著者
岳田 ひかる 齋藤 和也
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.159-163, 2015-06-10 (Released:2015-08-15)
参考文献数
11

咀嚼から嚥下反射にいたる咀嚼筋の一連の筋活動を表面筋電図およびレーザ変位センサを用いて記録・解析した. 口腔咽頭に形態的機能的障害を認めない大学生ボランティアを対象として, パン 5-10グラムを自由に咀嚼・嚥下させた時の咬筋, 側頭筋および舌骨上筋群の表面筋電図, ならびに甲状軟骨の変位を計測した. 咀嚼中, 下顎の開閉運動に応じて開口筋である舌骨上筋群と閉口筋の咬筋・側頭筋は交代性に収縮を繰り返した. その後, 両筋群の1ないし数回の共収縮の後, 嚥下反射の惹起が観られた. 開口筋と閉口筋の共収縮により顎関節の安定性を高めることが, 嚥下口腔期から咽頭期への移行に重要な要素であると考えられた.
著者
加藤 久幸 油井 健宏 日江井 裕介 桜井 一生
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.41-47, 2014-03-31 (Released:2014-08-20)
参考文献数
18

中咽頭癌の診断・治療には HPV との関連の解明や喫煙率の低下, IMRT や分子標的薬, ロボット手術などの新しいモダリティの出現によりパラダイムシフトが起こっている. HPV 関連癌は非関連癌と比べ有意に遺伝子変異が少なく, 非喫煙者に多く, 予後が良好で生物学的に異なる性格を持つ癌腫との認識が必要である. 現在, HPV 関連癌に対して治療成績を保持・向上しつつ, 治療強度を下げて患者の QOL を改善するかに主眼を置いた臨床試験が行われている. 本稿では発癌要因と発症率の動向, HPV 関連癌と非関連癌の分子生物学的相違, HPV の検出法, p16免疫染色の有用性, HPV 感染・喫煙と予後, 臨床試験について概説する.
著者
原 浩貴 村上 直子 山下 裕司
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.245-252, 2003-02-28 (Released:2011-03-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2

2001年5月より2002年4月までの1年間に, いびき・OSAS患者32名に対し睡眠中のいびき音をMDに録音した後, マルチディメンジョナルボイスプログラムを用いて音響解析を行った.その結果, 周波数分析上, 単純いびき症例では, 基本周波数を中心とした一峰性のピークを持つものがほとんどであるのに対し, 閉塞性睡眠時無呼吸症候群例では, 1kHz以上の高周波数帯に複数のピークを持つ傾向がみとめられた.また雑音成分は, 単純いびき症でSPIが高く, 閉塞性睡眠時無呼吸症候群例でNHRが高い結果がえられた.
著者
進 武幹 福山 つや子
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.37-41, 1993-03-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
9

The cause of Behcet's disease is still unknown. In this paper, we describe the features of Behcet's disease as reported by the Japan Ministry of Health and Welfare in 1987. Behcet's disease is characterized by oral and genital ulcers and ocular inflammation. At least two of these main symptoms are required to establish the diagnosis. Behcet's disease is further classified as having mucocutaneous, arthritic, digestive, vascular and neurologic abnormalities.Behcet's disease must be differentiated from benign mucous membrane pemphigus, pemphigoid and erythema multiforme. The ulcers in recurrent aphthous stomatitis are quite similar in appearance. These diseases can be ruled out with pathological and immunological techniques.
著者
中島 逸男 谷垣内 由之 吉田 博一 中村 昭彦 馬場 廣太郎
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.195-201, 2001-02-28
被引用文献数
1

11歳の男児が耳痛を主訴に近医を受診した.局所治療を受けたが症状が軽快しないめ他院を受診した.そこで舌の腫瘤を発見され, 精査・加療目的に当科を紹介された.病変は右舌縁から口腔底にかけ表面不整な潰瘍を呈し, 周囲の硬結は舌正中を越えていた.生検にて高分化の扁平上皮癌と診断された.画像診断も含めた全身検索の結果, 入院時病期分類はT4N0M0 stage IVと診断された.化学療法 (5-Fiuorouracil, Cisplatin) 2クール施行したところ腫瘍はわずかに反応を示し, 縮小するかと思われた.しかし, その後の放射線外照射中にも腫瘍は増大し両側の扁桃窩まで広がりをみせ, 3回の動注化学療法も効果なく, 初診から10ヵ月後に死亡した.
著者
森岡 基浩
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.39-45, 2013 (Released:2013-05-15)
参考文献数
13

