著者
高原 幹 野沢 はやぶさ 岸部 幹 原渕 保明
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.277-283, 2003-06-01

掌蹠膿疱症は扁桃病巣感染症の中でも代表的疾患であり, 扁桃摘出術が非常に高い治療効果をもたらす疾患である.当科における45例の検討でも, 有効以上の効果は38例 (85%) に認められ, 高い改善率を示した.術後改善度と年齢, 性別, 胸肋鎖骨過形成症合併の有無, 病悩期間などの患者背景や, 血清ASO, ASK, IgA, IgM, IgG値, 扁桃病理組織におけるT細胞領域, B細胞領域の面積比の相関を検討した所, T細胞領域において術後改善度と正の相関が認められ, 術後改善度を予測する因子となり得る可能性が示唆された.<BR>以前より, 掌蹠膿疱症扁桃の病理組織において, T細胞領域の拡大が認められる事が報告されている.このT細胞領域では, CD25陽性活性化T細胞の増加が認められ, T細胞制御因子 (CTLA-4, Smad7) のmRNA発現低下が認められたことから, その拡大はT細胞の制御機構の障害による活性化, 増殖によるものと推測された.T細胞制御の障害は無秩序な免疫反応を助長し, 自己抗体産生に繋がることが予想され, この事が掌蹠膿疱症の病因に関与している可能性が示唆された.このことから, T細胞の活性化を表す指標が術後の改善度を予測する因子になる事が予想される.その一つとして, T細胞領域の計測が考えられるが, それ以外にもT細胞の活性化を反映するより簡便な指標が存在する可能性もある.より高い改善率を目指すために, それらの指標に関してさらに検討を進める必要があると考える.