著者
馬場 一彦
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.15-18, 2010-01-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
9

抗がん剤新薬の開発が困難になっているなか, 既存の抗がん剤にドラッグデリバリー技術を適用して, 有効性を高め, 副作用を低減する開発研究が積極的になされている。すでにLHRHアナログやドキソルビシン塩酸塩リボソーム製剤はがん治療の標準的ガイドラインに採用されている。また, 既存の抗がん剤の利便性を改善した製剤として, アルブミン結合型パクリタキセルナノ粒子製剤も上市されている。本稿では, これらのDDS製剤の物理化学的および臨床面での特徴を紹介する。
著者
古場 一哲
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.10, no.11, pp.415-422, 2010-11-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
73

これまでに, 共役リノール酸 (CLA) は, 発がん抑制, 体脂肪低減をはじめとする多彩な生理機能を示すことが動物実験により明らかにされ, その作用機序についてもある程度明らかにされてきている。中でも, 体脂肪低減作用はヒトでも有効性が報告され, とくに注目されている。CLAはリノール酸 (実際にはサフラワー油など) をアルカリ異性化して調製される。この方法では9c, 11t-18 : 2と10t12c18 : 2の2種類のCLA異性体がほぼ1 : 1の割合で生成する。市販のCLAもこの方法で調製されている。 CLAの生理機能は異性体によって異なり, 9c, 11t-8 : 2が発がん抑制など限られた効果しか示さないのに対し, 10t12c18 : 2は体脂肪低減を含む多彩な生理機i能を発揮する。CLAは天然には9c, 11t8 : 2として牛肉や乳製品に微量 (5mg/g脂質程度) 存在するが, これらは量的にも重要な供給源とはならない。10t12c-異性体の体脂肪低減作用を期待してCLAサプリメントが国内外で市販されている。最近, CLAを配合した加工食品も市場に出始め, 機能性素材として, CLAは新たな局面を迎えている。
著者
遊佐 真一 森島 洋太郎
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.5, no.7, pp.335-341, 2005-07-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

両親媒性高分子電解質は水中で, 疎水基問の会合により多様な組織体を形成する。形成される組織体の構造は疎水基と親水基の化学構造, 両者の組成比と配列, 高分子主鎖との結合様式など, 高分子の化学構造に大きく依存する。このような両親媒性高分子電解質により形成される凝集組織体のレオロジー的な性質は, 凝集体の構造, 形態, 大きさなどによって決まり, これらは疎水基の会合が同-ポリマー内で起こるか, ポリマー問で起こるか, あるいはその両者が同時に起こるかにより大きく異なる。また近年, 両親媒性高分子電解質の分子設計により, 水中で形成される凝集組織体に刺激応答性を付与することが可能になった。たとえば, pH変化をトリガーとする高分子ミセルの形成や解離を制御できるブロック共重合体などが知られている。