著者
宮ノ下 明大 宍戸 功一 岩崎 修
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.19-22, 2019-03-25 (Released:2020-03-25)
参考文献数
8
被引用文献数
4

形状の異なる切り干し大根(輪切り,千切り,割り干し)におけるノシメマダラメイガの発育を,温度25°C,相対湿度60%,日長:明期16 h,暗期8 hの条件で調べた.その孵化幼虫から羽化までの平均発育日数は,輪切りでは34.8±0.3日,千切りでは37.0±0.4日,割り干しでは40.9±0.4日であり,それぞれ有意に異なっていた.これらの発育日数は,生きた本種幼虫が切り干し大根から発見された場合,その混入時期推定の目安になると思われる.同じ条件で玄米での平均発育日数は35.8±0.5日であり,切り干し大根の輪切りや千切りとは差がなかった.切り干し大根(割り干し)と玄米で発育した本種雌成虫の産卵選好性を,玄米と切り干し大根を対象にして調べたところ,いずれも切り干し大根に対して産卵する割合が有意に高かった.今回の発育や産卵選好性の試験結果から,切り干し大根は本種の食害や混入を受けやすいと考えられ,その管理・保管には注意する必要がある.
著者
橋本 知幸 伊藤 靖忠
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.53-59, 2007
参考文献数
12
被引用文献数
1

チャバネゴキブリの日周性や薬剤処理面への忌避行動の自動観察のための装置を,レーザー光センサーを用いて構築した.光条件を14L:10Dに設定して,雄成虫を自由に活動させたところ,暗時間帯におけるセンサ一部での通過数は,明時聞に比べて有意に多く(<i>p</i><0.01),これまでに知られていたゴキブリ類の夜間活動性を確認することができた.この傾向は雌成虫や1齢幼虫でも見られた.また雄成虫を24Dないし24Lの光条件に馴化させた場合,本来の日周性が乱れる傾向が観察された.ディートとペルメトリンをベニヤ板に処理した場合の,処理面上の通過数を観察した結果,ディートでは4 g/m<sup>2</sup>処理区でほぼ完全に通過忌避が認められたものの,ペルメトリンでは0.8 g/m<sup>2</sup>処理区で処理1日後に30%以上の平均ノックダウン率が認められたにもかかわらず,対照区との間で通過数に有意差は認められなかった.
著者
宮ノ下 明大 佐野 俊夫
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.21-24, 2013
参考文献数
6

<p>2012年10,11月に関東地方(東京都,神奈川県,千葉県,茨城県)の7カ所において屋外にノシメマダラメイガの性フェロモントラップを設置し,その捕獲数を調べた.2011年に行った同地方での調査と比較し,トラップ(ガチョン)は屋外で安定して本種を捕獲できること,年や調査地域が異なっても11月の捕獲数が大幅に減少するという捕獲消長が確認された.本調査で確認された10月前半の捕獲数の地域差について,夜間の平均気温との関係を調べたところ,平均気温の高いと考えられる東京都品川区や神奈川県横浜市で多数の捕獲が見られた.しかし,捕獲数と気温の関係を明瞭に説明することはできず,各調査地域での本種の発生量やその季節変動など他の要因も関係していると思われた.</p>
著者
青山 修三
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.59-62, 2015-10-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
8

札幌市内で6月と7月に捕獲したヤマトゴキブリ成虫雄5個体と雌9個体集団飼育し,本種の産卵・幼虫の孵化状況と 孵化幼虫の越冬に関する実験を行った.卵鞘数,孵化率,孵化幼虫数はいずれも8月が最多であり,卵期間は短かった.1齢幼虫での越冬は極めて難しいが,2齢から4齢幼虫では越冬できることから,札幌の野外環境で十分な定着が可 であることが示唆された.
著者
青山 修三
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.21-25, 2006-06-30 (Released:2019-04-10)
参考文献数
7
被引用文献数
3

