著者
有賀 克明 水野 恵子 山田 美香
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.171-183, 2006-12-24

香港の幼児教育改革で特徴的なのは、幼保一元化(調和)が行政レベルでは既に2004年から開始されていることである。現在の就学前教育・保育は、教育統籌局Education and Manpower Bureauの管轄の幼稚園Kindergarten、社会福利署管轄の幼児園・幼児センターChildcare centerに二分される。2005年9月に両者の行政組織を調和harmonizationさせた。質の高い幼稚園は当然人気が高い。しかし多くの家庭はメイドを雇っていて、その数は20数万人にものぼるため、幼児園(幼児センター)等の役割は相対的に低く、政府による就学前教育への投資は抑制しがちになる。メイドの平均月給は3,500香港ドル(以下、ドルと略称、1ドル=16円程度)前後で、全日制幼児園の平均的な学費2,000数百ドルより高いが、メイドが家事全般をこなしてくれることを考えると割安と言えるので、幼児園よりメイドを選ぶ家庭が多くなるのも当然であろう。
著者
山本 将士
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.191-205, 2007-12

本研究では、いじめの規定因として他者軽視に基づく仮想的有能感に注目し、検討することを目的とした。2007年1月中旬に、被験者である高校2年生453名(男子243名、女子210名)に対して(1)他者軽視、(2)自尊感情、(3)過去半年間のいじめの経験、(4)過去のいじめ経験、の尺度で調査を実施した。その結果、自尊感情が高く仮想的有能感も高い「全能型」の生徒は、他の有能感タイプよりも過去半年間のいじめ(加害)の生起が多かった。また、自尊感情が低く仮想的有能感が高い「仮想型」の生徒は、他の有能感タイプよりも過去半年間のいじめ(被害)の生起が多いことも示された。さらに、「全能型」の生徒は、他の有能感タイプよりも過去のいじめ(加害)の生起が多く、「仮想型」の生徒は、他の有能感タイプよりも過去のいじめ(被害)の生起が多いことが示された。自尊感情と仮想的有能感がともに低い「萎縮型」は、間接的いじめに限り被害者になりやすいことが確認された。