著者
Ables G.P 西堀 正英 印牧 美佐生 渡辺 智正
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.1081-1083, 2002-10
被引用文献数
19

結核菌やサルモネラ菌などの細菌感染抵抗性に関して,マウスには系統差がある.この形質は特定の遺伝子に支配され,ポジショナルクローニングによって,Natumlresistance associated macrophage protein1(KRAMP1)遺伝子と同定された.抵抗性の場合,169番地のアミノ酸がGlyであるのに対して,感受性ではAsnである.そこで,この周辺の領域が重要であると考えて,牛(黒毛和種,ホルスタイン,アンガス,韓牛,アフリカダマ牛)と水牛(フィリピン沼,インドネシア沼,バングラデツシュ沼と河)のNRAMP1遺伝子の,エクソンVとVIを含む781塩基対を決定した.その結果,この領域は非常によく保存されており,牛と水牛間でアミノ酸置換はエクソンVにおけるThrとIleだけであった.マウスの169番地に相当するアミノ酸は全てGIyであった.その他,エクソンVに2箇所(サイレント),イントロン4および5にそれぞれ2箇所と10箇所の塩基置換が検出され,これらを用いて系統樹が作成された.
著者
広瀬 修 柴田 勲 工藤 博史 鮫ヶ井 靖雄 吉澤 重克 小野 雅章 西村 雅明 廣池 忠夫 影山 潔 阪野 哲也
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.991-995, 1995-12-15
被引用文献数
10

1993年, 雌豚の繁殖障害を主微とする症例および子豚の呼吸器症状を主徴とする症例から採取した豚の肺材料からPRRSウイルス2株を分離した. これらの分離株を用いて5日齢および13日齢プライマリーSPF豚での実験感染を実施した. 接種した豚では感染後2日目ごろから元気消失, 食欲不振, 発熱, 下痢, 犬座姿勢および眼瞼浮腫などが認められた. 憎体率は非接種対照豚と比べ明らかに低下した. 異なるウイルス株を接種した豚群間で, 臨床症状の違いは認められなかった. 感染後28日目に剖検した豚では主に間質性肺炎, 非化膿性心筋炎およびカタール性リンパ節炎などが認められた. ウイルスは感染後7日目および28日目の主要臓器から回収され, さらに, 感染後7日目から試験終了時の28日目までの血清から回収された. 間接蛍光抗体を測定した結果, 抗体は感染後14日目から検出され, 28日目では1,280倍を示した.
著者
松山 聡 久保 喜平 大橋 文人 高森 康彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.201-203, 1997-03-25
被引用文献数
2 8

イヌ,ネコ,ウシ, ウマおよびウサギの正常肝臓組織より, 癌抑制遺伝子の一つと考えられているプロヒビチンcDNAの一部のクローニングをRT-PCR法により行った. その結果, 今回, RT-PCRにより増幅された部分は, 各動物種間でcDNAの塩基配列では約90%, アミノ酸配列では約95%以上の相同性を示した. したがって, これらのRT-PCR産物は, 各動物のプロヒビチンcDNAの一部であることが示唆された.
著者
酒井 宏治 矢田 佳織 坂部 元紀 谷 おりえ 宮地 一樹 中村 政幸 竹原 一明
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.491-494, 2006-05-25
被引用文献数
2

日本のダチョウ血清191検体について,ウイルス中和試験によるNDV抗体及び寒天ゲル内沈降反応によるAIV抗体の検出を実施した.NDワクチン接種歴のない22検体においてNDV抗体が検出された.本研究では,ウイルス中和試験と比べHI試験は鶏赤血球への非特異的凝集のためにNDV抗体検出法として適さないことが示された.AIV抗体は全て陰性であった.102検体のダチョウの気管及び腸管からは,赤血球凝集能を有するウイルスは分離されなかった.
著者
Shin J.-H. Sohn H.-J. Choi K.-S. Kwon B.-J. Choi C.-U. Kim J.-H. Hwang E.-K. Park J.-H. Kim J.-Y. Choi S.-H. Kim O.-K.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-7, 2003-01-25
被引用文献数
1 15

