著者
北本 朝展 西村 陽子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1. デジタル史料批判の基盤構築:Digital Critique Platform (DCP)の構築を進めた。今年度は、シルクロード遺跡の基礎情報を入力するためのメタデータスキーマを設計し、それを入力するためのウェブインタフェースを構築した。次にDCPの全体的な設計および既存ツールとの連携については、最終年度での改良と完成に向けて課題を明確化した。2. デジタル史料批判の実践:シルクロード探検隊が過去に撮影した古写真の保存状況について、ベルリンやロンドンのミュージアムを訪問して現地調査し、これらの活用について担当者とのディスカッションを行うとともに、担当者が来日した際には東京でも打ち合わせを行った。さらに中国においてもシルクロード探検史料の整理を行い、現地に保存されている実物の史料も合わせ、シルクロード探検報告書の地図の内容を分析した。この成果は、シルクロード探検に関する複数の史料の参照関係を解明するための足掛かりとなるものである。3. デジタル史料批判の拡大:モバイルアプリ「メモリーグラフ」はバージョンアップを繰り返しながら機能を充実させ、主要な機能を完成させることができた。また学術的な利用に加えて市民科学としての利用についても、京都や長崎などで事例を積み重ねた。一方、非文字史料の史料批判については、日本古典籍を対象に研究を進め、IIIF Curation Viewerのキュレーション機能も活用した画像分析を進めた。最後に、京都大学東南アジア地域研究研究所と連携した「華北交通アーカイブ」については、数万枚に及ぶ古写真のキャプション入力をほぼ終了し、最終年度での公開に向けた作業が進行中である。
著者
西村 陽子 北本 朝展
雑誌
じんもんこん2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.3, pp.43-50, 2014-12-06

本論文はシルクロード東部地域を代表する都市遺跡・高昌故城を取り上げ,従来は不正確とみなされていた地図を位相的な特徴に基づき解釈する方法を提案し,現在では所在が不明となっている探険隊調査遺構を同定できることを示す.約100 年前,日欧のシルクロード探検はこの遺跡を発掘調査し,仏教・マニ教キリスト教の遺物など多彩な出土物を獲得した.中でも特にドイツのグリュンウェーデルの調査報告は,時期の早さと細かな平面図を残していることから最も重要な報告とされている.しかしこの地図は歪みが大きく,我々は報告書と現地の遺構と照らし合わせてもどの遺構を記録したのかほとんど把握することができないという問題に遭遇してきた.本論文ではこの問題を解決するために,地図の性質に着目し地図の持つ位相的な特徴に基づいて読み解く方法を提案し,これを「地図史料批判」と呼ぶ.まず我々はグリュンウェーデルとスタインの地図を現況と比較するためにKMLファイルを作成した.さらに歪みの大きい地図の詳細な比較を支援するツールとして古地図と現代地図をピン刺し(pinning)した地点を基準に重ね合わせることができる「マッピニング(Mappinning)」を開発した.次に,地図の位相的な解釈を行う方法を提案し,平面図や古写真と現代写真,地図を使うことで古代都市遺跡の遺構同定が進むことを示す.そして最後にこれらのデータを遺跡データベースとして蓄積する構想を述べ,こうしたデータベースが歴史学・考古学に持つ意義を述べる.
著者
北本 朝展 西村 陽子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は新しい史料批判の方法論であるデータ史料批判(デジタル史料批判)を提案し、これを主に非文字史料に適用するための情報プラットフォームDCPを構築した。写真や地図を照合するための各種ツールをDCPに統合することで、照合というエビデンスを結合したエビデンスネットワークを構築することができた。さらにエビデンスネットワークをSPARQL言語を用いて意味的に検索し、各種史料に出現するシルクロード遺跡の関係を信頼度に基づき結合する新しい方法を提案した。ついで、データ史料批判の方法を実際のシルクロード遺跡の探索に適用することで、シルクロード遺跡の全体像を把握する見通しを得ることができた。
著者
西村 陽子
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.118, no.4, pp.513-550, 2009

