著者
冨樫 純一
出版者
筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科日本語学研究室
雑誌
筑波日本語研究 (ISSN:13424793)
巻号頁・発行日
no.7, pp.15-31, 2002

談話標識「まあ」の諸用法を観察し、「まあ」の持つ本質的な機能について検討した。「まあ」が現れる現象を観察した結果、情報そのものではなく、その情報が導出される処理過程と密接な関わりがあることが認められた。さらに、「まあ」の現れる位置、および独り言で使用可能な点を考慮すると、「まあ」の本質的機能は「処理過程の曖昧性を標示する」ものと捉えることができる。また、聞き手への働きかけを示す「まあ」については、本質的機能からの派生、「曖昧性」が及ぼす効果と説明することで、「まあ」の統一的な位置付けが可能となることを示した。
著者
落合 哉人 Kanato OCHIAI
出版者
筑波大学大学院博士課程人文社会系日本語学研究室
雑誌
筑波日本語研究 = Tsukuba Japanese linguistics (ISSN:13424793)
巻号頁・発行日
no.23, pp.83-112, 2019

本稿では、LINE上の言語使用を分析する際の単位に関して議論を行った。特に、「発話の分割」に着目して観察し、「発信の単位」「役割の単位」「話題の単位」という3つの単位を抽出した。また、議論を踏まえるケーススタディとしてLINE・対人場面・ケータイメールにおける接続表現を分析し、①先行する調査同様、LINEで接続詞の出現頻度が低いこと、②ケータイメールにおける接続詞の使用傾向にLINEと類似の特徴があること、③LINE・ケータイメールで接続助詞の相対的な増加が見られること、④直後に主節が続く従属節末の接続助詞では、各媒体で接続詞の使用傾向と類似の特徴を指摘できること、⑤直後に主節が続かない節末の接続助詞では媒体ごとに異なる使用傾向があることの5点を見た。さらに、特にLINEでは対他的な接続詞の使用に制約があることを考察した。
著者
劉 玲 Ling LIU
出版者
筑波大学大学院博士課程人文社会系日本語学研究室
雑誌
筑波日本語研究 = Tsukuba Japanese linguistics (ISSN:13424793)
巻号頁・発行日
no.23, pp.223-198, 2019

本稿は2016年度中華人民共和国国家社会科学基金項目資助(一般項目/項目号16BZW062)を得たものであり、その研究成果の一部とする。
著者
大倉 浩
出版者
筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科日本語学研究室
雑誌
筑波日本語研究 (ISSN:13424793)
巻号頁・発行日
no.8, pp.158-147, 2003

『祝本狂言集*1』は、成立年代や筆者はともに不明ながら、流派分化以前の狂言の姿を残す貴重な台本と見られる。前稿に引き続き祝本の六つの曲について他の狂言台本と比較した。内容面で全体的に近似した狂言台本は見いだすことは出来なかったが、部分的には和泉流天理本との類似だけでなく、天正本と関連するような「ぶす」、これまでには見られなかった鷺流保教本との類似が見られる「賽の目」「雁礫」など多様であった。また、用語の面では、近世初期の虎明本・天理本と共通する語法(「な」、感動詞「じゃ」、接続形式「うば」など)が確認できた。さらに、虎明本・天理本にない「仕舞ばしら」「つれまい」「めぎららぎ」など、狂言記と共通するような近世的な用語も見られた。
著者
橋本 修 松本 哲也
出版者
筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科日本語学研究室
雑誌
筑波日本語研究 (ISSN:13424793)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-17, 2000-08-31

現代日本語の「てしまう」が、否定形式(主として「ない」、加えて「ず」)と共起しにくいことを明らかにした。主節・従属節の区別においては、主節中の場合、特に「ない」が命題内否定として働く用例が極端に少ないことが目立つ。比較のため調査した「ている」と「ない」との共起に比べ、「てしまう」と「ない」との共起は、「てしまう」と「ている」との総用例数の違いを勘案しても、(主節においても従属節においても)かなり少ないと言える。一般に否定対極表現にくらべ肯定対極表現は数も少なく、それを対象にした研究も少ないが、本研究はある種の環境における補助動詞の一部が肯定対極表現に近い分布を持つことを示し、他の補助動詞にもこのような性格をもつもののある可能性を示した。