韓国は1934年以来口蹄疫の発生はなかったが,2000年3月から4月にかけて15箇所でOタイプの口蹄疫発生が生じた.同時期に台湾,中国,日本,ロシア,モンゴルでも,牛または豚にOタイプの口蹄疫発生が報告された.南北朝鮮境界非武装地帯から約5kmに位置する農場において口蹄疫擬似患畜が検出され,緊急調査を行った.病原ウイルスは,3D polymerase 領域,IRES領域,1D/2B領域を対象としたRT-PCR,抗原検出および型別検出用ELISAにより,口蹄疫ウイルスOタイプであることを同定した.発病牛の水疱を材料として1D/2B領域の塩基配列を調べた結果,台湾で分離された口蹄疫OタイプKinmen株と98%の類似性が認められた.原因ウイルスは若齢マウス経代後,黒ヤギ胎児肺細胞接種により分離された.
著者
佐伯 和弘 長尾 慶和 岸 昌生 永井 政僖 入谷 明
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.523-526, 1998-04-25
被引用文献数
1

シクロヘキシミド(CHX)で減数分裂再開始を抑制したウシ卵子の核の成熟に要する時間とその後の胚盤胞への発育を調べ, 抑制卵子に適した成熟時間を検討した.抑制卵子は16時間以降で核の成熟率が最高値に達し, 抑制しなかった対照卵子は20時間以降で最高値に達した.16時間成熟培養した抑制卵子は, 正常に受精した胚盤胞への発育率は低く, 20時間成熟培養することにより, 対照卵子と同等の発育率が得られた.以上のことから, CHXで減数分裂再開始を抑制したウシ卵子の核の成熟に要する時間は対照卵子と比べて4時間早まるが, 胚盤胞への発育には, 対照卵子と同程度の成熟培養時間を要することが示された.
著者
竹内 由則 大西 ゆみ 松永 悟 中山 裕之 上塚 浩司
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.529-532, 2008-05-25

11歳8ケ月齢,雄のチワワにおいて,顆粒細胞の増殖を伴う髄膜腫が認められた.大脳右半球のクモ膜下において,微細顆粒状〜泡沫状の好酸性細胞質を有する小型〜大型の多角形細胞が充実性無構造に増殖していた.また,一部の腫瘍細胞の細胞質がPAS陽性を呈した.また,この腫瘍細胞は免疫染色においてVimentinおよびS-100に強陽性であった.電顕観察下では,腫瘍細胞は細胞質に小胞および小型円形の構造物を有していた.我々は,本症例を「顆粒細胞様変化を有する髄膜腫」と診断した.
著者
廉澤 剛 野崎 一敏 佐々木 伸雄 竹内 啓
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.1167-1169, 1994-12-15
被引用文献数
11

1.5歳の雌雑種犬に自然発生した骨肉腫から直接細胞培養し, 骨肉腫細胞株POS細胞を樹立した. この細胞は, 33時間で倍加し, 形態的にはいくつかのタイプの細胞が観察された. 透過型電子顕微鏡で, 多数の拡張した粗面小胞体が認められ, また高いALP活性を持つことから, 骨芽細胞由来の細胞と考えられた. さらに, この細胞のヌードマウス移植腫瘍を病理組織学的に調べたところ, 原発腫瘍と同様の骨肉腫組織像を示すことが明らかになった.
著者
大江 正人 Rajamahendran Raja Boediono Arief 鈴木 達行
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.371-376, 1997-05-25
被引用文献数
7

ホルスタイン種経産牛を供試牛としてアロカ製牛経膣穿刺用コンベックス探触子(UST-945-改, SSD-500)を用い超音波誘導により経膣で卵母細胞を採取し, 体外受精卵を作出する技術の有効性を高めるために優勢卵胞除去後のFSH処置法について検討した. 発情周期の異なる時期でのFSH前処置として:実験-1 :発情排卵の翌日にFSH を投与, 3日目に卵母細胞を経膣採取, 実験-2 :発情排卵日から6日目に優勢卵胞を経膣穿刺用コンベックス探触子を用いて穿刺吸引除去し7日目にFSH投与, 9日目に卵母細胞を経膣採取, 実験-3 :妊娠牛において授精後70日から100日までの30日間に5日間隔でFSHを1回投与し, 48時間後に卵母細胞の経膣採取を連続して5回実施した. 対照区として発情排卵日から8日〜14日目の間にFSHを1回投与し, 48時間後に経膣採取した. それぞれの実験区で採取した卵母細胞は体外受精胚の作出に供した. その結果, 優勢卵胞除去牛と妊娠牛では安定して良質の卵母細胞が得られること, 体外受精で高率に移植可能肝の得られることが明らかになった. これは発情排卵後の第1卵胞波, 黄体期6日目の優勢卵胞除去による第2卵胞波へのインヒビン解除がFSHの同調を有効的に誘起したことを示唆している. また妊娠牛において卵母細胞反復吸引後に流, 早産が起こらなかったことから, 不法の活用範囲は更に広げることが可能と思われた.
著者
花房 泰子 趙 庚五 兼丸 卓美 和田 隆一 杉本 千尋 小沼 操
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.1127-1132, s・iv, 1998-10
被引用文献数
16

