著者
野島 雄介 生駒 亮 松浦 省己 長岡 章平 長田 侑 折舘 伸彦
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.233-238, 2017-06-10 (Released:2017-07-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

口腔咽頭アフタを来たす疾患としては感染症が多いが, 膠原病を含む自己免疫性疾患など全身疾患に伴う口腔咽頭アフタも存在する. 今回我々は, 抗菌薬に反応しない口腔咽頭アフタを認め, 最終的に不全型ベーチェット病と診断した一例を経験した. ベーチェット病は, 口腔内アフタ, 皮膚症状, 外陰部潰瘍, 眼症状を主症状とする慢性炎症性疾患である. 予後は一般に良好であるが, ぶどう膜炎が発症した際には失明率が高いことから早期診断が望ましい. 本例のように抗菌薬が無効であり, ステロイド投与開始で症状の軽快, 投与中止で症状の増悪を繰り返す症例ではベーチェット病を鑑別に挙げ, 適切に他科と連携をとり診断, 治療に当たる必要がある.

1 0 0 0 OA 味覚の生理学

著者
柏柳 誠
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.207-215, 2006-03-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
17
被引用文献数
1

味覚障害はQOLの向上のために治癒することが望ましいが, 味受容のメカニズムが不明だったために, 基礎的な実験事実に裏打ちされた治療方針はたてることが不可能だった.味がどのように受容されているかを明らかにする研究は, 1970年代から主に電気生理学的な手法で進んできた.味刺激は比較的高い濃度が必要だったために, 生化学的な手法による受容体蛋白質の単離は成功しなかった.2000年を前後して分子生物学的な手法が適用されることにより味覚受容体がクローニングされ, 味受容が分子のレベルで語られるようになった.
著者
工藤 典代
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.173-176, 2008-03-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
9

小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) は成長や発達, 性格や学業に影響を与えるといわれている. 診断基準や重症度分類は未定であるが, 無呼吸時間は小児においては2呼吸分の呼吸停止と考える, などが米国睡眠学会で提案されている. 患児の発見には外来診療時にすべての小児にイビキの有無を問診することや呼吸運動による胸郭変形の有無を視診するなどが疑い例の把握に役立つ. OSASであれば原因の精査と治療を進める. 小児のOSASの原因は口蓋扁桃肥大, アデノイド肥大による上気道狭窄や閉塞が多い. そのため, 患児の多くはアデノイド切除術と口蓋扁桃摘出術が著効する. また, 鼻疾患による鼻閉のみでもOSASを生じるため, 鼻の保存治療は実地医家で行い, それでも改善が見られない場合には専門病院で手術を含めた治療を考慮する. OSAS重症例では気管切開を要する例もあり, 専門病院との連携が不可欠である.
著者
小林 茂人
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.47-51, 2012 (Released:2012-07-27)
参考文献数
10

反応性関節炎とは, 広義には関節以外の部位の微生物感染後におこる無菌性の関節炎である. レンサ球菌感染症に起因する反応性関節炎は海外ではpoststreptococcal reactive arthritisと呼ばれ, リウマチ熱との異同が論議されている. 扁桃炎に続く反応性関節炎の多くはレンサ球菌感染に起因するがレンサ球菌以外の微生物によることも多いので注意する必要がある. 扁桃炎に伴う反応性関節炎の多くは抗生物質治療によって治るが, 関節炎が持続する症例には抗リウマチ剤治療は有効ではなく, 扁桃摘出術によって完治する. つまり, 扁桃の陰窩膿瘍を除去することによって関節炎が治るという「病巣感染」である. このため, 本疾患は「扁桃摘出によって完治する関節炎」として, 耳鼻科医との医療連携においてきわめて重要なリウマチ性疾患である.
著者
押田 茂實
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.269-274, 2004-02-29
参考文献数
8

