著者
谷本 忠明 佐藤 明子 林田 真志 川合 紀宗
出版者
広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター
雑誌
広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター研究紀要 = The bulletin of the Center for Special Needs Education Research and Practice, Graduate School of Education, Hiroshima University (ISSN:18835406)
巻号頁・発行日
no.15, pp.33-41, 2017-03

平成25(2013)年度より,特別支援学校(聴覚障害)高等部に現行学習指導要領が学年進行で施行された。その際,それまでの教科内容が大きく変わったのが外国語(以下,英語科)であった。他方で,近年のグローバル化を踏まえて,中央教育審議会は,平成34年度からの新たな教育課程の施行に向けて,「審議のまとめ」(2016)の中で,高等学校英語科の新たな科目案を示した。しかし,聴覚障害教育においては,「聞く」,「話す」ことに困難のある生徒に対する英語科指導の教育的手立てについて,これまでも課題が指摘されてきている。他方で,「読む」,「書く」ことについても,基礎となる日本語習得の手立てを考慮しながら進めていく必要があることや,生徒の状態の多様化を踏まえた指導方法の工夫などの対応も求められている。本稿では,現行学習指導要領が施行された初年度において全国の特別支援学校(聴覚障害)高等部において開設された英語科に関して行った調査の概要を報告するととに,そこから得られた結果を踏まえて,次期学習指導要領に向けて何が求められるのかについて検討した。本稿は,平成26年度広島大学大学院教育学研究科博士課程前期特別支援教育学専攻の課題研究報告書の内容の一部に基づき作成されたものである。
著者
林田 真志 河野 そらみ 河原 麻子
出版者
広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター
雑誌
広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター研究紀要 = The bulletin of the Center for Special Needs Education Research and Practice, Graduate School of Education, Hiroshima University (ISSN:18835406)
巻号頁・発行日
no.16, pp.1-8, 2018-03

小学校の難聴特別支援学級で指導を担当している教員を対象として、自立活動の実態と課題を明らかにすることを目的として質問紙調査を実施した。回答者のうち、特別支援学校教諭免許状(聴覚障害教育領域)保有者は11.8%にとどまった。先行研究でも報告されたとおり、多くの学級内で使用されている主たるコミュニケーション手段は音声言語であった。在籍児童が抱える学校生活上の困難として多く回答されたのは、「語彙について」「やりとりの確実さ」であった。回答者が在籍児童と関わる際に苦慮することについては、「自身の難聴に関する知識が十分でないと感じる」「手話や指文字を使いたいが十分に使えない」「児童間の人間関係が十分に形成できていない」という回答が多くみられた。回答者が自立活動において指導経験のある内容については、読み書きや発音・発語、人間関係の形成に関するものが多かった。自立活動の指導内容を精選及び指導する際に苦慮することについては、「指導したい内容に関する知識や技量が追い付かない」という回答が最も多く、難聴特別支援学級担当教員の専門性に関する課題が改めて示された。
著者
松本 敏治 菊地 一文 橋本 洋輔
出版者
広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター
雑誌
特別支援教育実践センター研究紀要 (ISSN:18835406)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-10, 2020-03-01

方言主流社会における発達障害に関わる療育・教育関係者の間で語られていた「自閉症は方言を話さない」とする風聞をきっかけにして、ASD の方言使用・理解の研究が進められている。これまで特別支援教育関係者を対象にした質問調査は、ASD の方言不使用という印象が全国で共通するものであること、および方言語彙使用が少ないことを示した。また、ASD の方言理解及びことばの使い分けについての実験的研究の結果は、方言理解自体にも困難を抱えることおよび相手との関係が不明瞭な場合のことばの使い分けに特徴的な反応が見られることを示している。これらの現象の要因として、ASD の社会性の障害に原因を求める説が松本らによって提出されていた。一方、音響音声学の研究者からはASD の音声処理にその原因を求める説が提出されている。本研究ではこれらの研究を概括し、ASD の音声処理、言語習得、そしてことばの使い分けの背景に存在する問題について理論的検討を加えた。
著者
Martine VANRYCKEGHEM Norimune KAWAI
出版者
広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター
雑誌
広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター研究紀要 (ISSN:18835406)
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-9, 2015-03

The assessment of a child or adult who stutters should not be limited to the investigation of the individual's disfluencies. Given the abundance of data indicating that stuttering is not solely a speech impediment, the constituents that surround stuttering need to be evaluated during the initial assessment. This paper presents information on an assessment battery for school-age children and one for adults, the Behavior Assessment Battery, which investigates the affective, behavioral and cognitive sequelae that frame the stuttering disorder. More specifically, the focus of this paper will be on the cognitive component of the stuttering syndrome, not only among school-age children and adults, but even among the very young, incipient stutterer. The internationally-based research on the KiddyCAT, CAT and BigCAT assessment tools is being summarized. In addition, the current status of studies on attitude toward communication of individuals in Japan is introduced.
著者
山元 隆春 居川 あゆ子
出版者
広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター
雑誌
広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター研究紀要 (ISSN:18835406)
巻号頁・発行日
no.14, pp.43-54, 2016-03

本論文は,国語科の「読むこと」の学習指導における「アクティブ・ラーニング」の実践形態を実践的に探究するものである。国語教科書教材「冥王星が「準惑星」になったわけ」を起点とする単元の実践とその検討を通して,そのことによって,学習者のさまざまなニーズに応じた,多様な学びを成り立たせる国語科での「アクティブ・ラーニング」成立の条件を探った。In this paper, a plot of lesson for eliciting students' active learning was constructed and examined the process and outcomes of the unit and lessons implemented in any junior high Japanese classes. Any conditions for creating active learning in the context of learning reading any Japanese expository texts as follows; finding out many texts for evoking each student's interests; showing appropriate tasks linking each student's everyday life; struggle with reading and writing and thinking, etc.
著者
川合 紀宗 落合 俊郎 蘆田 智絵 樋口 聡
出版者
広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター
雑誌
広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター研究紀要 (ISSN:18835406)
巻号頁・発行日
no.12, pp.25-37, 2014-03

インクルーシブ教育の実施・推進は,国際的に見ても多くの課題があるのが現状である。インクルーシブ教育の指針を効率的かつ効果的に制度化するには,インクルーシブ教育を実施することの意義や責務に対する教師の認識が重要な鍵を握っている。本稿では,インクルーシブ教育システムの構築・推進に向けた改革のあり方,インクルージョンの障壁を取り除くこと,インクルージョンに向けた学校の再構築,教員養成,ならびに教師教育における大学の役割について検討した。