Babesia caballi実験感染馬の病態解析を行った.病理学的検索の結果, 直接の死因は肺水腫による呼吸不全と考えられ, 腎臓の特殊染色を行った結果, 増殖性糸球体腎炎が認められた.2頭の成馬にB.caballiを接種し, 末梢リンパ球におけるサイトカインmRNAの発現を調べた結果, 1個体においてはinterferon-gamma, tumor necrosis factor-alpha (TNF-α), interleukin (IL)-2, もう1個体においてはTNF-α mRNAの発現が増強されていた.両個体において, IL-4 mRNAの発現に変化は見られなかった.また, B.caballi感染馬における血清中の一酸化窒素(NO)の産生量を調べたところ, 3頭のデキサメサゾン(DX)投与馬の死亡直前(感染末期)にNOレベルの上昇が認められた.DX投与馬の1頭にNO合成酵素の阻害剤であるアミノグアニジン(AG)を投与して感染経路を調べたところ, AG投与馬では非投与馬と比較して高い寄生率と低いNOレベルが観察されたが, ウマは最終的に死亡した.本研究の結果より, B.caballi感染症においてサイトカインとNOが病態形成に強く関与している可能性が示された.
著者
Batanova Tatiana A. 太田 陽子 鬼頭 克也 松本 安喜 林 良博 高島 康弘
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.87-90, 2006-01-25
被引用文献数
1

マウス免疫グロブリンG1(IgG1)のFc領域をもつキメラ蛋白を作成し, その免疫学的性状を調べた.この分子は抗体分子の持つ性質のうち, マクロファージによる抗体依存性細胞障害の誘導能, lipopolysaccaride刺激された脾臓細胞によるインターロイキン10産生の増強能を保持していた.
著者
山下 和人 佐藤 正人 海川 暁子 津田 麻美 矢島 康広 椿下 早絵 瀬野 貴弘 加藤 澄恵 泉澤 康晴 小谷 忠生
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.229-235, S・Vi, 2000-03-25
被引用文献数
1

軽種馬24頭を6頭ずつの4群に分け, A群ではグアイフェネシン-ケタミン-メデトミジン混合液の持続点滴麻酔を併用した酸素-セボフルラン麻酔(GKM-OS麻酔), B群では酸素-セボフルラン麻酔(OS麻酔)下で頚動脈ループ形成術を実施した.また, C群ではGKM-OS麻酔, D群ではOS麻酔で4時間麻酔持続し, 心血管系の変化を観察した.AおよびB群の麻酔時間は約180分間であり, 麻酔維持期の終末呼気セボフルラン濃度はA群で1.5%, B群で3.0%前後であった.A群の動脈血圧は良好に推移したが, B群では血圧維持にドブタミン投与が必要であった.AおよびB群の結果より, 終末呼気セボフルラン濃度をC群では1.5%, D群では3.0%で麻酔維持した.C群では, 心拍出量と末梢血管抵抗が麻酔前の約70%に維持され, 血圧も良好に維持された.D群では, ドブタミン投与により心拍出量が麻酔前の約80%に維持され, 血圧も良好に維持されたが, 1頭に重度の頻脈を認めた.起立時間は, A群で36±26分, B群で48±19分, C群で38±27分, およびD群で58±12分であった.GKM-OS麻酔は心血管系の抑制が最小限であり, 麻酔からの覚醒も良好であることから, ウマの長時間麻酔に有用と考える.
著者
山内 啓太郎 吉田 真太郎 長谷川 晃久 池田 明弘 張 奎泰 松山 茂実 西原 真杉 宮澤 清志 高橋 迪雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.905-909, 1995-10-15
被引用文献数
5

