著者
清水 一政 飯野 章 中島 淳次 田中 克典 中條 真二郎 浦川 紀元 厚地 幹人 和田 環 山下 千明
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.245-251, 1997-04-25
被引用文献数
4

ギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvestre)葉から抽出・精製したギムネマ酸類の各成分のモルモット回腸縦走筋の高濃度K^+収縮, モルモットおよびラット反転腸管を用いて糖輸送電位変化による糖輸送系およびラットの血糖に対する効果を相互に比較した. 高速液体クロマトグラフィーによる9分画(f1〜f9) (0.1 mg/ml)のうち, f2およびf4は平滑筋の高濃度K^+収縮を強く抑制し, f3, f5は中等度に, f8, f9は弱く抑制したが, その他の成分は影響がなかった. f2成分の高濃度K^+収縮抑制の大きさは74%であり, f4成分のそれの67%とほとんど同じであった. f2およびf4(0.1 mg/ml)により低下した収縮はピルビン酸(5.5 mM)の添加によりともに回復を示した, モルモットあるいはラット反転腸管のブドウ糖添加による糖輸送電位の増加に対して, f2およびf4 (0.1 mg/ml)はともに抑制し, その抑制の程度はともに40%であり, 両者に効力の差はほとんどなかった. また, ラットを用いたショ糖負荷試験においてf2およびf4はともに血糖上昇抑制作用を示した. これらのことから, f2およびf4はともにモルモット回腸縦走筋の収縮, モルモットおよびラット反転腸管の糖輸送電位の増加および血糖上昇を抑制する効果がある結果が得られた. 従ってこれらの成績によりギムネマ酸の各成分の一部は腸管におけるブドウ糖吸収を抑制することにより血糖上昇を抑制することが示唆される.
著者
長谷 正義 堀 達也 河上 栄一 筒井 敏彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.243-248, S・Vii, 2000-03-25
被引用文献数
8

最近, 犬の凍結精液への関心が高まり, これに伴って, 排卵時期および授精適期の判定法が重要となった.犬の排卵時期を推定する方法として, vaginal smear, 血中性ホルモン, 超音波画像診断装置(US)などを組み合わせて検討されているが, まだその技術は確立されていない.そこで業者らは, US, 血中LHおよびprogesterone(P)値を1日3回観察することによって, 排卵時期を推定する方法を検討した.その結果, USによって卵胞の形状が崩れることによって排卵が観察できたのは, 11頭中6頭(54.5%)であった.これらのLHピークから排卵までの時間は, 24〜48時間, 平均38.0時間であった.排卵日のP値は, 1.88〜2.81ng / ml, 平均2.34ng / mlで, 1頭が1.88ng / mlであったが, 他の5頭は2ng / ml以上を示した.排卵前日のP値は, 0.85〜1.56ng / ml, 平均1.12ng / ml, であった.実験犬11頭における, LHピーク後2日を排卵日とした場合のP値は, 2.12〜4.06ng / ml, 平均2.78ng / mlであった.また, LHが10ng / ml以上の高値を維持した期間は, LHピーク前後の12時間であった.以上のことから, USおよびLHによって排卵を推定するには, 1日数回の検査が必要であった.しかし, 末梢血中P値は1日1回の検査で, 2ng / ml以上を示した日が排卵日に当たることが明らかとなった.
著者
熊澤 教眞 道野 徹子 高田 薫 森原 秀雄 近藤 典男 川崎 康広 谷川 孝彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.955-956, 1991-10-15

イシマキガイとアマガイの軟体部乳剤からリン酸イオンの存在下で3%NaCl加BTB寒天培地上における腸炎ビブリオの増殖を阻止する活性が検出された. この抗腸炎ビブリオ活性はサザエ, クロアワビ, テングニン, マダコ, ミズダコ, シマメイカでは低レベル, アマオブネ, マガキ, アカガイ, ミミイカ,ホタルイカでは検出限界以下であった. この活性は易熱性で酸とアルカリに耐性であった.
著者
Hidenori KABEYA Kazuhiko OHASHI Misao ONUMA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.703-708, 2001 (Released:2001-08-07)
参考文献数
69
被引用文献数
40 68

Bovine leukemia virus (BLV) is a type C retrovirus infecting bovine B cells and causing enzootic bovine leukosis. Since it takes long periods to develop the disease, it is believed that BLV and host immune responses are closely related. In this review, the accumulated data showing close relationship between BLV and host immune responses are summarized in 4 sections. First, we discuss the role of cell-mediated immunity in protecting hosts from BLV infection. Second, several reports showing the relationship between the disease progression and the change of cytokine profiles are summarized. In the third section, we have focused on tumor necrosis factor α (TNFα) and its two types of receptors, and the possible involvement of TNF α in the BLV-induced leukemogenesis is discussed. The expression of TNF α has been shown to be regulated by major histocompatibility complex (MHC) haplotype. The resistance to BLV infection is supposed to be established by some innate factors, which are closely related to MHC haplotype. Finally, we propose that a breeding strategy based on the MHC haplotype could be a good approach to control BLV infection. This review includes some recent data from us and other groups.
著者
垰田 高広 原 康 増田 弘行 根津 欣典 山王 なほ子 寺本 明 竹腰 進 長村 義之 多川 政弘
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-7, 2006-01-25

正常ビーグル犬における下垂体切除後の飲水量と尿量の顕著な増大を主徴とする尿崩症様症状は, 術後2週間以内に自然消退することが報告されているが, その機序についての詳細は明らかにされていない.そこで, 健常犬に対して下垂体切除を行い, 下垂体切除が高張食塩水負荷による血清ナトリウム濃度, 血清浸透圧の上昇に対するアルギニンバソプレッシン(AVP)分泌動態に及ぼす影響について調査した.さらに下垂体切除後の間脳視床下部組織における室傍核および視索上核のAVP産生および分泌細胞である大細胞性ニューロンの細胞数を計測することにより, 下垂体切除がAVP産生能に及ぼす影響についても検討した.高張食塩水負荷試験の結果では, 下垂体切除後においても血漿AVP濃度は食塩水負荷に反応してわずかな上昇を示したが, その割合は対照群と比較して大きく低下しており, 1ヶ月および3ヶ月間の観察期間内では臨床的に尿崩症様症状を抑制するものの, 急激な食塩水負荷に反応できるほど回復していないものと考えられた.間脳視床下部の室傍核と視索上核の免疫組織化学的調査では, 下垂体切除によってAVP陽性細胞数が減少する傾向が示された.これらの結果から, 下垂体切除により大細胞性ニューロンの機能的, 数的減少が認められたこととなり, 術後におけるAVP分泌能の回復は臨床的な術後尿崩症様症状の改善と関連していないことが示唆された.