著者
松尾 純廣 出川 通 安部 博文
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.2_1-2_23, 2012 (Released:2012-06-20)
参考文献数
51

本稿の課題は,「大学発ベンチャー」を対象として産学官連携によるイノベーションのプロセスと方法について明らかにすることである.主な分析方法は,次の3つである.第1に,イノベーション・マネジメントによる大学研究成果のイノベーション・プロセス分析.第2に,MOTによるベンチャー企業の「死の谷」分析.第3に,インキュベーション・マネジメントによる「大学発ベンチャー」のケーススタディ.その結果,第1に,イノベーション・プロセスにおける「大学発ベンチャー」の位置付け,第2に,「大学発ベンチャー」のイノベーション・マネジメント手法に関する一定の知見(「魔の川」のマネジメント,「死の谷」のマネジメント)を得た.
著者
野澤 一博
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1_1-1_8, 2016 (Released:2018-02-10)
参考文献数
10

大学は,地域の多様な課題に対して,地域と連携してソリューションを提供する場となることが求められている.しかし,大学の地域連携に関しては,現況が十分に把握されておらず,また,議論も十分に重ねられてきたわけではなかった. そこで本稿は,アンケート調査結果を中心に大学の地域連携の取組状況を明らかにし,大学の地域連携の活動現況と課題を抽出した.大学等が挙げる地域連携活動の課題としては,教職員や資金の不足との指摘が多かった.今後,更に地域連携活動を展開するためには,人的・予算的なリソースの確保が重要な課題となるであろう.同時に,大学の地域連携活動は,地域連携の取組を単体として捉えるのではなく,研究・教育につながるシステムとして捉え,大学の組織特性や地域環境・ニーズに合わせ支援していくことが必要である.
著者
佐藤 暢 松本 泰典 那須 清吾
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.2_144-2_154, 2017 (Released:2018-01-18)
参考文献数
25

本稿では,高知工科大学社会連携部と高知県工業会が初めて組織的に連携した事例を取り上げ,研究開発体制の構築に至った背景と経緯について報告した.そして,この産学官連携の体制構築に当たり,組織としてのコーディネート部門およびそこに属する個人としてのコーディネータが果たした役割を述べ,地域イノベーション創出における産学官連携コーディネート活動のありかたについて考察した.その結果,産学官連携コーディネート活動をより効果的,効率的に進めるために,関係する組織間の意思決定が必要であり有効であることが示された.また,組織間連携に支えられることで,個々のコーディネート活動の公平性と透明性が確保されることも示した.そして,産学官連携コーディネート活動に内在する要素である,「生きた情報」と「密なる人的ネットワーク」をより有効に活用するためには,組織間の意識共有と意思決定が重要であることが,本事例から示された.
著者
川澄 みゆり 飯田 香緒里
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.2_67-2_71, 2017 (Released:2018-01-18)

大学等アカデミアが関与する臨床研究を巡っては,2013年からデータの不正使用及び企業との不適切な関与が指摘される事案が相次いで発覚したことを背景に,臨床研究に関する指針が見直され,医学研究の質の確保,被験者保護と並んで研究機関と企業等との透明性確保のための利益相反管理に関する規程が新設された.更に臨床研究の信頼回復のための法制度として,利益相反管理義務が法律とし定められることも予定され,従来以上に医学研究における利益相反マネジメント体制の強化が求められているといえる.本稿では,全国の医学部を有する大学等に対して実施した,利益相反マネジメントの実施状況に関する調査から抽出された課題を紹介するとともに,当該課題を解決し我が国の医学研究の信頼維持のために求められる利益相反マネジメントの在り方をモデルとして紹介していく.
著者
川名 優孝
出版者
Japan Society for Intellectual Production
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.2_35-2_39, 2013