札幌産ヤマトシロアリ職蟻の温度反応を3種の実験により他地域産のコロニーと比較した.二重の試験管の温度を20.0℃から徐々に-4.0℃まで低下させる温度下降に伴う反応行動を比較した結果,産地が南から北へ行くに従って活発行動を示す温度範囲が下降する傾向が見られた.温度下降終了後10時間後の平均蘇生率は札幌産84%,秋田産16%,つくば産46%,鹿児島産20%を示し,札幌産の蘇生率が高かった.しかしながら緩慢,停止,仮死の温度反応には産地間で明瞭な差は見られなかった.広口瓶を用いての越冬期間中の死亡率を比較した結果,越冬期間中の死亡率は札幌産が最も低い54.7%で,秋田産が93.3%,鹿児島産は100%であった.シャーレ内カラマツ蒸煮材の食害による早春季採餌量比較をした結果,実験終了時のカラマツ蒸煮材への食害度は札幌産(生存率86.8%)が最も大きく,秋田産(生存率55.6%)は軽微,鹿児島産(生存率6.8%)では認められなかった.これらの結果から,今回供試した札幌産ヤマトシロアリが他地域産よりも低温に適応している可能性が示唆された.
著者
宮ノ下 明大 今村 太郎
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.53-57, 2011-11-30 (Released:2019-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

チョコレート製品でのノシメマダラメイガ幼虫の発育を調べた.ミルクチョコレート製品での成虫羽化率は25℃で8%,30℃で22%と低く,発育日数は25℃で140日以上,30℃で88日以上かかった.これらの結果より,ノシメマダラメイガ幼虫にとって,チョコレートそのものは適した食物とはいえないと考えられた.アーモンドを含むミルクチョコレートでは,アーモンドを含まないものに比べて短い発育日数(約69日/25℃,約52日/30℃),高い成虫羽化率(50%/25℃,53%/30℃),重い成虫体重を示した.ロースト・アーモンドのみでは,チョコレートのみよりも成虫羽化率は高く(80%/25℃,53%/30℃),発育日数も短かった(約42日/25℃,約24日/30℃).ミルクチョコレート製品での成虫羽化率は,個別飼育の方が集団飼育(n=5)よりも高くなった.
著者
川口 侑子 牛頭 夕子 水原 寛美 田原 雄一郎
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.7-12, 2015-05-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
7

シリカゲルのゴキブリに対する効果は,粒子径の大きさに左右された.470 meshであれば,1m2あたり3gの処理で感受性系統ならびに抵抗性系統のチャバネゴキブリに対して,24時間で85%以上の個体が死亡した.30 mesh, 40 meshの粒子径のシリカゲルでは殺虫効力が見られなかった.トビイロゴキブリ老齢幼虫に対する殺虫効果 は劣った.470 meshのシリカゲルを室内に7日間放置した時の吸湿の程度は低く,殺虫効力には大きな影響をもたらさなかった.シリカゲルで死亡したゴキブリの肢や触角は硬直し,時間とともに脱落した.一連の試験から,処理面が乾いている場所でのシリカゲル微粉末処理は,チャバネゴキブリ駆除に対し有効で,現場での実用性が期待される.
著者
山内 健生 渡辺 護
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.13-16, 2013-05-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
16

富山県の山地(標高330m, 664m, および1,120m)にて,Townes型マレーズトラップを2009年7月から9月まで連続して設置し,スズメバチ類の捕獲を行なった.その結果,2亜科16種を捕獲した.捕獲個体数がもっとも多かったのはシダクロスズメバチで,全個体数の59.1%を占めた.ツヤクロスズメバチがこれに次いだ(15.7%).3地点とも最優占種はシダクロスズメバチであったが,種構成は標高によって異なっていた.アシナガバチ亜科に関しては,標高の高い地点ほど捕獲種数と個体数が少なく,標高1,120 m地点ではまったく採集されなかった.一方,スズメバチ亜科では標高が高い地点ほど捕獲種数と個体数が多かった.
著者
宮ノ下 明大 今村 太郎 古井 聡 曲山 幸生
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.65-67, 2016-09-20 (Released:2017-11-16)
参考文献数
13