This article examines every aspect of the history of ninth and tenth century northern China based on the recently discovered Zhimo 支謨 Epitaph. During the ninth and tenth centuries, the region of Daibei 代北 (the northern part of what is now Shanxi 山西 province) was politically, militarily and commercially one of the most important regions throughout eastern Eurasia. It was the center of a military clique during the Five Dynasties and Ten Kingdoms period, and during that time, was the staging ground for repeated campaigns of advancing nomadic tribes. It is no exaggeration that the history of ninth and tenth century Daibei determined the China's historical development during the centuries that followed. Therefore, the task of decoding the Zhimo Epitaph and clarifying the movements of the nomadic powers of Daibei during the last decades of the Tang Dynasty will enable a more systematic understanding of those events occurring in ninth and tenth century northern China that would deeply influence the historical development of East Asia in the centuries to come. The author begins by transcribing the rubbed copy version Zhimo Epitaph into a text, in order to discuss 1) how the Shatuo 沙陀 Turks intended to seize the economic foundations of the Tang Dynasty from the very beginning of their territorial expansion during its last years, 2) how the historiography concerning that expansion was altered considerably as it was transmitted through the regimes formed by the Shatuo Turks during the Five Dynasties and Ten Kingdoms period, by comparing the Zhimo Epitaph with other extant sources, and 3) the concrete image of the upheaval staged by the Shatuo Turks at the end of the Tang period and how that upheaval influenced the history of East Asia during the following centuries. Therefore, due to the excavation of the Zhimo Epitaph, it has become possible to gain new perspectives on the formation of the Five Kingdoms.
著者
西村 陽子 北本 朝展
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.9, pp.1-8, 2009-07-18
参考文献数
12

本論文は、北京という都市を対象として古地図と古写真を統合した Historical GIS を構築する試みを紹介する。約 250 年前の古地図『乾隆京城全図』と約 100 年前の古写真を「空間画像史料」として統合的に扱うためには、古写真の場所を同定する問題が本質的に重要である。そこで本論文では古地図等の複数の情報源を利用しながら古写真をマッピングする問題に取り組み、簡単な事例から困難な事例までに適用可能な一連のマッピング方法を提案する。また Historical GIS を実現するために Google Earth というツールを活用することの利点を示し、古写真を地理的な文脈で閲覧し解釈できるような環境を実現することが北京の都市景観の再現には必要であることを論じる。This paper introduces the construction of a historical GIS on the city of Beijing by integrating old maps and old photographs. We use the old map, Complete Map of Peking, Qianlong Period, made about 250 years ago, and old photographs, taken about 100 years ago, and defined them as "spatial visual sources." We claim that the mapping of old photographs is an essential step toward dealing with old maps and old photographs as spatial visual sources in an integrated manner. We therefore focus on the problem of mapping old photographs using information and hints from various sources, and propose a set of mapping methods that are applicable from simple cases to difficult ones. We also show that Google Earth is a useful tool for realizing a historical GIS, and discuss that, for reconstructing the historical space of Beijing, we need to realize an environment in which old photographs can be browsed and interpreted under geographical context.
著者
貴志 俊彦 陳 來幸 石川 禎浩 武田 雅哉 川島 真 柴山 守 松本 ますみ 孫 安石 大澤 肇 小林 聡明 谷川 竜一 菊地 暁 富澤 芳亜 泉水 英計 西村 陽子 李 梁
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本共同研究では、近100 年間に東アジア域内で起こった歴史的事件、あるいは時代の画期となるトピックをとりあげ、それぞれの局面で登場した非文字史料がはたした役割とその受容者の解釈を検討した。国内外における広範な調査と成果発表にあたっては、複数の地域で製作された非文字史料を比較対照するとともに、(a)図像解釈学的分析、(b)語彙分析による情報処理、(c)コミュニケーション・パターン分析等を導入して、紛争・協調の時代イメージと非文字史料との因果関係を明らかにした。