著者
谷口 初美 山田 美恵子 内藤 知佐子 内海 桃絵 任 和子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.2_71-2_79, 2014-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
34

【目的】新人看護師のリアリティ・ショックの現状を理解し,大学から臨床へのスムーズな移行を促す看護基礎教育のあり方を探ること。【研究方法】A大学を卒業後,A大学の附属病院に就職した新人看護師10名を対象に,質的研究の記述的現象学を用い実施した。本研究はA大学医学部とA大学病院看護部の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】新人看護師のリアリティ・ショックの要因として,①求められる能力のハードルが高すぎ,何もできない自己に対するショック,②職場における先輩との人間関係がクローズアップされ,基礎教育のときから臨床現場に即した看護ケア,high riskケアと接遇の必要性が明らかになった。【考察】安全で質の高い臨床実習を保障するため先進国が実施している大学と臨床が協働で取り組むシミュレーション教育のシステム構築の必要性が示唆された。
著者
中井 義勝 任 和子 鈴木 公啓
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.69-74, 2017 (Released:2017-01-01)
参考文献数
18

食行動異常のため受診した患者を対象に, DSM-5診断基準を用いて回避・制限性食物摂取症 (ARFID), 神経性やせ症摂食制限型 (AN-R) とAN過食・排出型 (AN-BP) の診断を行い, その臨床症状を3群間で比較検討した. ARFIDは, 食行動障害および摂食障害群570例中83例 (14.6%) で, 全例が女性であった. ARFIDはAN-BPに比し初診時年齢が若く, 罹病期間が短かった. 精神病理を検討した結果ARFIDが3群間で最も低いことを示唆する結果であった. 今回検討した思春期以降のARFIDの臨床症状は欧米で報告されている小児のARFIDの臨床症状と異なる点があった.
著者
福谷 直人 任 和子 山中 寛恵 手良向 聡 横田 勲 坂林 智美 田中 真琴 福本 貴彦 坪山 直生 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1512, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】腰痛は,業務上疾病の中で約6割を占める労働衛生上の重要課題であり,特に看護業界での課題意識は高い。近年では,仕事に出勤していても心身の健康上の問題で,労働生産性が低下するプレゼンティーイズムが着目されている。しかし,看護師の腰痛に着目し,急性/慢性腰痛とプレゼンティーイズムとの関連性を検討した研究はない。したがって,本研究では,看護師における急性/慢性腰痛がプレゼンティーイズムに与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】大学病院に勤務する看護師807名(平均年齢:33.2±9.6歳,女性91.0%)を対象に,自記式質問紙を配布し,基本属性(年齢,性別,キャリア年数),腰痛の有無,腰痛の程度(Numeric Rating Scale)を聴取した。腰痛は,現在の腰痛の有無と,現在腰痛がある場合,その継続期間を聴取することで,腰痛なし,急性腰痛(1日から3ヶ月未満),慢性腰痛(3ヶ月以上)に分類した。さらに,プレゼンティーイズムの評価としてWork Limitations Questionnaire-J(WLQ-J)を聴取した。WLQ-Jは,労働生産性を数値(%)で算出できる質問紙であり,“時間管理”“身体活動”“集中力・対人関係”“仕事の結果”の下位尺度がある。統計解析では,対象者を腰痛なし群,急性腰痛群,慢性腰痛群に分類し,Kruskal Wallis検定(Bonferroni補正)およびカイ二乗検定にて基本属性,WLQ-Jを比較した。次に,従属変数に労働生産性総合評価および各下位尺度を,独立変数に急性腰痛の有無,または慢性腰痛の有無を,調整変数にキャリア年数・性別を投入した重回帰分析を各々行った(強制投入法)。統計学的有意水準は5%とした。【結果】回答データに欠測のない765名を解析対象とした。対象者のうち,363名(47.5%)が急性腰痛,131名(17.1%)が慢性腰痛を有していた。単変量解析の結果,腰痛なし群に比べ,急性および慢性腰痛群は有意に年齢が高く,キャリア年数も長い傾向が認められた(P<0.001)。加えて,“労働生産性総合評価”“身体活動”“集中力・対人関係”において群間に有意差が認められた(P<0.05)。重回帰分析の結果,急性腰痛が労働生産性に与える影響は認められなかったが,慢性腰痛は“集中力・対人関係”と有意に関連していた(非標準化β=-5.78,標準化β=-1.27,P=0.016,95%信頼区間-10.5--1.1)。【結論】本研究結果より,看護師の慢性腰痛は“集中力・対人関係”低下と有意に関連することが明らかとなった。急性腰痛は,発症してから日が浅いため,まだ労働生産性低下には関連していなかったと考えられる。しかし,慢性腰痛では,それに伴う痛みの増加や,うつ傾向などが複合的に“集中力・対人関係”を悪化させると考えられ,慢性腰痛を予防することで労働生産性を維持していくことの重要性が示唆された。
著者
中井 義勝 任 和子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.361-368, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
18

