著者
Atsushi TSUKAMOTO Koichi OHNO Mitsuhiro IRIE Aki OHMI Shingo MAEDA Ko NAKASHIMA Kenjiro FUKUSHIMA Yasuhito FUJINO Kazuyuki Uchida Hajime TSUJIMOTO
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.1111130690, (Released:2011-11-22)
被引用文献数
10 12

Endoscopic polypectomy and argon plasma coagulation (APC) were performed in a refractory case of inflammatory colorectal polyps in a 7-year-old male Miniature Dachshund. Colonoscopic examination revealed a large sessile polyp and multiple diffuse small polyps, localized to the descending colon and rectum. The case showed a poor therapeutic response to prednisolone and cyclosporine. Under anesthesia, piecemeal resections were performed by polypectomy. APC was carried out to cauterize the polyp remnants. After treatment, reduction of the lesions and the improvement in clinical signs were observed, without recurrence of lesions for at least 10 months. Endoscopic treatment by polypectomy and APC is suggested to be a therapeutic option for refractory cases of inflammatory colorectal polyps in dogs.
著者
高木 哲 北村 剛規 保坂 善真 大崎 智弘 ボスナコフスキー ダルコ 廉澤 剛 奥村 正裕 藤永 徹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.385-391, 2005-04-25
被引用文献数
1 11

RECKは近年発見された膜結合型内因性マトリクスメタロプロテイナーゼインヒビターであり, ヒトの臨床例においてその発現量と腫瘍の悪性度に負の相関が認められることが報告されている.本研究では犬のRECK遺伝子のクローニングを行った.その結果, cDNAは2,913塩基で, ヒトと95.5%, マウスと91.9%の相同性を示す971残基のアミノ酸から構成されることがわかった.様々な正常組織でのmRNAの発現量をリアルタイムPCR法にて定量した結果, 肺と精巣で高い発現が認められたが, 腫瘍細胞では極めて低い発現のみ認められた.免疫染色では精子, 平滑筋, 偽重層上皮などに強い染色性が認められ, 発現ペクターを用いた実験では腫瘍の浸潤能が抑制されていた.
著者
岡本 芳晴 南 三郎 松橋 晧 指輪 仁之 斎本 博之 重政 好弘 谷川 孝彦 田中 吉紀 戸倉 清一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.739-742, 1993-10-15
被引用文献数
17

イカ甲キチンより精製したポリN-アセチル-D-グルコサミン(キチン)の犬における組織反応を観察するために, 1群にはポリエステル製不織布(NWF)にキチンを含浸させたもの(キチン群)を, 他群にはNWFのみ(対照群)を, 1頭あたり背部皮下4ヶ所に移植した. 移植後2, 4, 8, 18日目に移植片を採材し, 肉眼的ならびに組織学的検索を実施した. キチン群において移植したNWFは漸次器質化され, 18日目には完全に器質化された. またこの時, NWFへの明瞭な血管新生を認めた. 一方, 対照群においては器質化は不完全であり, NWFへの血管新生も認められなかった. 組織学的にはキチン群において移植後2日目に対照群に比較してNWF周囲に単核球および多形核白血球の集簇が顕著であった. またキチン群において移植後4日目にNWF周囲に血管に富んだ結合組織が観察された. しかしながら対照群では, このような所見はこの時期においてはみられなかった. 以上の成績より, キチンはNWFへの単核球および多形核白血球の遊走を高め, 血管新生を伴うNWFの器質化を促進させることがわかった.
著者
中島 千絵 SILVA VAZ Jr. Itabajara da 今村 彩貴 今内 覚 大橋 和彦 小沼 操
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.1127-1131, 2005-11-25
参考文献数
24
被引用文献数
2 26

