著者
Nhlabatsi Armstrong Laney Robin Nuseibeh Bashar
出版者
国立情報学研究所
雑誌
Progress in informatics : PI (ISSN:13498614)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.75-89, 2008-03

セキュリティエンジニアリングとは,様々な資産を危害から守ることに関する技術である。フィーチャインタラクションとは,フィーチャの合成により望ましくないシステムの動作が引き起こされる,という問題のことである。多くの場合,共通のコンテキストにおいて,各フィーチャの動作が競合する,という形で現れる。フィーチャインタラクションは,セキュリティ脆弱性を引き起こすことにより,セキュリティ要求を侵害する可能性があり,攻撃者に利用される恐れがある。本論文は,フィーチャインタラクション問題,およびそのセキュリティ要求への影響について論じている。結論は以下の2 点である。(1) フィーチャインタラクションによるセキュリティ要求侵害は,検知手法については,他の種類の要求とは特に違いはない。異なるのは,このような違反がセキュリティに及ぼす影響の大きさである。(2)フィーチャインタラクションを検知する手法は脆弱性分析の手段として利用できる。
著者
石坂 憲司 岩井 雅史 後閑 壮登 大場 秀穂 坂口 良
出版者
国立情報学研究所
雑誌
Progress in informatics : PI (ISSN:13498614)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.137-151, 2008-03
被引用文献数
2 3

この論文は,信州大学学術情報オンラインシステム(Shinshu University Online System of GeneralAcademic Resources (SOAR))の開発について報告するものである。信州大学は,国立情報学研究所の2006-2007年度の最先端学術情報基盤(CyberScience Infrastructure(CSI))の構築事業に参加した。これを機に,信州大学は,総合的な学術情報システムであるSOARの構築を目指した。SOARは,学内の最新の学術情報環境を整備すると共に,本学研究者の研究成果・研究活動を広く国内外に発信するためのものである。具体的には,「研究者総覧」と「機関リポジトリ」の2つを柱とし,それに「電子ジャーナル」と「Web of Science」とを加えて相互に連携させたシステムである。SOARは,今後の学術情報システムのモデルの一つになるものと考えられる。なお,機関リポジトリ(SOAR-IR) は,既存のソフトウェアを用いて構築したが,研究者総覧(SOAR-RD)は,XML技術を用いて新たに開発した。
著者
山本 晃司 山口 修 青木 恒
出版者
国立情報学研究所
雑誌
Progress in informatics : PI (ISSN:13498614)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.53-62, 2010-03

本稿ではテレビ番組の出演者の顔を一覧表示することで,見たいシーンをすばやく見つけることができる映像ブラウジング・インタフェースのための高速な顔クラスタリング手法について提案する.ブラウジングのために,ユーザが録画終了後,許容できる待ち時間は1 時間番組あたり3 分以下であることが,予備調査により分かっている.本手法の目的は録画終了後,この許容時間内に顔クラスタリング処理を完了することである.顔認識に基づくクラスタリング手法(FRC) は良好な精度を得られる反面,処理時間がかかるという問題がある.そこで,本手法では顔特徴の類似度の代わりに,人物を含むショットの類似度を用いることで高速に処理する.本稿では類似ショット情報のみを用いた手法(SSC) と,SSCの結果をさらに顔サムネールの類似度でクラスタリングする手法(FTC) の2 手法を提案する.実験では映像1 時間当たりの平均処理時間はSSC が350 ミリ秒,SSC+FTC が31 秒と高速に処理可能であり,このときの精度(一覧表示における重複しない人物の数) は,FRC と比較し,それぞれ6.0%と0.9%の低下率にとどまることを示す.
著者
土屋 俊 竹内 比呂也 佐藤 義則 逸村 裕
出版者
国立情報学研究所
雑誌
Progress in informatics : PI (ISSN:13498614)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.29-49, 2007-03

本論文は,NACSIS-ILL と名付けられた図書館間相互貸借(ILL) リクエストメッセージ送付システムによって1990 年代半ばから実現されてきた大学間の図書館協力サービスに関する基本的事実を記述するものである。この研究は,NACSIS-ILL によって記録された1994 年から2005 年までのデータに基づいている。本研究の主要な調査結果として,以下の諸点を挙げることができる。すなわち,1) 日本の大学におけるILL においては「外国雑誌」に掲載された論文のコピーに対する要求が1990 年代にはきわめて支配的であるという点が特徴的であること,2)皮肉にも,特に看護学分野の雑誌に顕著に見られるように「国内雑誌」に掲載された論文に対する要求の増加が,2002 年に始まったコンソーシアム体制下のサイトライセンスによってオンラインで利用可能になった「外国雑誌」掲載論文に対する要求の減少を埋め合わせるかのように顕著になったこと,3)図書に対する現物貸借の要求は,それが要求全体に占める割合は小さいとはいえ,NACSIS-CAT という総合目録データベースの成長に従って増加してきたこと,4) 充足率は現物課貸出,複写提供のいずれにおいても安定的に高く,ターンアラウンドタイムの平均も概ね1週間以内であり,システムはきわめて効率的であるということ,5) システム本来の目的は相互に受益者となるような協力システムの構築にあったが,実際には主に要求するだけの図書館と供給するだけの図書館が存在しており,これは部分的には1970 年代に指定された「分野別外国雑誌センター」館に起因するものであること,6) いくつかの中小規模の図書館が近年供給を始めておりこれが顕著な動きを示していることである。
著者
Akisato KIMURA
出版者
国立情報学研究所
雑誌
Progress in informatics : PI (ISSN:13498614)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.19-30, 2014-03

