著者
岸部 幹 斎藤 滋 原渕 保明
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.8-14, 2005-01-20
被引用文献数
4 11

鼻骨骨折は, 顔面骨骨折のうち最も頻度の高いものであり, 一般および救急外来でよく遭遇する疾患のひとつである. 鼻骨骨折は, 骨折による偏位がある場合や, 鼻閉や嗅裂の狭窄により嗅覚障害が惹起される可能性がある場合に整復する必要がある. しかし, 整復の成否については, 客観的に判断していない症例が多いと思われる. この理由として, 救急外来受診者が多いこと, 骨折の診断で単純X線検査やCTを使用した場合の被曝への配慮などが考えられる. しかし, 小さな偏位を見逃す例, 後に鼻閉や嗅覚障害を来す例もあり, 整復の成否について確かめる必要がある. 当科では徒手的整復を行う際に, 整復の成否を被曝のない超音波検査装置 (エコー) にて判定し有用な結果を得ている. その方法として, 特別な用具等はいらず, 鼻背にエコーゼリーを塗りプローブを置くだけで鼻骨を描出できている. これにより, real timeに鼻骨を描出しながらの整復が可能であった. また, 腫脹が強い場合は, 外見上, 整復がなされたか判定できないとして, 腫脹が消退するのを待ってから整復を施行する症例もあるが, エコーを用いれば腫脹が強い時でも整復が可能である. また, CTとほぼ同様にエコーでも鼻骨の輪郭が描出されることを考えると, その診断にも用いることが可能と考える. 以上から, エコーは診断から治療判定, 再偏位の検出といった鼻骨骨折診療の一連の流れに有用であり, 特に整復時の指標については, 現在のところ客観的にreal timeに判定できる機器はエコーのみであり, これを整復時に用いることは特に有用と考えられた.
著者
野村 研一郎 片山 昭公 高原 幹 長門 利純 岸部 幹 片田 彰博 林 達哉 原渕 保明
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.58-63, 2016 (Released:2016-08-01)
参考文献数
6

Video-Assisted Neck Surgery(以下 VANS 法)は,前胸部外側に作成した皮膚切開部から皮弁を吊り上げることでワーキングスペースを作成し,内視鏡補助下で甲状腺切除を行う術式である。創部が衣服で隠れるため,若年女性にとって有益な術式であるが,特殊な手術器具を要するため,小児での報告は少ない。当科で2009年から VANS 法で手術を行った210例のうち15歳以下の小児 3 例を認めた。よって,これらの症例の治療経過と小児甲状腺結節に対する手術適応についての検討を行った。全例甲状腺に約 3 cm 大の充実性の結節性病変を認めており,全例合併症なく成人と同様に手術を行うことが可能であった。3 例とも摘出病理は良性の結果であったが,濾胞腺腫と思われた一例で,実際は濾胞癌であり,術後半年後にリンパ節転移を認めたため,手術を含めた追加治療が行われた。成人同様,3 cm を超えるような甲状腺結節の際には手術治療を念頭におく必要があると考えられ,VANS 法は小児にも適応可能であった。
著者
岸部 幹 斎藤 滋 原渕 保明
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.8-14, 2005-01-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
15
被引用文献数
5 11 7

鼻骨骨折は, 顔面骨骨折のうち最も頻度の高いものであり, 一般および救急外来でよく遭遇する疾患のひとつである. 鼻骨骨折は, 骨折による偏位がある場合や, 鼻閉や嗅裂の狭窄により嗅覚障害が惹起される可能性がある場合に整復する必要がある. しかし, 整復の成否については, 客観的に判断していない症例が多いと思われる. この理由として, 救急外来受診者が多いこと, 骨折の診断で単純X線検査やCTを使用した場合の被曝への配慮などが考えられる. しかし, 小さな偏位を見逃す例, 後に鼻閉や嗅覚障害を来す例もあり, 整復の成否について確かめる必要がある. 当科では徒手的整復を行う際に, 整復の成否を被曝のない超音波検査装置 (エコー) にて判定し有用な結果を得ている. その方法として, 特別な用具等はいらず, 鼻背にエコーゼリーを塗りプローブを置くだけで鼻骨を描出できている. これにより, real timeに鼻骨を描出しながらの整復が可能であった. また, 腫脹が強い場合は, 外見上, 整復がなされたか判定できないとして, 腫脹が消退するのを待ってから整復を施行する症例もあるが, エコーを用いれば腫脹が強い時でも整復が可能である. また, CTとほぼ同様にエコーでも鼻骨の輪郭が描出されることを考えると, その診断にも用いることが可能と考える. 以上から, エコーは診断から治療判定, 再偏位の検出といった鼻骨骨折診療の一連の流れに有用であり, 特に整復時の指標については, 現在のところ客観的にreal timeに判定できる機器はエコーのみであり, これを整復時に用いることは特に有用と考えられた.
著者
関根 一郎 岸部 幹 高原 幹 片田 彰博 林 達哉 原渕 保明
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.169-174, 2021 (Released:2021-07-20)
参考文献数
21