吸血中のフタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)より唾液腺を採取してcDNAライブラリーを作成し, ランダムに選んだ発現タンパク遺伝子の配列をblastx (NCBI)等のプログラムを用いて解析した.得られた633配列はその相同性によって, 同一あるいはごく近縁の遺伝子由来と思われる213配列に集約された.全633配列のうち, blastxを用いた相同性検索により発現タンパクの機能予測がなされたものは全体の36%であり, 残りの64%は未知の遺伝子であった.機能が予測されたタンパクの大半は細胞の生存に必要なハウスキーピングタンパクであったが, 血液凝固阻害因子類似の蛋白を含めたプロテアーゼインヒビターやメタロプロテアーゼ, 他のダニで分離されている免疫抑制物質に類似したタンパク遺伝子等も同定された.これらのタンパクはダニの吸血に際し何らかの重要な役割を演じている可能性があり, 新たな抗ダニワクチン抗原の候補となりうると考えられる.
著者
Yu YAMAMOTO Kikuyasu NAKAMURA Manabu YAMADA Masaji MASE
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.205-208, 2012 (Released:2012-03-02)
参考文献数
28
被引用文献数
9 21

An experimental infection study was performed using pigeons reared for racing or meat production in Japan and clade 2.2 and 2.3.2 isolates of H5N1 highly pathogenic avian influenza virus to evaluate the possible role of pigeons in virus transmission to poultry. In experiment 1, when 20 pigeons were intranasally inoculated with high or low viral doses, no inoculated pigeon exhibited clinical signs for 14 days. Drinking water and almost all swab samples were negative for virus isolation. Virus isolation was positive in 3 oral swab samples from 2 pigeons from day 2 through 4 postinoculation, but viral titers of positive samples were extremely low. Immunohistochemical analysis for virus detection was negative in all tissue samples. Along with seroconversion in a limited number of pigeons postinoculation, these results suggest that pigeons have limited susceptibility to the virus used for experimental infection. In experiment 2, when uninoculated chickens were housed with virus-inoculated pigeons, all pigeons and contact chickens survived for 14 days without exhibiting any clinical signs. According to serological analysis, the chickens did not exhibit seroconversion after close contact with inoculated pigeons. Our data suggest that the risk posed by pigeons with respect to the transmission of the H5N1 highly pathogenic avian influenza virus to poultry would be less than that for other susceptible avian species.
著者
山添 和明 日比野 千里 工藤 忠明 柳井 徳磨
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.739-745, 1994-08-15
被引用文献数
2

ハトに実験的上腕骨骨幹骨折を作製し, 骨セメント注入法とプレート固定法の併用が骨折の治癒機転に及ほす影響を検討するとともに, 飛翔能力の回復についての観察も行った. その結果, 骨セメント注入法あるいはプレート固定法単独では術後2週目以内に単純X線所見で全例再骨折を認めたが, 併用法では全例に再骨折を認めず, 術後6週目以降ほぼ正常な飛翔が可能であった. マイクロアンギオグラムおよび組織学的検査から骨セメントによる内仮骨形成の阻害が観察されたが, 血液供給は術後2週目ですでに回復しており皮質壊死像も認められなかった. また骨セメントが皮質骨折端間に高度に残存した場合皮質がつながらず, 海綿骨様化が認められた. しかし飛翔能力が早期に回復したことからプレートと骨セメントが骨折部の変位を防止する良好な支持体になると考えられた.
著者
清水 一政 尾関 美愛 田中 克典 伊東 佳代 中條 真二郎 浦川 紀元 厚地 幹人
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.753-757, 1997-09-25
参考文献数
17
被引用文献数
3 27

東南アジア地域に自生するガガイモ科植物のギムネマ・シルベスタ (Gimnema sylvestre) は古くから糖尿病, リウマチあるいは痛風などの疾病に効果があると伝承されている. しかし, 甘味抑制と苦味を有し問題がある. 本研究は甘味抑制と苦味を示さないギムネマ・イノドラム (Gimnema inodorun) (GI) 葉を用い, モルモット腸管平滑筋の高濃度K^+収縮に対する実験, モルモット回腸の酸素消費量の測定, モルモット回腸の糖輸送電位測定およびラットの糖負荷による血糖値測定試験を行い, GI葉成分の糖利用との関連について検討した. GI葉の抽出・精製物は高速液体クロマトグラフィーで4分画 (F-I〜F-IV) し, これらの各分画成分を用いて実験を行った. その結果, GI葉中には腸管平滑筋の収縮, 酸素消費量の増加, 糖輸送電位の増加あるいは血糖上昇をそれぞれ抑制する効果があることが示された. 従ってこれらの成績より, GIの薬理作用は, 腸管におけるブドウ糖吸収を抑制することにより血糖上昇を抑制している可能性が示唆される.
著者
吉川 泰永 森松 正美 落合 和彦 永野 昌志 山根 義久 冨澤 伸行 佐々木 伸雄 橋爪 一善
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.1013-1017, 2005-10-25
参考文献数
32
被引用文献数
13