医療に関連して生じた事故を医療事故といい, 医療事故は医療のあらゆる場面において発生してくる可能性がある.医療事故が発生した場合, 患者あるいは家族や遺族が医療関係者にクレームをつけたり, 損害賠償を求めたりすると, 医事紛争になり, 患者側が裁判を提起すると, 医事裁判になる.医療事故が発生した場合には,(1) 民事責任の有無 (最も多い),(2) 刑事責任の有無,(3) 行政処分の有無が問われる.<BR>口腔・咽頭疾患に関する民事判決の特徴としては, 1億円を超える判決が最近4件も見られることであろう.いずれも呼吸器系と密接な関係があるので, 患者が死亡したり, 重症な身体障害例である.咽頭腫瘍生検で内頸動脈を損傷したため死亡したケースでは, 業務上過失致死罪で罰金50万円に問われている.<BR>医療事故防止のためリスクマネジメントで最も強調されなければならないのは, 「犯人探し」ではなく, 「真の事故原因を究明し, 事故防止のシステムを構築し, 事故を減少させること」である.
著者
任 智美 梅本 匡則 前田 英美 西井 智子 阪上 雅史
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.31-35, 2017-03-31 (Released:2017-05-31)
参考文献数
10
被引用文献数
3

味覚異常の症状は「味覚低下」や「消失」,「解離性味覚障害」のような量的味覚異常と「自発性異常味覚」や「異味症」などの質的味覚異常に分類される. 障害部位としては受容器障害, 末梢神経障害, 中枢性障害, 心因性に分けられ, 受容器障害の病態としては亜鉛欠乏による味細胞のターンオーバー遅延が一般的である. 電気味覚検査や濾紙ディスク法で定量的, 定性的な味覚機能評価を行い, 病態を把握したうえで味覚障害と診断される. 現在では亜鉛内服療法のみがエビデンスをもつ治療であるが, 漢方の有効性も報告されており, 著効する例も経験する. 味覚異常は時に消化器疾患, 血液疾患, 皮膚疾患, 精神疾患, 神経疾患などが背景に存在する場合もあり, 味覚異常を局所的な疾患として捉えるのではなく, 全身を把握しておく必要があるものと考える.
著者
菊池 淳 坂本 菊男 中島 格 江崎 和久 楠川 仁悟
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.317-326, 2004-06-01
参考文献数
13
被引用文献数
9

睡眠時無呼吸症候群 (SAS) に対するUPPPの適応を, 外来診療の段階の簡易検査で決められないか検討した.用いた検査は, 口腔・咽頭の所見, セファログラム, いびき音テスト, AHIの結果である.根治になるための条件として,(1) 口蓋扁桃肥大 (2) いびき音テストで咽頭閉塞が左右型 (3) 顎顔面形態のリスクが小さい, ことが考えられた.顎顔面形態の評価には, 健常者のプロフィログラムを正常フレームとして, 患者のセファログラムに当てはめる方法で行った.この方法で, 簡易に顎顔面形態のリスクを判定することができた.また, UPPP単独では根治的効果が得られなくても, CPAPなどSASに対する他の治療法を補助するための治療として重要であると考えられた.
著者
齊藤 達矢 川野 健二 ヤーイー アン 笠井 美里 池田 勝久
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.265-269, 2004-12-10
参考文献数
6

特発性味覚性鼻漏の1例を報告した.症例は44歳の女性で幼少時より食事中に水様性鼻漏を認めていた.顎・顔面の手術歴はなかった.砂糖による鼻漏の誘発試験では, 抗コリン作動性の薬剤によって前処置を行った側の鼻漏は他側に比べ減少したが完全に抑制することは出来なかった.特発性味覚性鼻漏と診断し, 後鼻神経切断術を施行した.術後誘発試験を繰り返し実施しているが鼻漏は認められていない.味覚刺激によって誘発される水様性鼻漏は味覚性鼻漏として知られており, 原因として顎顔面や耳下腺の手術, 顔面外傷がある.今回我々はこれらの既往を持たない特発性味覚性鼻漏の1例を経験し後鼻神経切断術で良好な経過を得た.
著者
川名 尚
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.237-242, 2002-06-01
参考文献数
8