食行動異常のため受診した患者を対象に, DSM-Ⅳ診断基準とDSM-5診断基準を用いて摂食障害の診断を行い, 以下の点が明らかとなった. DSM-Ⅳ診断基準で, 摂食障害全体の37.1%を占めた特定不能の摂食障害は, DSM-5診断基準では, 8.4%と著しく減少した. DSM-5の過食性障害 (BED) の診断基準を満たす症例が251例の摂食障害患者中70例 (27.9%) 存在した. BEDは神経性過食症非排出型 (BN-NP) との鑑別診断が容易でない. 非排出行動の判定基準を明確にし, 判定方法を確立する必要がある. DSM-5ではbinge eatingを過食と訳しているが, 患者の訴える「過食」は, さまざまな食行動を含み, BEDの診断基準に合致しない場合があるので, 慎重な問診を必要とする. DSM-5で使用されているBEDの訳「過食性障害」と, binge eatingの訳「過食」の問題点について考察した.
著者
山口 曜子 村内 千代 大倉 瑞代 横田 香世 任 和子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.229-236, 2017

<p>看護師の糖尿病予防的フットケアに対する臨床能力評価法の開発に向け,フットケア外来とそれに従事する看護師の状況を調査した.全国の日本糖尿病学会認定教育施設と糖尿病専門医が在職する施設において糖尿病看護に従事し,その実状を把握する看護師を対象にした.結果,414施設(37 %)から回答を得,84 %の施設が外来でフットケアを実施し,78 %が糖尿病合併症管理料報酬の算定を行い,76 %が糖尿病専門外来を設置していた.糖尿病重症予防研修修了看護師の在職率は60 %以上で,糖尿病療養指導士の資格を持つ看護師が全体の60 %以上を占めていた.また,フットケアマニュアルを持つ施設は43 %で,フットケア教育後の看護師に対する能力評価はほとんどの施設が行っていなかった.今回の調査から,フットケアマニュアルと教育プログラムの整備の必要性が明らかになり,予防的フットケアに対する臨床能力評価法の開発の必要性が示唆された.</p>
著者
岡谷 恵子 小野田 舞 柏木 聖代 角田 直枝 川添 高志 小西 美和子 斎藤 大輔 澤柳 ユカリ 重富 杏子 任 和子 橋本 幸
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.559-563, 2021-07-10

救急外来を受診する高齢患者の約半数は入院に至らずに帰宅する患者である。これらの患者が再受診や予定外の入院をすることなく,住み慣れた場所で生活の質を維持しながら療養を継続するためには,初回受診時に帰宅後の生活を見据えた医療機関と地域・在宅での療養をつなぐ統合的な療養生活支援が必要である。 日本看護管理学会では,2022(令和4)年度の診療報酬改定に向けて,「救急外来における非入院帰宅患者に対する看護師による療養支援」への評価を要望する。これは上述の療養生活支援の役割を外来看護師が担うことへの診療報酬上の評価を求めるものである。救急医療の限られた資源を適切に活用することにもつながり,病院経営上,組織運営上の効果も大きいと思われる。 本稿では要望作成に当たった検討委員会の立場から,要望の目的と意義を述べる。
著者
大西 弘高 任 和子 西薗 貞子 北野 綾香
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

看護領域の臨床推論と混同されやすい看護過程と看護診断について概念の整理を行った。そして看護領域の臨床推論には、医学モデルに基づく推論と、看護独自の視点に基づく推論の2つがあることが明らかになった。多職種協働の発展に従い、看護師の特定行為研修で医学モデルの臨床推論がカリキュラムに組み込まれたこともあり、看護師の臨床推論と医師の臨床推論は歩み寄ってきている。臨床推論の教育方法としては、複雑さと不確実性の中で患者の経時的な変化を捉えて推論・判断を行う練習をするために、ケース・スタディが有効である。その方法の一つとして、Inquiry-based Learningがある。
著者
高橋 良 田中 真琴 任 和子
出版者
京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
雑誌
京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻紀要 : 健康科学 : health science (ISSN:18802826)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.41-51, 2014-03-31

We conducted a qualitative research project to determine the coping mechanisms of male nurses in facing the challenges of being males in a predominantly female field. Health care workers and the patients face issues of stigmatization in their interactions within the health care environment. Our team conducted interviews with five male nurses. The purpose was to identify the sources and coping mechanisms of work-induced stress for male nurses in the female-dominated professional field. We found that they faced 3 sources of stress. The 3 main sources of stress were: difficulty in interacting with female patients; difficulty in interacting with female nurses; and anxiety regarding their future career development. The coping strategies of the male nurses consisted of both problem-oriented coping and emotion-oriented coping, with the male nurses gravitating to one or both orientations depending on the source of stress. In order to face the 3 sources of stress, the male nurses used seven coping mechanisms: a tendency to assign tasks among the female members of the team; constructing their own new coping mechanisms such as blocking out unpleasant situations; developing a mature experience-based response procedure for dealing with female patients; realization of their personal strengths as males; relieving stress by sharing challenges with other male nurse peers; developing an awareness of professional pride and responsibility; habituation of being a minority gender in a group of females. We believe the research reveals a need for hospitals to provide specialized support and training to male nurses.