神経内分泌細胞癌(neuroendocrine carcinoma; NEC)は頭頸部では比較的稀である。また,遠隔転移しやすい腫瘍としても知られている。2003年から2020年までに当科で経験した鼻・副鼻腔に発生した神経内分泌細胞癌について検討した。症例は7例で,男性4例,女性3例であり,年齢中央値は60歳(45歳~79歳)であった。原発部位は上顎洞3例,篩骨洞2例,蝶形骨洞1例,鼻腔1例であった。治療は化学放射線療法が中心で,手術治療が行われたのは2例のみであった。7例中1例は1次治療が奏功せず原病死となった。他の6例は全例で1次治療が奏功した。1次治療が奏功した6例のうち,2例が5年無病生存となったが,3例が遠隔転移をきたし原病死し,1例は他病死となった。鼻・副鼻腔原発のNECは手術や化学放射線療法による局所制御は比較的良好であるが,遠隔転移をきたす症例が多く,遠隔転移の制御が予後に関与すると考えられた。
著者
高原 幹 野沢 はやぶさ 岸部 幹 原渕 保明
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.277-283, 2003-06-01

掌蹠膿疱症は扁桃病巣感染症の中でも代表的疾患であり, 扁桃摘出術が非常に高い治療効果をもたらす疾患である.当科における45例の検討でも, 有効以上の効果は38例 (85%) に認められ, 高い改善率を示した.術後改善度と年齢, 性別, 胸肋鎖骨過形成症合併の有無, 病悩期間などの患者背景や, 血清ASO, ASK, IgA, IgM, IgG値, 扁桃病理組織におけるT細胞領域, B細胞領域の面積比の相関を検討した所, T細胞領域において術後改善度と正の相関が認められ, 術後改善度を予測する因子となり得る可能性が示唆された.<BR>以前より, 掌蹠膿疱症扁桃の病理組織において, T細胞領域の拡大が認められる事が報告されている.このT細胞領域では, CD25陽性活性化T細胞の増加が認められ, T細胞制御因子 (CTLA-4, Smad7) のmRNA発現低下が認められたことから, その拡大はT細胞の制御機構の障害による活性化, 増殖によるものと推測された.T細胞制御の障害は無秩序な免疫反応を助長し, 自己抗体産生に繋がることが予想され, この事が掌蹠膿疱症の病因に関与している可能性が示唆された.このことから, T細胞の活性化を表す指標が術後の改善度を予測する因子になる事が予想される.その一つとして, T細胞領域の計測が考えられるが, それ以外にもT細胞の活性化を反映するより簡便な指標が存在する可能性もある.より高い改善率を目指すために, それらの指標に関してさらに検討を進める必要があると考える.
著者
片山 昭公 荻野 武 高原 幹 岸部 幹 野沢 はやぶさ 石田 芳也 野中 聡 原渕 保明
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.38-39, 2003-06-30

雑誌掲載版著作権は学会所属頭頸部扁平上皮癌における各種ケモカインレセプターCXCR4の発現とその走化性,浸潤能における役割について検討した.RT-PCR法,フローサイトメトリーによるCXCR4発現解析では,舌癌細胞株には発現を認めなかったが,口腔癌細胞株HSQ-89と上顎癌細胞株IMC-3においてCXCR4の発現が認められた.Invasion Assayにおいて,CXCR4を発現している口腔癌細胞株HSQ-89と上顎癌細胞株IMC-3においてSDF-1が有意に走化・浸潤性を促進した
著者
高原 幹 野澤 はやぶさ 岸部 幹 柳井 充 片山 昭公 今田 正信 林 達哉 野中 聡 原渕 保明
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.84-85, 2003-06-30

