著者
四方 圭一郎
出版者
飯田市美術博物館
雑誌
伊那谷自然史論集 (ISSN:13453483)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.53-57, 2012 (Released:2019-06-05)

長野県南信農業試験場に保管されていた昆虫標本が,試験場の建物の取り壊しにともない飯田市美術博物館へ寄贈された.これら標本類の中から,コガタノゲンゴロウ,カワラハンミョウ,タガメなどの15種の興味深い種を見出した.これらは昭和7年〜30年頃に収集されたもので,中にはデータラベルが付いていないものもあるが伊那谷南部域で採集された可能性が高く,この地域の過去の自然環境を推察することができる重要な種が含まれていた.
著者
三石 邦廣
出版者
飯田市美術博物館
雑誌
伊那谷自然史論集 (ISSN:13453483)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.39-42, 2012 (Released:2019-06-05)

2001年12月に中島により飯田市上村日影岩において,関西型のニホンヤマネ(以下, ヤマネ)と思われる個体が生息することが指摘された.その為,飯田市上村1番地及び同程野山国有林に関西型のヤマネが生息しているのではないかと仮説を立てて調査を行った.調査方法は,ヤマネの目の縁取りを写真撮影すること及びDNA解析によった.その結果,上村調査地のヤマネは,ハプロタイプが「Akaishi」グループおよび「Kanto」グループの個体がみられ,「Akaishi」グループでは目の縁取りは均一に黒い関西型となることが判った.同時に調査した飯田市上郷野底山財産区有林の個体は,「Kanto」グループに属するヤマネであり,「Kanto」グループでは目の縁取りが,ギザギザしていて均一に黒くないことが判った.
著者
坂本 正夫
出版者
飯田市美術博物館
雑誌
伊那谷自然史論集 (ISSN:13453483)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-9, 2019 (Released:2019-06-05)

宝永地震は,我が国最大級の地震の一つであり,プレート境界で起こったマグニチュード8.4 〜8.6 の巨大地震である.震源は遠州灘沖から紀伊半島沖にかけての海域にあり,日本列島の広範囲に被害を及ぼした.この地震の被害は伊那谷にも及んでいて,様々な文献などに記録され公表されてきている.しかし,いずれの文献も詳細に伊那谷の被害をまとめられているとは言い難く,部分的な地域の被害状況の記載に留まっている.そこで,そうした部分的に記載された文献を可能な限り収集し,さらに新たな文献発掘も行って伊那谷での宝永地震の被害をまとめる.
著者
河本 和朗 石川 剛志 松多 範子 廣野 哲朗
出版者
飯田市美術博物館
雑誌
伊那谷自然史論集 (ISSN:13453483)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-17, 2013-03-31 (Released:2019-06-05)

中央構造線は8000万年以上の活動史を持つ.現在の地表で見られる剪断帯の岩石は,深部から上昇を繰り返しながら,異なる深度で繰り返し剪断変形と変質を受けてきた.それらの断層岩の原岩と剪断変形・変質の履歴は活動史の解明の基礎的な情報になる.しかし剪断変形・変質した岩石は原岩と見かけが大きく異なり,薄片の偏光顕微鏡観察によっても原岩の判定が困難なものがある.今回,安康露頭内で見かけが類似する領域ごとに試料を採取して全岩化学分析を行った.薄片観察の結果と化学分析の結果を対比したところ,薄片観察で原岩を推定できた領域については両者の結果はよく一致した.また,強く変質して薄片観察では原岩を特定できなかった淡緑色の変質部は,全岩化学分析で領家帯の斑れい岩質組成であることが明らかになった.ただし薄片観察で淡緑色変質部東縁付近に三波川変成帯の石英片岩が確認され,その東側には断層を介して領家花崗岩類由来のマイロナイトが確認された.さらに東側には別の断層を介して三波川変成帯の泥質片岩が接している.ただしマイロナイトを含むブロックの両側の断層は露頭下部で収れんし,下部では緑色変質部と泥質片岩が接している.そこで緑色変質部東縁でスポット的に見つかった三波川石英片岩の分布と,化学分析で明らかになった領家斑れい岩質組成の部分との境界を明らかにすることが今後の課題である.
著者
坂本 正夫
出版者
飯田市美術博物館
雑誌
伊那谷自然史論集 (ISSN:13453483)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-18, 2014-03-31 (Released:2019-06-05)

過去約1600年間の有史に記録された被害地震の内, 長野県南部に発生した被害地震は極めて少ない. 広範囲に被害をもたらした地震は, 1718年に飯田市南信濃を震源とする遠山地震のみである. しかし,この地震災害の大きさはあまり詳しく調査された報告はない. そこで, 遠山地震だけを対象にして文献の収集を可能な限り広く行い, その記述をもとに現地調査を行ったのでここに報告する.
著者
三石 邦廣
出版者
飯田市美術博物館
雑誌
伊那谷自然史論集 (ISSN:13453483)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.39-42, 2012-03