乳腺腫瘍はヒトの女性および雌イヌでもっとも発症頻度の高い腫瘍である.BRCA2遺伝子は, DNAの修復に関与する巨大タンパク質をコードしており, ヒトではBRCA2が変異すると腫瘍罹患リスクが上昇する.BRCA2タンパク質はガン抑制タンパク質であり, これがヘテロ接合性の消失(LOH)によって不活化すると乳腺腫瘍が発症すると考えられている.本研究では, イヌBRCA2のLOH解析に適当な多型マーカを確立するために, 腫瘍に罹患したイヌ30例と罹患していないイヌ21例についてエキソン27領域のゲノム配列を解析した.これまでにイヌBRCA2遺伝子座で報告されていた多型は10204ins/delAAAだけだったが, この他に新たに4種類の単一ヌクレオチド多型(SNP)を発見した.これらのあわせて5つの多型を解析した結果, 4つのアリル型が存在することが判明した.今回解析した多型の中で10204ins/delAAAの出現頻度がもっとも高かったため, PCR法を応用してこの多型を判別する方法を確立した.この方法は, イヌのBRCA2においてLOHと腫瘍発症との関係を解析するうえで有用と考えられる.
著者
大宅 辰夫 丸橋 敏広 伊藤 博哉
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.1151-1155, 2000-11-25
参考文献数
23
被引用文献数
3 58

大腸菌O157は, 牛が主たる保菌動物であり, 糞便中に排菌されることが知られている.我々は, 大腸菌O157保菌牛の排菌阻止を目的とした生菌製剤を開発し, 実験感染牛への経口投与による予備的な排菌阻止試験を試みた.生菌製剤の試作には, 成牛糞便から分離した乳酸産生菌であるStreptococcus bovis LCB6株及びLactobacillus gallinarum LCB12株を用いた.4ヶ月齢のホルスタイン牛8頭に大腸菌O157を実験感染させ, 感染7日後に排菌を継続した4頭の保菌牛に生菌製剤を経口投与し, 大腸菌O157排除効果を調べた.生菌製剤の投与により, 糞便への大腸菌O157の排菌は完全に阻止され, 再排菌も認められなかった.実験期間中の糞便中VFA濃度を定量したところ, 排菌阻止は, 生菌剤投与をきっかけとした糞便中VFA, 特に酢酸濃度の急激な上昇と相関していた.また, 実験感染の過程で感染しなかった4頭の糞便中VFA濃度は, 感染した4頭に比べ, 有意に高く, 牛での大腸菌O157保菌には糞便中VFA濃度が一要因として関係していると考えられた.今回の成績は, 特定の条件下の牛を用いた予備的試験において得られたものではあるが, 生菌製剤の応用による大腸菌O157保菌牛の排菌阻止の可能性が示唆された.
著者
Yuya KIMURA Hidenobu KAWABATA Masaji MAEZAWA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.1104050483, (Released:2011-04-12)
被引用文献数
3 4

This survey explores the grief associated with the loss of a pet, and was carried out using a self-administered questionnaire. The questionnaires were handed out to 50 bereaved pet owners attending a public animal cremation service, and we received 18 responses. Participants responded within 0 to 44 (median 4) days of the death of their pet. Although most mental health problems immediately following mourning are presumed to be normal grief reactions, on the basis of several psychiatric scales, 8 of the 16 valid responses indicated depression and/or neurosis. Statistical analyses showed that the following factors were significantly associated with grief reactions: age of owner, other stressful life events, family size, age of dead animal, rearing place, and preliminary veterinary consultation.
著者
鈴木 正嗣 梶 光一 和 秀雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.551-556, 1992-06-15
被引用文献数
9

