著者
田中 道弘
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.173-181, 2005-12

本研究では、大学生のインターネット利用と精神的健康との関連について検討した。従来の研究では、インターネットの利用時間による問題が重要視されてきたが、本研究では、インターネット上でのモラル(インターネット・モラル尺度)という新たな基準とを合わせて検討を行った。精神的健康の基準としては、病理的傾向に基づく自己愛(病理的自己愛)、時間的展望、自己肯定感の3つの尺度を用いた。 対象は、茨城県内の大学3校(国立大学2校、私立大学1校)と埼玉県内の大学1校(私立大学)の合計4校の学生、405名に調査協力を依頼し、有効回答397票を得た(男性240名、女性157名)。年齢範囲は18歳から28歳までであり、平均年齢は、20.1歳(男性20.3歳、女性19.9歳)であった。 本研究の結果、インターネットの利用時間が121分を超える大学生群では、他群と比べ"時間的展望"と"自己肯定感"の得点が概ね低いという結果が得られたものの、病理的自己愛について有意差は確認されなかった。一方、インターネット・モラルの低い大学生群は、高群よりも時間的展望、及び自己肯定感の各平均得点が低く、病理的自己愛の平均得点が高いことが示された。 これらのことから、大学生のインターネット利用と精神的健康との関連を検討する際に、インターネット・モラルは精神的健康と深く関わりがあるとともに、インターネット利用者の精神的健康に関する一つの基準となりうることが示唆された。
著者
小島 弥生
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.89-98, 2010-12

本稿では、エントリーシートへの記述を就職活動における自己呈示の1形態として捉えている。大学3年生の女子を対象に、本格的な就職活動を始める直前に志望している「働き方」を分類し、その志望の表現の仕方の違いによって模擬エントリーシートへの記述内容に質的な違いがあるかを探索的に検討した。就職活動直前に志望する働き方の表現形態によって、「具体的イメージ群」、「職務イメージ群」、「企業(ブランド)イメージ群」の3つのイメージ群と、働き方をイメージできていない「分類不能群」の4つに分けることができた。さらにエントリーシートや履歴書の書き方に関する準備活動(セミナーへの参加等)の経験の有無によって分析対象者を分けて検討した。特定の働き方をイメージできていない大学生にとって、準備活動を行うことが豊かな記述に結びつく可能性が示されたとともに、準備活動を型通りにしか行わないことが就職活動の流れを阻害する(エントリーシートの次の段階に進めない)可能性があることが示唆された。
著者
宮島 薫
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.273-281, 2010-12

新しい発想の官庁としての消費者庁が発足してはや1年が経過した。この間、これまで以上に情報公開や一般からの意見募集など後発の優位性を示すかのようなさまざまな取り組みがなされてきたが、現実の実務は、また立法はどのような動きを見せているのであろうか。民法の改正さえ既成事実として進行しつつある現在、本来的には一般消費者に一番身近であるはずの消費者保護関連法規はどのような役割を果たしているのかを注目すべき判決の検討を交えながら考察を進めようと思う。
著者
胡 志昂
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
pp.130-115, 2001-12

Luofuxing, the ancient text of Moshangsang which is one of the songs collected by the Han Yuefu (the Music Bureau of Han Dynasty), has been regarded as representative work of Han Yuefu, and has been loved by Chinese people. But it has a comic character, which makes itself obviously different from other old texts of Yuefu. It may be a result of adaptation added for harmonizing with the atmosphere of Place, during the process that the songs of Yuefu were brought from lower strata society to the court and were played at the banquets since Wei-Jin period. This article notices the adaptation through division and connection of words accompanied by wanderings and playing of music, and pursuits the character of the ancient text through various aspects related with the generating process of Luofuxing.
著者
伊野 連 Ren INO
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.15-28, 2020-12-01

ハイゼンベルクは、弟子フォン・ヴァイツゼッカーらと、様々な哲学的議論をおこなっている。晩年の対話篇的著書『部分と全体』(1969)から、プラトンおよびカントについての興味深い討論を検証してみる。
著者
松永 幸子 Sachiko MATSUNAGA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.67-76, 2015-12-01

実際にこれから教師を目指す学生たち―教師の卵―はどのような意識を持っているのか?アンケートを基に分析し、今後の教師の有り方を探究し、また、教師に対する社会の意識改革の一助とすることが本研究の目的である。本学の幼稚園・小学校教員免許取得希望学生141名を対象にアンケート調査を行った。その結果、明らかになったことを順次提示した。学生の教職意識により、学生は、教師は厳しいだけではなく、基本的には優しい教師を求めていることが明らかになった。親身になって子どもの相談に乗るなど、距離の近い教師を理想の教師像としていた。また、さまざまな体験により広い視野を持つため、民間企業等での研修には非常に前向きな意識が見られた。このような若者の意識を、古い既存の価値観の中に押し込めるのではなく、時代とともに変化する教師像に対応するため、教師についての社会の意識をあらためる必要性があることが提案できる。
著者
鈴木 一代 Kazuyo SUZUKI
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.59-70, 2018-12-01

This study aimed at discussing the cultural identity formation of Japanese immigrant families as well as the relationship between “Ibasho” (one'where one feels secure, comfortable and accepted) and cultural identity of the families. The participants were 22 Japanese women married to Indonesian men and 10 of their children (Japanese-Indonesian yang adults) living in Indonesia. The Cultural Anthropological - Clinical Psychological Approach [CCA/CACPA] (Suzuki, 2002, 2008; Suzuki & Fujiwara, 1992) was employed between 1991 and 2017. We carried out repeated interviews mainly and used the qualitative analysis. Results showed that Japanese immigrant women became to have two cultural viewpoints in time, namely those of native and host cultures, however, maintained Japanese culture as the basis of their cultural identity throughout their lives. On the other hand, their children acquired more or less both Japanese and host (Indonesian) cultures and formed bicultural identity (“identity as intercultural children with Japanese ancestry”). It was suggested that “Ibasho” played an important role for cultural identity formation.