著者
相模 健人 長谷川 明弘 石丸 雅貴 増尾 佐緒里
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.35-41, 2018-03-31 (Released:2018-06-27)
参考文献数
6

本論文では,2人の指導者と,2人の学習者によってブリーフセラピーの学びがどのように発展されたのかを明らかにすることを目的とした。指導者の視点からは,「チームアプローチ」と「臨場感を伴った研修・訓練」を通してどのようにブリーフセラピーを教えているのかについて説明した。学習者の視点からは,現場でどう知識や技法を活かしているかについて説明した。まず,経験年数5年の臨床心理士が「クライアントが専門家」についての捉え方の変化を紹介した。更に経験年数10年の臨床心理士がチームの中でどのようにブリーフセラピーを活かしているのかを紹介した。指導者は必要に応じて様々な工夫を行っていること,そして,学習者には臨床活動の中で以下の4点が必要であることを議論した。①ブリーフセラピーを学んだ経験を活かすこと。②ブリーフセラピーの技法にとらわれないこと。③クライアントと創造的に関わること。④3つを臨床実践の中で応用すること。
著者
馬ノ段 梨乃 森 俊夫 飯島 優子 福島 南 五十嵐 良雄
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.25-36, 2013

近年,労働者を対象とした復職支援プログラム(リワークプログラム)が注目を集めている。本稿では,筆者が作成した「SFAの手法を用いた体験型の心理教育プログラム」に関して,提供したプログラムの内容を紹介し,リワークプログラムへの適用可能性について検討したい。プログラムは1回2時間,全8回の講義とワークから構成され,ウェルフォームド・ゴール,ミラクル・クエスチョン,スケーリング・クエスチョン,タイムマシン・クエスチョン,リソース,外在化,アサーション等の概念を含むものとした。プログラムを導入した結果,SFAに対する意見としては,より簡単に理解できる,身近に感じられるといった意見が得られた。一方で,抽象的なメタファーやイメージが多く,理論的な学習を好む利用者にとっては理解が難しい様子もみられた。今後は,効果評価を含めて,プログラムの検討をさらに進めていくことが望まれる。
著者
中島 央
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.114-127, 2009-12-31

本論では,ブリーフセラピーにおける見立ての方法論を,従来心理臨床において行われてきた因果論に基づく見立ての方法論に,Milton H.Ericksonの方法論にみられる見立ての要素を対比する立場で,考察し,論じてみた。この立場からはまず,ブリーフセラピーの見立ては,問題のなりたちに基礎をおく因果論的見立てに対し,問題状況のなりゆきに基礎をおいていると考えられた。結果的にそこには,「時間と動き」「自然に即した見方」の2つの視点があり,そこから,「必然的変化」「リソース」「無意識の方向性」「未来志向」の4つが,ブリーフセラピーにおける見立ての重要な要素として抽出された。
著者
伊藤 拓
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.15-26, 2011-10-31

ミラクル・クエスチョンはソリューション・フォーカスト・アプローチで用いられる有益な技法である.しかし,この技法に好反応を示さないクライエントがいる.本研究ではミラクル・クエスチョンの用い方に関する研究を展望し,ミラクル・クエスチョンを効果的に用いるための要点について考察した.ミラクル・クエスチョンを効果的に用いるためには,SFAの哲学の十分な理解と高度な面接スキルに基づいて,面接の過程において様々な取り組みを総合的に行わなければならないことが,本展望で示唆された.行うべきことには,特に,ミラクル・クエスチョンを尋ねる前に,それがクライエントに受け入れられやすくなるように慎重に準備することや,ミラクル・クエスチョンに対するクライエントの全ての応答をコンプリメントすることが含まれる.
著者
白尾 直子
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.45-52, 2014-10-31

筆者の勤務する精神保健福祉センターでは,平成22年度よりひきこもり傾向のある思春期・青年期の来所者・受診者を対象とした少人数グループ療法を開始した。少人数グループ療法が参加者に及ぼす影響を検討するため,参加者のグループ療法前後での心理面・行動面の変化を心理評価尺度を用いて比較した。視覚的アナログスケールの結果では,家族から見てコミュニケーション・活動性・自己管理・こころの状態の総合評価は4項目すべてについて参加前後で有意に上昇しており,本人による評価でも自己管理を除く3項目で有意な改善が認められた。ひきこもり傾向のある思春期・青年期の対象者に対して,構造化された安全な場で少人数集団療法を行うことは心理面・行動面によい影響を与えることが示唆された。
著者
深沢 孝之
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.81-91, 2014-12-31

クライエントの「望み」をアセスメントし,共有することは心理療法では重要なプロセスである。それはブリーフセラピーでは,解決志向という発想の下に多くの質問技法により実践されてきた。しかし,中には自発的に未来のイメージを出しにくいクライエントもいる。そのような時アドラー心理学に基づいた早期回想を解釈するアセスメント法が有効な場合がある。本稿では早期回想法の実施の仕方とブリーフセラピーとの統合の可能性を,アスペルガー障害と診断された成人の事例をとおして例示する。早期回想の技法は,ブリーフセラピストにとって理解しやすく,採用することは有用である。
著者
菊岡 藤香
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.36-44, 2014-10-31

死期を目の前にした時,人は自己の存在と意味の喪失に苦しむ。こうした苦痛をスピリチュアルペインといい,スピリチュアルペインは緩和医療において重要な課題となっている。本論では,終末期がん患者のスピリチュアルペィンに対して,ディグニティセラピーを用いた心理援助事例を報告し,その有用性について検討した。ディグニティセラピーは患者が最期まで自分らしく生きることを支え,遺族の悲しみを和らげることが示された。
著者
深沢 孝之
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.81-91, 2014-12-31

クライエントの「望み」をアセスメントし,共有することは心理療法では重要なプロセスである。それはブリーフセラピーでは,解決志向という発想の下に多くの質問技法により実践されてきた。しかし,中には自発的に未来のイメージを出しにくいクライエントもいる。そのような時アドラー心理学に基づいた早期回想を解釈するアセスメント法が有効な場合がある。本稿では早期回想法の実施の仕方とブリーフセラピーとの統合の可能性を,アスペルガー障害と診断された成人の事例をとおして例示する。早期回想の技法は,ブリーフセラピストにとって理解しやすく,採用することは有用である。
著者
市橋 香代
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.86-96, 2006-12-31

いわゆる「軽度発達障害」という用語は,日本独自の政治的文脈から発展してきたものである。通常の学級においてこれは,特別な支援を必要とする子どもたちの一群を指す。本論では「軽度発達障害」の成立について社会構成主義の観点で二つの方向からアプローチしている。1)マクロなレベルにおいて,一般的な定義をどう構成しているか。2)ミクロなレベルにおいて,個人がどのように定義と出会ってその意味を変容させるか。両方向の共同作業によって定義が構成される一方で,とある疾患を歴史の中で構成するのが医療化のプロセスである。論者は診断分類がただのラベルではなく,可能性を示すものとして扱えると考えている。