本稿では,江戸っ子1号プロジェクトを通じて,金融機関と企業,大学との連携についてその経緯と課題等について述べる.本プロジェクトは,金融機関の顧客中小企業および大学,国の研究機関が連携して推進するプロジェクトである.これは,関西で推進された「まいど1号プロジェクト」に刺激されたもので,西が宇宙なら東は深海を目指し,深海探査機の開発と商用化を目的としている.この探査機の特長は,動力を必要としない簡便かつ安価なもので,海底資源探査に貢献するとともに,新たな市場を創造する可能性がある.金融機関は危機感を持ち,地域の活性化を図るため大学や究機関と協力してソリューションを企業に提供する新たな取組みを開始した.本プロジェクトはその一例となる. <br>
著者
金井 昌宏
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.2_41-2_50, 2015 (Released:2015-07-01)
参考文献数
30

平成18年改正に係る教育基本法において,社会貢献が教育及び研究に次ぐ我が国の大学の第三の使命として明記され,今日では共同研究や知的財産権ライセンス等の産学連携が,我が国でも活性化している.大学にとっても,産学連携は,ライセンス対価や研究費等の外部資金を導入できるメリットがある. しかし,大学の基本的機能である教育及び研究は,依然として大学の本質的価値を根拠付ける活動である.産学連携がこれらに悪影響を与えることがあってはならない. 本稿では,特に共同研究契約を対象として,産学連携終了後に,大学が自由な研究活動を継続するために,考慮すべき契約条件の検討を行った.
著者
堀井 朝運
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.2_41-2_49, 2012 (Released:2012-06-20)
参考文献数
2

企業経営のイノベーションを行い,商品・サービスの市場化を図るには,顧客視点で見て,市場にある商品・サービスに比べて,差別化された優位性があることが必要条件である.商品・サービスが顧客ニーズを超える高顧客価値を創出することが求められる.そのために,マーケティングと新商品の技術評価を徹底して行い結果を新規事業開発に反映させる.さらに,商品・サービスを良品廉価にするために,コスト,品質(機能),スピード(タイミング)の実現が必要である.これらを最も効率的に実施するには,人材育成が必要不可欠である.私の経験ではこの実現は,産学官連携の活用が最も効果があった.
著者
木村 千恵子
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.2_15-2_24, 2010 (Released:2010-07-01)
参考文献数
12

ドイツにおける産学連携の活性化を,その産学連携組織の制度設計の特徴を洗い出すことで試みた.事例としては,ドイツ人工知能研究所とフラウンホーファー協会という全く異なるタイプの組織の比較を行った.その結果,1)研究所への大学教授の深い関与とそれを支える制度,2)学生のキャリアアップの場として魅力ある教育システムと研究システムが確立,3)財政面で競争と支援が融和,4)知財戦略などの共通点が抽出された.これらの共通点は今後の我が国の産学連携に具体的に導入が可能かどうか,検討に値する.
著者
福重 八恵 前田 利之 岡本 直之 淺田 孝幸
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.2_17-2_26, 2009 (Released:2009-07-01)
参考文献数
10

著者らの研究グループは,平成16年度以降約5年にわたり,教育支援システムに関する産学共同研究開発を実施してきた.また,産学の連携体制を整え,産学協同による大学発ベンチャーを設立した.本稿では,まず,この産学協同ベンチャーにより開発されたモバイルシステムの実用化事例について紹介する.その上で,大学,民間,産学のそれぞれが研究開発を行った類似の教育支援システムの比較・分析を通し,産学共同研究開発の有効性と実用化の成功要因を明らかにする.さらに,産学連携の本質を「場」の概念を用いて説明する.
著者
山口 佳和
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1_25-1_36, 2008 (Released:2009-02-19)
参考文献数
66

本研究では,中小企業白書を分析し,その分析結果に基づいて,中小企業分野における産学連携関連施策がどのように変遷してきたかを考察した.その結果,産学連携関連施策が活発化するのは1995年の科学技術基本法制定と1996年の第1期科学技術基本計画策定,1999年の中小企業基本法改正の2つの転換点があったことが分かった.今後の課題としては,中小企業分野における産学連携関連施策の成否や評価について分析し,成功と不成功の要因,期待される産学連携関連施策のあり方について研究することが必要である.
著者
北村 寿宏
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.34-39, 2004 (Released:2005-05-13)
参考文献数
4
被引用文献数
7