ウマ卵巣より作出したcDNAライブラリーより, ウマインヒビンαサブユニット前駆タンパク質をコードするcDNAを単離した. ラットインヒビンαサブユニットcDNAの配列を基にプライマーを設計し, ラット卵巣RNAを用いたRT-PCR法によりスクリーニング用のプローブを作製した. 1.2×10^5個のプラークより19個の陽性クローンが得られた. そのうちの一つ(Eq-α-11)は, 367個のアミノ酸をコードする完全長のタンパク質翻訳領域を含んでいることが確認された. cDNAの塩基配列より推定されるウマインヒビンαサブユニット前駆タンパク質及び成熟タンパク質のアミノ酸配列は他の6種類の哺乳動物 (ウシ, ブタ, ヒツジ, ヒト, ラット, マウス) のものと比較して80%以上の相同性を有していた. ノーザンブロット法によりウマ卵胞及び精巣に存在するインヒビンαサブユニットmRNAのサイズは1.5 kbであることが判明した.
著者
Oros Jorge 松下 悟 Rodriguez Jose L. Rodriguez Francisco Fernandez Antonio
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1219-1221, 1996-12-25
被引用文献数
1

ラットカーバチルス抗原を, 標識ストレプトアビジンビオチン(LSAB)法と3-アミノ-9-エチルカルバゾル(AEC)を基質とした免疫ペルオキシダーゼ法を用いて, 免疫組織化学的に検出した. 免疫染色陽性部位は気管支の線毛上皮に限局しており, ラットカーバチルスに対する特異性が確認された. 本法はラットカーバチルスの検出に有用で, 間接免疫蛍光法より有利であると思われた.
著者
稲毛 富士郎 古濱 和久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.335-340, 1997-05-25
被引用文献数
1 2

肝障害時における肝臓残存予備能を推定する指標として, ヒト臨床ではICGの最大除去速度(Rmax)が繁用されている. しかし, ICG Rmaxの測定には短時間内に異なる用量での血漿中消失率(R)を求める必要があるため, 頻回採血の煩雑さや, 侵襲という点から, 覚醒ラットへの応用はこれまで殆ど試みられていなかった. 今回, ラット尾静脈からの微量採血法を用いて, ICG Rmaxの測定を可能にし, 肝障害モデルでその有用性を検討した. 実験には雄SD系ラットを用いた. その結果, ICGの投与量は2.5, 5, 10あるいは20 mg/kgの3-4用量が適切であり, 採血時間は, 投与前, 投与4, 7および10分後が最適であった. また, 各ICGの負荷は4時間以上間隔をあければ残留はなく, 必要全採血量は0.5 ml前後であった. 本条件下で2種の部分肝切除ラットで残存肝重量とICG Rmaxの関係を調べたところ, 得られた残存値はほぼ一致していた. 次に, 四塩化炭素(CCl_4: 0.1および0.25 ml/kg)をラットに17週間(3回/週)皮下投与し, 同一個体でICG Rmaxと血清生化学パラメータの推移を検討したところ, CCl_4投与50日以降, ICG Rmaxの低下と血清アルブミンおよびコリンエステアーゼの低下に有意な相関性が認められた. 以上のことより, ラットにおいてもICG Rmax測定は肝臓残存予備能の推定に有意であると結論した.
著者
三品 美夏 渡邊 俊文 藤井 康一 前田 浩人 若尾 義人 高橋 貢
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.989-993, 1997-11-25
被引用文献数
8

麻布大学附属動物病院に来院した犬152頭 (正常群102頭, 腎疾患群13頭, 心疾患群37頭) に対し, オシロメトリック法を用い, 最高血圧, 平均血圧, 最低血圧, 心拍数の測定を行った. オシロメトリック法で測定した血圧および心拍数は, 正常群では測定回数を重ねるに従い低下し, 安定する傾向が認められた. 前腕部と尾根部において血圧および心拍数を測定したところ, 両者間での測定値に有意差は認められなかった. 性差に関して雄は, 雌に比較して有意 (p<0.05) に高値を示した. 年齢と血圧の関係は認められなかった. 正常群および疾患群の心拍数と血圧の検討では, 各群間で心拍数には差は認められなかったが, 最高血圧, 平均血圧, 最低血圧のすべてにおいて正常群, 心疾患群に比較して腎疾患群は有意 (p<0.05) に高値を示した. このことから, 犬における腎疾患の症例では高血圧が発症していると考えられた.
著者
賀川 由美子 青木 聡視 岩富 俊樹 山口 守 籾山 紀子 平山 和子 谷山 弘行
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.863-865, s・vi, 1998-07-25
被引用文献数
3 12