北海道洞爺湖中島のエゾシか個体群について, 精巣ならびに血漿テストステロン濃度の年間変動を調べた. 他の温帯性のシカ類と同様に, エゾシカにおいても, 精巣のサイズや精細管直径, 精細胞の構成や配列, 血漿テストステロン濃度に顕著な季節的変化が認められた. 精子形成は7〜8月頃に開始されると考えられ, 8月末の時点では完成した精子が少数みられた. 洞爺湖中島における交尾期開始時期の10月末になると, 精巣サイズや精細管直径の平均値は最大となり, 精上皮には盛んな精子形成像が認められた. 精巣の退縮はl2月末には始まっており, 2〜3月になると精子形成は終了していた. 以後6月頃まで, 精巣は休止状態にあるものと思われた. 交尾期にあたる10月末と11月初めの血漿テストステロン濃度は, 2月や3月, 6月, 12月に比べると極めて高く, 個体差が大きかった. この個体差は, テストステロンのpulsatile secretionによるものと考えられた.
著者
原澤 亮
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.961-964, 1994-10-15
被引用文献数
3

豚の日本脳炎, 伝染性胃腸炎, パルボウイルス病, およびヒトの麻疹, 風疹, 流行性耳下腺炎に対する生ワクチンから検出された pestivirus RNA の5'非コード領域を比較検討し, 以下の成績を得た. (1)検出された pestivirus RNA は, 牛ウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)のものと思われた. (2)これら pestivirus は既知のBVDV株も含めて, 少なくとも3型(I, II, III)に分けられた. (3)塩基置換は二次構造へ寄与するように共変的(covariant)であった. (4)想定された二次構造は原核生物のρ非依存性ターミネーターに類似していた. (5)5'非コード領域内に短いORFが比較的よく保存されていた.
著者
Wu Yuluo Hinenoya Atsushi Taguchi Takashi NAGITA Akira SHIMA Kensuke TSUKAMOTO Teizo SUGIMOTO Norihiko ASAKURA Masahiro YAMASAKI Shinji
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.589-597, 2010
被引用文献数
27

Shiga toxin-producing <i>Escherichia coli</i> (STEC) isolated from Japan were investigated for the distribution of virulence genes. A total of 232 STEC strains including 171 from cattle and 61 from human were examined for the occurrence of genes responsible for bacterial adhesions to intestine, e.g., <i>eae</i> (intimin, <i>E. coli </i>attaching and effacing), <i>saa</i> (STEC autoagglutinating adhesin), <i>iha</i> (<i>irgA</i> homologue adhesin), <i>efa1</i> (<i>E. coli</i> factor for adherence), <i>lpfA</i><i><sub>O113</sub></i> (long polar fimbriae), and <i>ehaA</i> (EHEC autotransporter) by colony hybridization assay. Similarly, the presence of toxigenic <i>cdt</i> (cytolethal distending toxin), and <i>subAB</i> (subtilase cytotoxin) genes were also checked. Among cattle isolates, 170, 163, 161, 155, 112 and 84 were positive for <i>lpfA</i><i><sub>O113</sub></i> (99%), <i>ehaA</i> (95%), <i>iha</i> (94%), <i>saa</i> (91%), <i>subAB</i> (65%), and <i>cdt-V</i> (49%), respectively, while 2 were positive for <i>eae</i> (1.2%) and <i>efa1</i> (1.2%) each. In case of human isolates, 60, 59, 58 and 58 were positive for <i>ehaA</i> (98%), <i>iha</i> (97%), <i>efa1</i> (95%), and <i>eae</i> (95%), respectively, while 11, 2, 2, and 1 were positive for <i>lpfA</i><i><sub>O113</sub></i> (18%), <i>saa</i> (3.3%), <i>cdt-V</i> (3.3%), and <i>subAB</i> (1.6%), respectively. Therefore, in human STEC isolates <i>efa1</i> and <i>eae</i> whereas in cattle isolates <i>saa</i>, <i>lpfA</i><i><sub>O113</sub></i>, <i>cdt-V</i> and <i>subAB</i> were prevalent. These data indicate differential occurrence of some pathogenic genes in human and cattle originated STEC strains in Japan.<br>
著者
斉藤 久美子 田川 雅代 長谷川 篤彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.797-799, 2003-07-25
被引用文献数
2 11

