くなれば在院日数が短くなるという相関(r=0.81)をそれぞれ認めた。【考察】 今回の結果より,CPを予定通り実施していくためには,早期の日中座位保持時間の獲得と平行棒内歩行の開始の関与が示唆された。また,排泄動作の自立日の影響も認め,早期離床と早期荷重が,その後の歩行器歩行実施,排泄動作自立,病棟移動手段を車椅子から歩行へ移行,退院時歩行開始,というスムースな流れを作ることになり,結果として,在院日数の短縮へ結びつけると考える。今回の調査により,早期日中座位時間の獲得は,回復期病棟へのスムースなリハビリテーションの展開に寄与することが示唆された。回復期病棟入棟までの一般病棟において,日中座位時間3時間獲得し,平行棒内歩行を開始することは,重要な達成項目になってくるといえる。そのためには,一般病棟においても積極的な看護師との連携が不可欠であり,認識や理解の溝を埋める必要性は高く,チームのコンセンサスを得るためのツールとしても,パスは有用と思われる。
著者
市坪 明子 伊東山 洋一 伊東山 徹代 野間 俊司 中村 智哉 河上 紗智子 池田 美穂 千代田 愛美 永田 英二 松崎 智範 工藤 理沙
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.333, 2010 (Released:2011-01-15)

【目的】パーキンソン病に対する理学療法とし ては、転倒なき歩行能力の確保が重要であり、訓練プ ログラムとしては様々なものがあるが、明らかな効果 を示すものは少ない。そこで今回、歩行能力の維持・ 向上を目的に、腹臥位療法を取り入れたところ、歩行 のみならずADLも改善し、効果が得られたので若干 の考察を加えてここに報告する。【方法】 対象者はパーキンソン病と診断された男女10名、年 齢は平均67.7±9.15才、発症からの経過は平均45.7 ±18.7ヶ月である。Yahrのstageは_II_が2名、_III_が4 名、_IV_が4名である。そこでこれらの症例に対して腹 臥位を20分間とって貰い、その前後で10mタイム、 10m間の歩数、10m中のすくみ足の回数を測定すると ともに、ADLはFIMとYahrの分類を用いて評価した。 統計学的処理は、Wilcoxonの符号付順位和検定を用い て効果判定をした。有意水準は5%未満とした。尚、 本研究は症例に研究の意図を説明し、了承を得て実施 した。【結果】10mタイムは施行前34.0± 19.9秒、施行後25.0±11.5秒(p<0.05)。10m歩 数は施行前57.2±32.4歩、施行後43.0±23.9歩(p< 0.05)。10m中のすくみ足の回数は施行前3.2±1.4回、 施行後1.5±1.28回(p<0.05)。FIMの点数は施行前 58.2±19.3点、施行後65.9±17.1点(p<0.05)とな りYahrの評価では施行前3±0.67が施行後2.8±0.75 (p<0.05)となり、全ての項目に効果を示し、有意 差を認めた。【考察】パーキンソン病を有 する症例に対し、有働が提唱する腹臥位療法を取り入 れ、歩行改善を目標にプログラムを実施した。その結 果、歩行能力の改善のみならず、症例の中には一回の みの施行でADLが介助から監視レベルへと改善しYahr の重症度分類をも下げる程の効果を示した例もあっ た。その理由としては、腹臥位をとることで症例の持 つ自重により股関節ならびに脊柱がストレッチされ、 関節の可撓性の増大に繋がったからであろう。その事 で、姿勢アライメントならびに歩行時のダイナミック なバランスが改善され、パーキンソン病に特有のすく み足や突進現象の改善に効果を示したと考える。今回、 腹臥位療法の効果について確認できた事で、在宅や施 設でも簡単に出来る訓練法として更に推奨される訓 練法と考える。ただ、今回試行時間や持続性について は検討しておらず、今後とも研究を続けていきたい。 【まとめ】1.パーキンソン病を有する症例 に対して腹臥位療法を施行した。2.腹臥位療法 を行った前後で、歩行能力、ADLともに改善が見られ、 効果が確認できた。3.腹臥位療法の効果の持続 性や試行時間などは、今後検討が必要と考える。
著者
平野 高志
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.64, 2007 (Released:2008-02-01)

【はじめに】 平成18年に医療・介護保険の改定が実施され、リハビリテーション(以下リハ)では算定日数の制限が、入院療養では医療区分などが大きな問題となった。医療120床、介護293床全て療養病床の当院では、病院全体が大きく変わる事を余儀なくされた。そこで改定前後における当院の動向について調査し、私見を含めここに報告する。【対象・方法】 平成18年1月から12月の1年間における、病床稼働率、待機者数、入退院数、入退院者動向、医療区分、平均介護度、日常生活自立度、リハ延単位数について調査し、保険制度改定前後の動向と患者像を比較、検討した。【結果】 病床稼働率は、3月99.7%が12月には97.4%に低下し、待機者は3月に61名であったのが、6月には待機者なしとなる。入・退院数は順に1月は15名・11名、5月は22名・20名、10月27名・35名と最も多く、12月は18名・20名と低下傾向である。入院経路としては、病院からの紹介が多数を占め、自宅、近隣施設からの入院が続く。退院経路としては、転院、自宅、死亡退院が多数を占めている。4月以降介護系施設への退院も少数ではあるが増加している。医療区分の推移は、重症化が進んでおり、区分2以上の割合は、7月時点で71.3%、9月で80%を超え、12月には87.0%まで増加している。平均介護度は、全体で1月では4.18だったのが、6月に3.88、11月には3.67へと変化している。日常生活自立度は、病院全体でC2、B2、B1の順で多く、年間を通して変化はない。介護病棟ではB2、B1の増加C2の減少、医療病棟ではB2、B1の減少C2の増加となっている。リハ月別延単位数は、医療は3月に最も多く12月には47%減少し、介護では31%増加している。全体は、療法士の増減により多少変化はあるが大きな変化はない。【考察】 この改定で、リハにおける日数制限と医療区分が設けられ、療養病床のみである当院は、その対応に追われる1年となった。慢性期入院医療に関わる見直しで、区分の低い患者の療養が厳しくなり、介護保険の申請を勧め介護度を取得すると同時に、医療区分を確認した。医療と介護の適応判断を全患者で行い、必要時には退院指導も行った。在宅復帰・生活重視への移行で退院指導重視と種々の施設開設で、待機者なしとなったと考える。7月に向け、院内で医療と介護間で患者の移動があり、患者像が逆転したことが日常生活自立度、介護度から伺える。リハにおいてもリセット後180日で、医療の適応患者が減少し、療法士の配置を介護で増員し、リハ継続を進める事となった。医療と介護の機能分担と連携の明確化を痛感した。本年の例外的な医療保険の改定と2年後の介護の改定、また介護療養病床の廃止と情勢は変化する。医療と介護の連携に当院の方針を見出す必要がある。