著作権は学会に属す出版社版旭川医科大学医学部付属病院耳鼻咽喉科にて掌蹠膿疱症群の扁桃摘出術で得られた口蓋扁桃を用いて,RT-PCRでSmad 7 mRNA過剰発現を蛋白レベルで検討した.Smad 7のウエスタンブロットにより,掌蹠膿疱症群にてバンド濃度の上昇が認められた.CD3,α-Tublinのバンド濃度は比較的均一であった.Smad 3のウエスタンブロットでは,疾患群間に明らかな差は認められなかった.α-Tublinで補正後したバンド濃度の解析で,掌蹠膿疱症扁桃Tリンパ球においてSmad 7蛋白が有意に過剰発現していた
著者
原渕 保明 坂東 伸幸 高原 幹 岸部 幹 後藤 孝 野澤 はやぶさ 吉崎 智貴
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.99, no.10, pp.805-812, 2006-10-01
被引用文献数
2 1

Pustulosis palmaris et plantaris (PPP), Sterno-costo-claviclar hyperostosis (SCCH), IgA nephropathy, and some other autoimmune diseases have been regarded as tonsillar focal infections since tonsillectomy is quite effective in the treatment of these diseases. In this paper, we reviewed recent clinicopathological evidence on tonsillar focal infections obtained through our experience as well as in the literature. In addition, we summarized experimental results regarding mechanisms of the development and progression of tonsillar focal infections. It has been speculated that abnormal immune responses in the tonsils may cause or worsen the disease. Therefore, tonsillectomy should be recommended for the treatment of tonsillar focal infections.
著者
石田 芳也 安部 裕介 柳内 充 野澤 はやぶさ 岸部 幹 高原 幹 原渕 保明
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.82-83, 2002-06-30

著作権は学会に属す出版社版健常成人3名についてP6蛋白及びオーバーラッピングペプチドに対するリンパ球増殖反応を行った.増殖反応の評価は,stimulation indexを用いて,2以上の場合を反応陽性とした.3例ともP6とPHAについては明らかな強い反応を認め,ネガティブコントロールのyellow feverのペプチドでは認めなかった.オーバーラッピングペプチドに対しては1〜4番,9〜11番,13番のペプチドに対して反応を認めた.ヒトP6蛋白のエピトープ部位は,少なくともN末端側に2ヶ所,中間に1ヶ所,C末端側に1ヶ所存在することが推測された
著者
岸部 幹 吉野 和美 和田 哲治 金井 直樹 原渕 保明
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.99, no.9, pp.795-800, 2006-09-01
被引用文献数
2

著者版17歳男、前胸部痛、呼吸困難感を主訴とした。40〜60本/日の喫煙習慣があった。身長166cm、BMI 17.4であり、右側頸部に握雪感を伴う皮下気腫を認めた。胸部単純X線にて右鎖骨上窩の皮下気腫像を、頸・胸部CTにて右咽頭外側面〜胸鎖乳突筋裏面〜気管分岐部に気腫像を認めた。予防的にセフォペラゾンナトリウム:スルパクタムナトリウム合剤を開始したところ、前頸部から胸部の痛みは発症後2日で消失し、皮下気腫像は発症後6日目に消失した。食道造影、気管支ファイバーで異常はなく、特発性縦隔気腫と診断した。退院後43日目、誘引なく左頸部疼痛と呼吸困難感を認め、咳が多かった。CTにて左頸動脈間隙から胸鎖乳突筋裏面、鎖骨上窩、胸骨裏面、気管分岐部周囲、腹部大動脈周囲に気腫を認めた。後頸部から硬膜外ブピバカイン持続注入を開始したところ、翌日には疼痛、咳が消失した。また、セフォペラゾンナトリウム:スルパクタムナトリウムを7日間点滴した。気腫は消失し、禁煙を勧めて退院となった。以後、再発は認めなかった。