人の梅毒検査用RPRテストが兎梅毒の診断にも有用であることが報告されていることから,日本の伴侶兎について兎梅毒の血清学的調査を行った。2001年4月から2002年3月の1年間に来院した兎で,梅毒の症状も発症歴もなく,交尾歴のない単独飼育の伴侶兎100頭に対してRPRテストを行ったところ,35例が陽性,65例が陰性であった。伴侶兎における本症予防のためにはRPRテストを行って繁殖兎を選別する必要性があるものと思われた。
著者
渡来 仁 杉本 千尋 尾上 貞雄 小沼 操 保田 立二
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.17-22, 1995-02-15
被引用文献数
3

Theileria sergenti のレセプターとして, ウシ赤血球膜ガングリオシドが機能しうるか否かを調べるために, ウシ赤血球膜由来のガングリオシドならびにウシ赤血球膜のガングリオシドと同じ糖鎖構造を持つガングリオシドをリポソームに組み込み, 原虫によるリポソーム凝集反応を行った. 原虫は, N-アセチルノイラミン酸(NeuAc)を持ったI型ガングリオシドを組み込んだリポソームを弱く, またN-グリコリルノイラミン酸(NeuGc)を持ったI型ガングリオシドを組み込んだリポソームを強く凝集したが, GM3(NeuAc), GM3(NeuGc), sialosylparagloboside(SPG) (NeuAc), SPG(NeuGc), i型ガングリオシド(NeuAc)ならびにi型ガングリオシド(NeuGc)を組み込んだリポソームは凝集しなかった. このことは, ウシ赤血球膜のI型ガングリオシド(NeuAcおよびNeuGc)が, T. sergenti のレセプターとして機能していることを示唆するとともに, I型ガングリオシド(NeuAc)に比べてI型ガングリオシド(NeuGc)のほうが, ウシ赤血球膜において, T. sergenti のレセプターとして強い活性を持っていることを示唆している. さらに, T. sergenti 感染前後の赤血球を用いて, ウシ赤血球膜のガングリオシド組成の変化を分析したところ, T. sergenti 感染後において, I型ガングリオシド(NeuAc)の量が僅かに(p < 0.05), またI型ガングリオシド(NeuGc)の量が顕著(p < 0.01)に減少した. しかしながら, 他のガングリオシドにおいては, T. sergenti の感染に伴う変化が認められなかった. この現象は, T. sergenti 感染後の赤血球においては必ず認められ, T. sergenti感染に伴う特徴的なガングリオシドの組成の変化であることが示された.
著者
Kim Junghyun Chung Han-Kook Jung Taewon CHO Wan-Seob CHOI Changsun CHAE Chanhee
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.57-62, 2002-01-25
被引用文献数
6 70

1999年1月から2001年12月までの間に発生した離乳後全身性消耗症候群について, 疫学, 組織病変および混合感染の有無についてレトロスペクティブに調べた.離乳後全身性消耗症候群の診断は臨床所見(体重遅延), 特徴的な組織病変(肉芽腫性炎と封入体形成)と病変中のサーコウイルス-2(PCV-2)の存在によってなされた.これらの所見に基づいて1, 243例中の133例(8.1%)が離乳後全身性消耗症候群と診断された.年齢は25日齢から120日齢の間に分布していたが, 大多数は60日齢から80日齢(78例, 58.6%)に集中していた.発生は年間を通してみられたが, 5月(38例, 28.6%), 4月(18例, 13.5%), 6月(13例, 9.8%)の順に多かった.特徴的, 普遍的病変は, リンパ節, 肝臓および脾臓における多発性の類上皮細胞と多核巨細胞からなる肉芽腫性病変であった.また大多数の例(113例, 85, 0%)で混合感染がみられた.PCV-2とヘモフィルス・パラスイス(43例, 32.3%)ついで豚生殖器・呼吸器症候群(39例, 29.3%)との混合感染が多かった.病変部には他のウイルスや細菌に比べPCV-2の存在が圧倒的に多かったことから, 離乳後全身性消耗症候群の病因としてPCV-2が強く示唆された.
著者
清水 晃 尾崎 潤一郎 河野 潤一 斉藤 吉広 木村 重
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.355-357, 1992-04-15
被引用文献数
5