島根大学 (旧) における産学連携活動の現状を分析しその特徴を明らかにすると共に, 現在の問題点を明確にし, 今後の産学連携活動の方向性について検討した.(1) 産学連携の主な相手先は, 島根県内の中小企業であり, 産学連携活動の特徴は, 大学の位置する地域に根ざした「県内展開中心型」である.(2) 産学連携活動における全般的な問題点としては, 比較的小規模な研究が多い, 実施する研究者と企業とも固定化されつつある, 文系の共同研究が少ない, の3つが挙げられる.(3) 産学連携活動の特徴を活かし, かつ, 問題点を解決し, 活動を活発化させ成果を上げていくためには, 地域社会と一体となった活動に重点化し, 地域の活動から全国, 全世界の活動に広げていくという方向性が有効と考えられる.
著者
山口 佳和
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.2_54-2_65, 2008 (Released:2008-08-12)
参考文献数
64

本研究では,科学技術白書を分析し,分析結果に基づいて,産学連携関連施策がどのように変遷してきたかを考察した.その結果,産学連携が活発化する転換点は1995年の科学技術基本法制定と1996年の第1期科学技術基本計画策定であることが科学技術白書の記述から確認できること,科学技術白書発行開始の当初から産学連携の重要性は認識され産学連携関連施策も早い段階から科学技術政策として実施されてきたこと,産学連携は様々な科学技術施策の中に組み込まれ現在もその重要性は変わっていないことが分かった.今後の課題としては,これまでの産学連携関連施策に対する評価,施策を実施した成果を分析し,成功と不成功の要因,期待される産学連携関連施策のあり方について研究することが必要である.
著者
湯本 長伯
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-4, 2004 (Released:2005-05-13)
被引用文献数
3
著者
荒磯 恒久
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-5, 2005 (Released:2006-01-20)
参考文献数
6
被引用文献数
3

NPO法人「産学連携学会」は公共性を高め, 社会に対する役割を今まで以上に果たさなければならない. 産と学という異なるドメインの融合プロセスを提示し知的生産のメカニズムを解明することにより産学連携活動を活性化し, 併せて産学連携学の確立を目指した研究交流を推進することが求められている.
著者
長平 彰夫
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1_12-1_20, 2010 (Released:2011-02-04)
参考文献数
81

本研究は,ここ20年間の産学連携に関する国内外の代表的な先行研究をレビューし,今後の研究に関しての示唆を行うことを目的とした.その結果,先行研究は,大きく3つのジャンルに分類できた.第1は,産学連携をイノベーションとの関係性から共同研究などを通じた知識や技術の移転活動のドライビングフォースとしてとらえるものであり,第2は,産学連携が企業や大学等の研究活動へ与える影響に関するものである.第3は,産学連携を新たな知識を創造する活動と捉え,研究生産性に関する科学社会学からのアプローチである.わが国の産学連携に関する論文投稿活動はここ10年,他国と比べて低調であり,異分野の研究者たちが産学連携学という横断的学術領域において結集し,学術活動としての産学連携を発展させていくことが必要である.
著者
北村 寿宏
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1_39-1_46, 2011 (Released:2012-01-12)
参考文献数
13

国立大学における産学連携の実状を明確にするために,共同研究件数の推移について調査した. 共同研究件数で比較すると東京大学や京都大学のような大規模大学が上位に位置することが多いが,理系教員一人当たりの共同研究件数で比較すると,岩手大学,茨城大学,横浜国立大学,静岡大学,三重大学などの大学や理系単科大学の多くが高い値を示し,共同研究が活発に行われていることが明らかになった. 近年における中小企業を相手先とする共同研究の件数を調査した結果,一部の大学を除いたほとんどの大学で,横ばい,ないしは,減少傾向にあり,特に,東北北部,山陰,四国,九州に位置する大学の多くで低い傾向が見られた.この結果は,大学が位置する地元の中小企業との共同研究が進んでいないことを示唆しており,地域イノベーションの創出の推進役が大学とその近隣の企業であることを考えると,今後の改善に向けての取り組みが必要であると考えられる.