イヌ, 8歳, 雌の頭頂部皮膚ならびに歯肉に, 多数のマクロファージと少数の好中球の浸潤からなる灰白色の肉芽腫性丘疹が認められた.浸潤マクロファージは腫大し, 多数の卵円形の酵母様真菌を含んでいた.酵母様真菌は直径2-5μm, 周囲にハローを持ち, PAS染色, グロコット染色に陽性を示し, 免疫組識化学的に抗ヒストプラズマ(yeast)抗体に陽性を示した.本例は日本におけるイヌヒストプラズマ感染症の初発例である.
著者
千葉 修一 兼松 重任 村上 賢二 佐藤 亨 朝比奈 政利 沼宮内 茂 御領 政信 大島 寛一 岡田 幸助
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.361-365, 2000-04-25
被引用文献数
3

競走中あるいは調教中に骨折した競走馬の血清中上皮小体ホルモン(PTH)およびカルシトニン(CT)レベルをラジオイムノアッセイにより測定し, 正常馬と比較した.橈骨, 第三中手骨, 第三手根骨, 指骨, 脛骨などの大型骨を骨折した競走馬では, 血清中のPTHレベルは正常であったが, CTレベルは上昇していた.種子骨骨折馬では正常馬と比較して, 血清中PTHは統計学的に有意ではなかったが, わずかに高値を示し, CTは統計学的に有意に高値であった.今回検索した競走馬における種子骨および大型骨骨折の病態は, それぞれ異なったカルシウム代謝の状況下で発現した可能性が示唆された.
著者
渡邊 一弘 菊池 正浩 奥村 正裕 廉澤 剛 藤永 徹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.889-894, 2001-08-25
被引用文献数
2 8

犬の歯根尖部にみられるapical deltaという複雑な構造は, 根尖病変の要因の一つと考えられている. 本研究では, apical deltaを含む根尖病変を除去するために行われている根尖切除術を実験的に犬に施した後, エナメルマトリックスタンパク(EMP)を根尖部に注入し, 根尖部歯周組織再生に対するFMPの効果を組織学的に検討した. ビーグル成犬5頭に対し, 全身麻酔下で左右の上顎第4前臼歯頬側近心根および上顎犬歯根の根尖とセメント質を除去した後, 左右いずれか一方の術部にEMPを注入し, 反対側を対照群とした. 12週間後, 安楽死して組織を採取し, 光学顕微鏡下で根尖切除部位における欠損の大きさ, 新生セメント質およびこれと新生骨を結ぶコラーゲン線維の有無を評価した. その結果, EMP群では対照群に比べ, 切除部位の欠損部は小さく, 新年セメント質の形成は優勢であった. 特に, 対照群では認められない新年セメント質と新生骨を結ぶコラーゲン線維が明らかに存在し, EMPが根尖切除後の根尖部歯周組織の再生を促進することが確認された. これらの所見は, 犬の根尖切除術に対するEMP使用の有用性を示唆するものである.
著者
河上 栄一 佐藤 孝志 平野 太一 堀 達也 筒井 敏彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.495-500, 2004-05-25
被引用文献数
1 4

犬の前立腺由来の精子結合糖蛋白質と精子の受精能獲得との関連を調べる目的で,3頭の射精精液および摘出した精巣上体尾部の割面をスライド・グラスに塗抹し,7種類のFITC-レクチン(Con A, DBA, GS-1, PHA-E, PSA, UEA-1, WGA)でそれらの塗抹精子の蛍光染色を行った.その結果,精巣上体尾部精子を全く蛍光染色せず,全ての射精精子を染色したレクチンは,PHA-Eのみであった.そこで,別の犬5頭の射精精子を発情犬の子宮角または卵管を潅流した液中で4時間培養し,活力ある精子およびhyperactivated sperm(HA-精子)の割合を調べた.さらに,PHA-E結合精子の割合および蛍光Ca indicatorを用いてCaを取り込んだ精子の割合も調べた.培養開始後4時間における子宮および卵管潅流液中の活力ある精子%,HA-精子%およびCa取り込み精子%の平均値は,潅流液無添加培養液中のそれらの値に比較して,いずれも有意に高かった(P<0.05,0.01).逆に,PHA-E結合精子%は,有意に低値であった(P<0.01).また,PHA-E非結合精子%とHA-精子%の間およびCa取り込み精子%の間に,それぞれ正の相関関係が認められた(r^2=0.787, r^2=0.812).本実験成績から,犬の前立腺から分泌された糖蛋白質の精子表面からの消失が,精子内へのCa流入を促進し,それによりhyperactivationが高率に誘起されると推察された.