単純ヘルペスウイルス (Herpes Simplex Virus, HSV) の感染部位は皮膚粘膜であり口腔咽頭もその主なものの一つである.特にHSVの1型は口腔内の感染が自然感染部位であり, 口腔咽頭のHSV感染は耳鼻咽喉科の日常診療でしばしば見られると思われ改めて産婦人科医の私が論述するまでもないと思う.しかし, 最近はgenital-oralという性行動様式が頻繁に行なわれるようになり, 性器に感染しているHSVが口腔咽頭にも感染することがあり本シンポジウムに単純ヘルペスウイルス感染という課題がとりあげられたものと思う.筆者は性器ヘルペスの臨床研究を行なってきたが, 口腔咽頭についての検討を行なってこなかったので直接本学会の会員の方にお役に立てることは出来ない.そこで性器ヘルペスの臨床を述べてgenital-oral transmissionの背景をご紹介することで責めて果たしたいと思う.
著者
中田 誠一
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.181-184, 2008-03-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
3

アメリカは民間の医療保険が発達している. そのため民間医療保険側からの医療に対する制約が多く, 患者側は多大な医療保険を払わされる上に, かつ指定された医療機関しかかかれない保険があるなど負担が大きい. 睡眠医療に関しても夜間の睡眠検査料は日本と比べると法外なものであり, その背景に経済市場原理が働いていると思われる. 睡眠検査は睡眠センターというところで一括して行われ, 診断とともにその治療に関与して, かつCPAP治療はアメリカでは患者本人が直接, 業者からCPAP機器を購入し自分で自己管理という形式をとるため日本とは診療形態がまったく異なっている. アメリカで睡眠にかかわっている実地医家は, CPAP治療に脱落した患者に対してコンサルタント料や手術を希望すれば手術費用などを徴収することによって医療が成り立っていることがわかった.
著者
三鴨 廣繁 山岸 由佳
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.257-267, 2008-06-10
参考文献数
16
被引用文献数
2

最近5年間の性感染症の疫学データを見る限り, 4つの代表的な性感染症である性器クラミジア感染症, 淋菌感染症, 尖圭コンジローマ, 性器ヘルペスのうち, 男女ともに前二者は, 減少もしくは横ばい傾向にある. その背景には, 医療関係者および行政機関による性感染症に関する啓発活動の成果も関係していると考えられる. しかしながら, 性器クラミジア感染症, 淋菌感染症ともに依然として1995年頃のレベルには戻っていないことに着目する必要がある. 特に, ウイルス感染症である尖圭コンジローマ, 性器ヘルペスにおいては, わずかではあるが増加傾向を示していることも注目に値する. さらに, 日本人男性において, 性感染症としてのHIV感染も増加しつづけている. また, STD関連微生物の性器外感染, 性器クラミジア感染症における持続感染, 淋菌感染症における薬剤耐性菌, 性感染症関連微生物としてのマイコプラズマ・ウレアプラズマの意義などが明らかにされつつある. STDの性器外感染に関しては, orogenital contactの一般化など最近の性行動の多様化を背景として, クラミジア・トラコマチスや淋菌の咽頭感染などが増加しているという報告も多い. これらの微生物が咽頭に感染しても無症状であることも多いが, 確実に第3者への感染源となり得る. したがって, STD対策にあたっては, 耳鼻咽喉科医や内科医の協力が不可欠な時代を迎えたと言っても過言ではない. さらに, クラミジア感染症では, 咽頭に感染した症例では, 性器に感染した症例と比較して, 治療に時間がかかることも明らかになってきている. 臨床医には, 現代の性感染症から国民を守るために, 精力的な活動を展開していくことが求められている.
著者
宮崎 総一郎 板坂 芳明 石川 和夫 多田 裕之 戸川 清
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.183-189, 1998-02-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2

睡眠時無呼吸の病因ならびに長期治療成績を左右する因子として, 睡眠体位と肥満は重要である.肥満と体位の及ぼす影響を, 気道内圧測定を含む睡眠検査を実施した68例(平均年齢: 47.2歳, 平均肥満度: 120.5%)について検討した.68例をやせ群(肥満度90%未満)+普通体重群(肥満度90%以上, 110%未満), 過体重群(肥満度110%以上, 120%未満), 肥満群(肥満度120%以上)の3群にわけた.肥満群の無呼吸+低換気数(AHI)は47.1/hr.で, やせ・普通体重群(32.6/hr.), 過体重群(31.3/hr.)に比し有意に高値であった.また肥満群の最低酸素飽和度値は80.1%で, やせ・普通体重群(85.0%), 過体重群(85.8%)に比し, 有意に低値であった.食道内圧変動値に関しては, 肥満群45.4cm H20, やせ・普通体重群33.5cm H20, 過多体重群32.5cm H20であった.側臥位の検討では, 肥満群は, 仰臥位と同様, やせ・普通体重群に比しAHI, 食道内圧変動値が有意に大きい値であった.側臥位での呼吸障害の改善度は, その肥満度に反比例していた.また仰臥位から側臥位に体位変換することで, AHIと食道内圧変動値がともに50%以上減少した症例数は67例中30例(44.8%)であった.
著者
余田 敬子
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.255-265, 2002-06-01
参考文献数
25
被引用文献数
1