舌咽神経痛 (Glossopharyngeal Neuralgia: GPN) は嚥下等の誘因により誘発される耐えがたい咽頭-舌根部の痛みを主訴とし, しばしばその痛みは同側の耳に放散する. その原因として脳幹から分枝した舌咽神経 (および迷走神経感覚枝) の分枝部 (root entry zone: REZ) を正常の血管が接触・圧迫しているためと考えられている. 正確な問診が最も重要であり上咽頭への局麻テスト/MRIにより最終的に診断する. GPNの初期治療はCarbamazepineによる薬物治療であるが最終的に薬剤の効果が不十分である症例では開頭による微小血管減圧術 (Micro Vascular Decompression: MVD) または舌咽神経と迷走神経の一部の切断術 (rhizotomy) が有効である.
著者
市村 恵一 菊池 恒 今吉 正一郎
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.85-88, 2013 (Released:2013-05-15)
参考文献数
12

オスラー病は難治性鼻出血の原因として有名であるが, 鼻腔病変に次いで多いのが口腔病変で, その出現率は58-79%とされる. 自治医科大学附属病院で経験した53例のオスラー病患者 (鼻出血に対する手術施行例) では, 口腔病変は記載の確認できた37例中33例と少なくないが, 口腔出血の訴えがあったものは9例しかなく, 隆起性病変か著しい拡張病変に限られていた. 血管拡張病変からの出血には重症例はなく, 鼻出血に比して口腔出血の日常生活への支障度は低かった. 対応として, レーザーやコブレーターによる焼灼も行ったが, 制御しにくい例は隆起病変の形を取っているので, その切除縫縮で対応するのが有効であった.
著者
熊井 惠美
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.179-188, 2001-02-28
被引用文献数
9

北海道におけるシラカンバ花粉症中のOASが増加している.今回, シラカンバ花粉飛散時期の約3か月間に当院を受診した鼻アレルギー患者678名中, OASと診断したのは248名, 36.6%だった.また, シラカンバ花粉症276名中, 135名, 48.9%がOASであった.シラカンバ花粉症OASで84%がバラ科果実を含む複数の原因食物により症状を起こし, 最多は18種類であった.臨床症状は三叉神経領域のかゆみと腫脹が80%以上を占めるが, 咽喉の絞扼感4.4%, 呼吸苦8.1%, 咳3.7%, 蕁麻疹3.0%, 消化器症状8.1%なども見られた.症状発現までの時間は, 1分以内37.7%, 15分以内88.2%であった.
著者
折舘 伸彦
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.45-52, 2011 (Released:2011-04-16)
参考文献数
22

日本消化器病学会の統一ガイドラインとして「消化性潰瘍」, 「炎症性腸疾患」, 「慢性膵炎」, 「胆石症」, 「肝硬変」のガイドラインとともに「胃食道逆流症 (GERD) 診療ガイドライン」が2009年11月発刊された. 日常診療において, 耳鼻咽喉科医は好むと好まざるとに関わらず, 咽喉頭症状を伴う胃食道逆流症患者の診療の一部を受け持たなければならないので, 本ガイドラインの概略を理解しておくことは有用であると考え, 胃食道逆流症の疫学, 病態, 診断, 内科的治療を紹介した. 食道外症状の一つである咽喉頭症状に関するCQ「GERDにより慢性咽喉頭炎 (自覚症状のみも含む) が生じることがあるか? 」へのステートメントは「GERDは咽喉頭炎, 咽喉頭症状の原因となることがあるが, 咽喉頭炎や自覚症状に対するプロトンポンプ阻害剤の効果は確定していない」である. さらに, 今回のガイドライン作成の文献検索期間後に論文発表された胃食道逆流による咽喉頭症状に対するプロトンポンプ阻害剤の効果を検討した無作為化臨床試験の成績を併せて紹介した.