検索した8種類の動物およびヒトの皮膚からブドウ球菌が高率に分離された. 動物で分離頻度の高かった菌種はノボビオシン(NB)抵抗性のもので, なかでもStaphylococcus xylosusがブタ, ウシ, ウズラ, ニワトリ, マウス, ラットの皮膚に広く分布していることがわかった. また, ニワトリからはNB感受性のS. aureusとS. hyicusも比較的多く分離された. ヒトから分離されたブドウ球菌はすべてNB感受性の菌種であった.
著者
小澤 真 大橋 和彦 小沼 操
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.1237-1241, 2005-12-25

ニューカッスル病(ND)はニューカッスル病ウイルス(NDV)により引き起こされる鶏の最も重要な感染症のひとつあり, 生および不活化ワクチンにより制御されている.しかしNDVは多種類の野鳥など, ワクチンされていない鳥に感染し, これらの感染がNDの発生・伝播に重要な役割を果たしているので, 野外での新たなNDの制御法が必要である.ファージディスプレイ法は目的の標的分子に結合するペプチドの検索方法として有用であり, バイオパンニング法によりNDV結合性ペプチド3種類(EVSHPKVG, WVTTSNQW, およびSGGSNRSP)を同定した.ファージ上のこれらのペプチドのNDV結合特異性は抗NDV鶏血清を用いた競合ELISA法により確認された.またこれらのアミノ酸配列をもとに作製した合成ペプチドはin vitroにおいて部分的にNDVを中和した.今回同定したペプチドモチーフは, 免疫系に依存することなくNDV感染を阻止する新規分子の同定へと発展する可能性を有している.
著者
村田 浩一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.785-790, 2002-09-25
被引用文献数
1

1988年から2001年までの13年間に国内で捕獲された701羽の野鳥について血液内寄生虫の保有状況を調査した.供試した野鳥は一部を除いて傷病が原因で神戸市内およびその周辺で保護され,動物園に治療のために持ち込まれた個体であった.総検査羽数の10.6%にあたる74羽に血液内寄生虫の感染が認められ,その内,住血原虫の寄生する個体はPlasmodium spp.が12羽,Haemoproteus spp.が36羽およびLeucocytozoon spp.が32羽であった.ミクロフィラリアがイカル(Coccothraustes personatus)およびツグミ(Turdusnaumanni)の各1羽から検出された.Haemoproteus sp.とLeucocytozoon sp.の混合感染が4種6個体,ミクロフィラリアとLeucocytozoon sp.の混合感染が2種2個体にそれぞれ観察された.住血原虫の感染が比較的多く認められた鳥種は,コノハズク(Otus scops):4羽中3羽,ホンドフクロウ(Strix uralensis):14羽中10羽,ハシブトガラス(Corvusmacrorhynchos):26羽中17羽,ウミネコ(Larus crassirostris):7羽中4羽,アオバズク(Ninox scutulata):9羽中5羽,ハシボソガラス(Corvus corone):39羽中18羽,ゴイサギ(Nycticorax nicticorax):29羽中7羽であった.
著者
村田 浩一 仁位 亮介 由井 沙織 佐々木 絵美 石川 智史 佐藤 雪太 松井 晋 堀江 明香 赤谷 加奈 高木 昌興 澤邊 京子 津田 良夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.501-503, 2008-05-25
被引用文献数
2

南大東島に生息する野鳥4科4種183個体の血液原虫感染状況を調査した.そのうち3種109羽(59.6%)に血液原虫感染を認めた.ダイトウコノハズク30個体の末梢血液中に原虫を認めなかった.Haemoproteus sp.およびPlasmodium sp.感染がダイトウメジロ14羽(45.2%)に認められた.モズおよびスズメにPlasmodium spp.感染が認められ,感染個体比率はそれぞれ92.2%(94/102)と5%(1/20)であった.