口腔咽頭梅毒のほとんどは性感染症としての第1・2期の顕症梅毒である.日本でも今後口腔咽頭梅毒の増加が危惧されている.<BR>当科で経験した23例からみた口腔咽頭梅毒の特徴は, 第1期病変で受診する症例は少なく第2期の粘膜斑"butterfly appearance"や乳白斑を呈して受診する症例が多いこと, 性器病変を伴わない例が多いこと, '98年以降HIV感染を合併している同性愛男性例が増えてきたことが挙げられる.<BR>口腔咽頭梅毒を的確に診断するため, 10代から高齢者までの患者の口腔咽頭病変に対し常に梅毒の可能性を念頭に置きながら対処し, 顔面・手掌.頭髪などの皮膚病変の有無にも着目することが有用である.
著者
赤城 ゆかり 山中 昇 林 泰弘 九鬼 清典 寒川 高男 木村 貴昭
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.7-12, 1994-02-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
8

Palmoplantar pustulosis (PPP) has been accepted as one of the secondary diseases caused by tonsillar focal infection ; however, the pathogenesis is still unknown. In this study, the expression of adhesion molecules on the palmar and plantar skin of eight patients with PPP and three healthy volunteers with normal skin were examined immunohistochemically. In normal skin, only CD44 was expressed on the epidermis. In the macroscopically normal region of PPP skin, intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1) was demonstrated on the endothelial cells in the dermis. In the erythema stage and the pustule stage, CD3, CD4, and lymphocyte function-associated antigen-1 (LFA-1) were expressed on the cells infiltrating the dermis. ICAM-1 was detected immunohistochemically on the endothelial cells, keratinocytes and infiltrating cells in PPP skins. Moreover, endothelial cell-leukocyte adhesion molecule-1 (ELAM-1) was expressed on vessels in the dermis in these two stages. These findings suggest that the interaction between LFA-1 and ICAM-1 plays an important role in T cell infiltration into PPP skin and that the continuity of ICAM-1 expression is related to the chronicity of PPP.
著者
林 達哉
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.17-21, 2010 (Released:2010-09-01)
参考文献数
16

抗菌薬の適正使用の第一歩はウイルス性と細菌性を鑑別し, 細菌性疾患にのみ抗菌薬を投与することである. 咽頭・扁桃炎の場合, 膿栓や白苔の付着は細菌感染を連想させるが実際にはウイルス感染が多く注意が必要である. 扁桃炎の起炎菌として最も重要なA群β溶血連鎖球菌が起こす扁桃炎の診断には, 症状と所見のみならず, 迅速診断キットの結果, 場合によっては培養結果を参考にする必要がある.溶連菌性扁桃炎の抗菌薬治療として, 従来ペニシリン系の10日間投与がゴールドスタンダードとされてきた. しかし, 最近, セフェム系抗菌薬の方が除菌率が高く, 臨床的効果にも優れるとのメタ解析の結果が報告された. この報告に対する反論もすぐに発表され, 現在, ペニシリンvs. セフェムの議論が内外ともに盛んである. 溶連菌に関しては現在までのところ, ペニシリン系, セフェム系のいずれに対しても耐性株は出現していない. しかし, 扁桃炎に対して投与した抗菌薬が上咽頭細菌叢に与える影響も考えに入れる必要がある. セフェム系抗菌薬は小児急性中耳炎難治化の主因である中耳炎起炎菌の耐性化に大きく関わってきたとされる. セフェム濫用の反省から抗菌薬の適正使用が漸く緒に就いた本邦の現状もよくよく考慮に入れた上で, 抗菌薬の適正使用を進めていく必要がある.