2001年12月に中島により飯田市上村日影岩において,関西型のニホンヤマネ(以下, ヤマネ)と思われる個体が生息することが指摘された.その為,飯田市上村1番地及び同程野山国有林に関西型のヤマネが生息しているのではないかと仮説を立てて調査を行った.調査方法は,ヤマネの目の縁取りを写真撮影すること及びDNA解析によった.その結果,上村調査地のヤマネは、ハプロタイプが「Akaishi」グループおよび「Kanto」グループの個体がみられ,「Akaishi」グループでは目の縁取りは均一に黒い関西型となることが判った.同時に調査した飯田市上郷野底山財産区有林の個体は,「Kanto」グループに属するヤマネであり,「Kanto」グループでは目の縁取り,ギザギザしていて均一に黒くないことが判った.
著者
三石 邦廣
出版者
飯田市美術博物館
雑誌
伊那谷自然史論集 (ISSN:13453483)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.51-56, 2014

筆者は2008年〜 2009年に,飯田市上郷野底山において巣箱を利用した調査を行った.今回は,飯田市上村において生息・生態的な調査を行い,その結果ヤマネおよびヒメネズミが生息していることを確認した.巣箱を利用したヤマネは,巣場所近辺から巣材を搬入していること,巣材はコケや樹皮といった単一材多いことが分かった.また,ヒメネズミは,巣材として枯葉を最もよく利用することが分かった.スギを主とする林地においてはヒメネズミは,スギの樹皮を枯葉と混ぜて巣を作ることが分かった.ヤマネおよびヒメネズミの繁殖期は,年に1回から2回あることが推察される.
著者
坂本 正夫
出版者
飯田市美術博物館
雑誌
伊那谷自然史論集 (ISSN:13453483)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-15, 2016 (Released:2019-06-05)

赤石山脈の長野県側は,南アルプスジオパーク(中央構造線エリア)として登録されている.そして,中央構造線と糸魚川−静岡構造線に挟まれた赤石山脈は,主に付加体で形成され,現在も隆起を続ける山岳地域の景観をセールスポイントにしている.しかし,広大な赤石山脈(以下,南アルプスジオパーク関連の内容であるため,「南アルプス」と表記)を全体的な山容としての景観に位置づけるだけでは,必ずしも一般市民に興味関心を引くものになっていない.なぜなら,隆起を続けながら侵食しているという躍動的な自然の営みが一体として示されていないからである.そこで,南アルプスに形成されている主要な渓谷の比較検討から遠山川流域の渓谷に着目し,その特性を洗い出すことによって隆起と侵食のダイナミズムを明らかにしようと試みた.
著者
坂本 正夫
出版者
飯田市美術博物館
雑誌
伊那谷自然史論集 (ISSN:13453483)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.7-13, 2017 (Released:2019-06-05)

天竜川の支流に遠山川水系があり,伊那山地の尾根から赤石山脈の尾根までの天水を集めている.この水系には,領家帯や三波川帯,秩父帯,四万十帯,赤石構造帯があり変化に富む地質が分布している.遠山川水系では,これらの地質帯が侵食され,地質帯を特徴づける土砂が排出されている.その土砂に含まれる鉄分量に着目し,遠山川とその各支流から排出される鉄分量が水系を流下するに連れてどのように変化するかを調査した.また,鉄分量の変化を特徴づけることができるように,地質の違いが際立つように砂の採取地点を選定して鉄分量の測定を行った.それらの結果をについて報告する.
著者
柳生 将之 中村 明日加
出版者
飯田市美術博物館
雑誌
伊那谷自然史論集 (ISSN:13453483)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.21-25, 2019 (Released:2019-06-05)

2016 〜2018 年にわたって,諏訪市の諏訪湖北東部においてタウナギを確認した.タウナギは東アジアから東南アジアにかけて広く分布し,日本国内では琉球列島に在来の個体群が生息する.しかしながら,奈良県など14 の都府県に生息する個体は,朝鮮半島からの移入による国外外来種と推測されている.長野県における生息の記録は,現在のところ見当たらない.今回の調査によって,当年生まれの稚魚や成熟可能な体サイズの個体を確認したことから,全面結氷する諏訪湖においても越冬が可能であること,さらに,越冬個体が成長して自然繁殖している可能性が示唆された.
著者
今村理則
出版者
飯田市美術博物館
雑誌
伊那谷自然史論集 (ISSN:13453483)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-16, 2009-03-31