ソーシャルネットワークサービス(SNS)で取り扱われるメディアは,従来から存在するマイクロブログ形式のテキストから,画像・映像等のマルチメディアコンテンツを含むものへ遷移し拡大してきている.これらSNS上のコンテンツは,ユーザ間の関係性や位置情報など,コンテンツの内容を知る上で非常に有用な補助情報が多数含まれている一方で,そのコンテンツがあまりにも膨大かつ多様であるため,自動的に解析することが容易ではない.本論文では,上記に示した有用性と問題点とのトレードオフを解決しうる1つの可能性として,ソーシャルキュレーションに着目する.ソーシャルキュレーションとは,SNS上のコンテンツを編集して新たなコンテンツを創る手動作業のことである.すなわち,このキュレーション後のコンテンツは,それ以前のコンテンツよりもはるかに洗練され,有用な情報が凝縮され,内容が絞り込まれている.このことは,コンテンツを解析する上でのコーパスとしての可能性を示すものである.上記の議論を踏まえ,本論文では,ソーシャルキュレーションに関する近年の動向,及びそのクロスメディア解析・マイニングへの利活用について概観する.
著者
Hari SUNDARAM
出版者
国立情報学研究所
雑誌
Progress in informatics : PI (ISSN:13498614)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.3-7, 2014-03

本論文では,持続可能性や公衆衛生などの社会的ジレンマにおいて協力関係を生み出すためにコンピューティングが果たす役割について論じる.このような協力関係のジレンマは異質集団の中に広範囲に存在する.本論文では,経験的な実地調査による協力の分析から洞察を得て,社会的信号を分析し,行動を検証するスマートフォンセンサーを利用した統合的コンピューティングの枠組みによって協力へと向かう個々の意思決定を形成できることを示す.ここでは,相互に関連した4つの技術的課題とソリューション例について述べる.これらの課題は,小規模の同質集団を構築するためのコミュニティ発見アルゴリズム,資源制約型ネットワークにおける個人の説得力,実環境での活動監視,大規模な社会的協調の発見である.さらに,小児肥満症対策,サイバーセキュリティ,公共の安全の向上など,コンピューターインフラストラクチャから生じる新しい協力のためのアプリケーションについて簡潔に述べる.
著者
相澤 彰子 高須 淳宏 深川 大路 高久 雅生 安達 淳
出版者
国立情報学研究所
雑誌
Progress in informatics : PI (ISSN:13498614)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.41-47, 2009-03

本研究では,学術情報に焦点をあて,2 層構造を持つ情報同定システムを提案する.まず,同一の事物や人物を参照する断片化した情報をつなぎあわせる情報同定の考え方について述べ,次に,特に書誌および研究者の同定機能を組み合わせた情報同定システムを提案する.応用例として,共著関係ネットワーク分析結果をあわせて示す.
著者
渡辺 恵子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
Progress in informatics (ISSN:13498614)
巻号頁・発行日
no.2, pp.77-86, 2005-11

本稿では、各大学や学習者のe ラーニングへのニーズに焦点を当てた考察を行う。本稿では、e ラーニングについて次のような類型化を行う。類型I:通信制でe ラーニングを主体として単位又は学位取得が可能。類型II:通学制で一部の授業についてはe ラーニングを主体として単位の取得が可能。類型III:通学制の授業において補助的にe ラーニングを活用。その上で、まず、メディア教育開発センターが公表している利用実態調査に基づいて、類型IIIについては大学側のニーズが比較的高いことを明らかにする。次に、事例分析に基づき、類型I、IIは社会人や外国人学生、専門的な内容を学ぶ学生などのニーズに応えている形態であること、また、全ての類型が教育内容、方法の質の向上に役立つという点で学生のニーズに応えるものであることを明らかにする。多くの大学にニーズがあり、学生のニーズにも応えることになる類型IIIが今後最も進むe ラーニングの形態であることが予測でき、類型I、IIの普及については、潜在的な学習者の発掘がどの程度できるかが鍵であると結論付けられる。