- 著者
-
西垣内 泰介
- 出版者
- 神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
- 雑誌
- トークス = Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : 神戸松蔭女子学院大学研究紀要言語科学研究所篇 (ISSN:13434535)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, pp.59-74, 2019-03-05
本論文は,「地図をたよりに(目的地にたどりつく)」のような,「付帯条件」を表すとされる付加表現について新しい提案をしている西垣内(2019, 『日本語文法』19(1)) の補遺である。そこで提案されている統語的分析の要点を示した上で統語分析の詳細なポイントを追加し(1–2 節),代名詞束縛,量化表現の相対スコープ,「量化詞分離」の現象に基づく「構造的連結性」の議論を提示し(3 節),「時」に関する解釈など,統語論分析だけでは捉えられない意味的な要因についての議論を行い(4 節),西垣内(2019) で主張している「X をY に」と「X をY にして」は構造的に違うものだという議論に,主に「時」の解釈に関連した議論を追加している(5 節)。また,西垣内(2019) の主張のポイントのひとつは三宅(2011) 以来この現象についての研究で共通認識となっている,この構文と「指定文」との間の平行性がいずれも「関数名詞句」から移動によって派生することから由来する二次的な現象に過ぎないということであるが,本論文では,そのような平行性が成り立たないことを示す複数のケースを提出する。