著者
米田 正明 土井 信幸 新井 克明 宮本 悦子 高橋 真吾 淺野 未代子 秋山 滋男
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.49-58, 2022 (Released:2022-04-28)
参考文献数
18

地域包括ケアシステムの進展に伴い、在宅医療において薬剤の経管投与患者は今後増加することが予想され、経管投与患者・介護者への簡易懸濁法の指導および支援の重要性が高まると考えられる。本研究では、保険薬局の管理薬剤師を対象に、経管投薬支援料算定開始に伴う算定状況および経管投与患者への薬剤投与方法の実態を明らかにすることを目的に調査した。 結果、384薬局から回答を得た(回収率53.5%)、経管投薬支援料を算定しているのは2.1%(6/283薬局)と低く、簡易懸濁法の指導経験のある保険薬局も13.8%(47/341薬局)と低かった。患者に対して簡易懸濁法の指導経験のある保険薬局は、指導経験のない保険薬局と比較して、簡易懸濁法に不適切な薬剤に対して医師への処方提案を行った経験は14.9% (7/47)と有意に高かった。簡易懸濁法の習得方法は、「インターネット上のWebサイト」との回答が55.3 %と最も高い割合であった。Webサイト上の情報源は信頼性が低い場合があることに留意すべきである。今後、製薬企業がインタビューフォームやホームページなどで適正な情報開示を行うことが期待される。また、薬剤師が経管投与患者やその介護者に対し簡易懸濁法の適切な支援を行うためには、薬剤師会などが主体となり実技研修を行うとともに、信頼性の高い情報の集積と情報提供体制の強化を図り、実地研修の機会を増やすなどの対応が望まれる。
著者
中島 理恵 Theera Rittirod Chernporn Navanukraw 浦丸 直人 亀井 美和子 久保田 洋子
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.35-48, 2022 (Released:2022-03-22)
参考文献数
37

本研究では、タイ王国における慢性疾患治療薬の販売および高齢慢性疾患患者の薬物治療の問題点や薬剤師による服薬支援の実態を明らかにするため、タイ王国の病院および地域薬局薬剤師に対して調査を行った。 タイ王国の病院薬局および地域薬局薬剤師を対象にwebによるアンケート調査を実施した。回答者背景、病院薬局および地域薬局別の慢性疾患治療薬の販売状況について単純解析を行い、薬剤師による高齢慢性疾患患者の医薬品服用問題の認識、服薬支援およびポリファーマシー対策の実施の有無については薬剤師の勤務先ごとにカイ二乗検定を行った。 209人の薬剤師より回答を得た。タイ王国では、グリベンクラミド、グリピジド、メトホルミン、シンンバスタチン、アムロジピン、エナラプリル、ヒドララジン、アミロライド塩酸塩・ヒドロクロロチアジド、メトプロロール、プロプラノロール、アテノロールといった他国において医師の診断や薬剤師による指導を特に必要としている慢性疾患治療薬が半数以上の地域薬局で処方箋なしで販売されていた。また、高齢慢性疾患薬物治療の問題点についての地域薬局薬剤師の認識は病院薬剤師に比べて低く(p<0.001)、服薬支援(p<0.001)も病院薬剤師においてより積極的に取り組んでいた。 病院-地域薬局間で高齢慢性疾患患者の薬物治療の特徴や問題点を共有することが必要であることが示唆された。
著者
金田 仁孝
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.46-51, 2020 (Released:2020-03-31)

薬学教育6年制がスタートして10年以上が経過し、教育内容もより臨床に即した内容になってきている。 一方薬局の現場では依然として処方せん調剤を中心とした業務が続いており、6 年制のカリキュラムを習得した薬剤師がその知識・技術を十分発揮できているとはいいがたい現状がある。 薬局の本来の根幹業務でもある、症状を訴えて来局する地域住民に対する店頭相談に対応するため、最近では「臨床判断」のワークショップも多く開催されているが、いざ受診勧奨となった時に、どの医療機関のどの医師にどのような紹介状を書いて、どう紹介するかについては、まだまだ試行錯誤が続けられている段階である。 地域住民に一番近い医療の専門家として薬局薬剤師が行う責任ある受診勧奨とは何かを探るため、薬局からの実際の紹介状を交え、ケーススタディをもとに受診勧奨とその後のフォローアップを考える。
著者
真野 俊樹
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.67-74, 2019 (Released:2019-04-08)
参考文献数
5

日本に暮らす外国人(在留外国人)、観光やビジネスで日本を訪れる外国人(訪日外国人)は増加の一途を辿り、それに比例するように日本国内の医療機関を受診する外国人患者は増え続けている。この動きは、2020年の東京五輪に向けてさらに今後も加速することが予想される。 そのような社会情勢の中、外国人患者への対応は、薬局も含めどの医療機関にとっても重要な課題の一つとなっている。さらに、観光客以外の流動化の対象には、労働者:コンビニなどで働く人、高度人材:看護師、介護師含む、患者などがあげられる。外国人の増加は一時的な現象ではなさそうで、観光庁によれば訪日外国人の4%が医師を受診する可能性があるともいわれる。 2017年、訪日外国人は2869万人であるので医師受診の可能性は100万人を超え、社会問題となってきている。 この中で、薬局にも外国人対応が求められているといえよう。そしてその中には、世界的に見た薬物療法の標準化も含まれると思われる。