2015年12月10日に茨城県西部の玄米貯蔵施設5カ所で,その敷地内を対象に屋外のコクゾウムシの越冬個体を探索し採集した.5施設の内,4施設でコンクリート片や木片の下にコクゾウムシを発見した.4施設で採集したコクゾウムシ成虫を玄米に投入して,25°C・70%RH・16L8Dの条件で40日後に調べると,次世代の成虫羽化が確認され,12月前半の個体は産卵能力があると考えられた.
著者
辻 英明
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.5-9, 2005-06-30 (Released:2019-04-10)
参考文献数
8

緑茶の残渣,メロンの皮,バナナ(皮を含む),梨果実の芯,柿果実(断片),ハムの薄切り切片(水添加)等を個別のカップに入れ,隙間のある窓際に9〜12日間置き,12日〜17日目に発生している小型のハエ類の成虫,蛹,幼虫の定性的な観察を1999年9月中下旬に行った.その結果,バナナ,梨,柿にはキイロショウジョウバエが多数発生したが,オオキモンノミバエはわずかしか発生しないか,あるいは全く発生しなかった.しかし,メロンの皮からはオオキモンノミバエの蛹の発生数がショウジョウバエより多かった.ハムからは圧倒的多数のオオキモンノミバエが発生し,ショウジョウバエはわずかであった.緑茶の残渣には多数の小型のチョウバエ類と若干のニセケバエ(ナガサキニセケバエ)とノミバエが発生した.小型のチョウバエ類とニセケバエは他の残渣には発生していなかった.
著者
中野 敬一
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.101-106, 2013-11-15 (Released:2019-04-10)
参考文献数
22

2011年6~12月に,東京都港区にある超高層ビルの公開空地と都市公園の樹木の樹洞において,粘着トラップによるゴキブリの捕獲調査を行った.両方の場所でクロゴキブリ成虫と幼虫が6~11月まで捕獲された.捕獲数における幼虫の比率は,公開空地では90.5%,公園樹木では73.7%であった.公園樹木ではヤマトゴキブリ成虫と幼虫も捕獲されたが,その捕獲数はクロゴキブリよりも少なかった.公開空地や公園緑地の植栽はクロゴキブリやヤマトゴキブリの生息環境として重要である.
著者
矢部 辰男 大友 忠男 原島 利光 重岡 弘 山口 健次郎
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.53-55, 2017

<p>横浜市中区の市街地で,2015~2017年の3年間(いずれも2月)に,屋外に生息するドブネズミについて,人獣共通感染症である広東住血線虫の寄生状況を調べた.広東住血線虫の検出可能な2カ月齢以上のドブネズミにおける寄生率は,2015年から2017年までの順に,2/41(4.9%),5/27(18.5%),6/21(28.6%)となり,2017年の値は2015年よりも有意に大きかった.</p>
著者
山内 健生
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.13-17, 2014-05-15

屋久島の原生的照葉樹林とその近隣のスギ人工林とで,Townes型マレーズトラップとIBOY式ウインドウトラップを用いてカミキリモドキ類を調査した.マレーズトラップでは5種61個体が捕獲された.個体数がもっとも多かったのはカトウカミキリモドキで,全個体数の53.6%を占めた.フタイロカミキリモドキがこれに次いだ(29.0%).オオサワカミキリモドキ,オキナワカミキリモドキ,ホソカミキリモドキは少数が採集されたのみであった.カトウカミキリモドキはスギ人工林で多くの個体が捕獲された.カトウカミキリモドキは3月下旬から7月下旬に捕獲され,性比は雌に偏っていた.ウインドウトラップではカトウカミキリモドキ8個体のみが捕獲され,性比は雄に偏っていた.
著者
小松 謙之 徳義 聡 栗田 知己
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.15-17, 2017-03-20 (Released:2018-04-14)
参考文献数
4

抗凝血剤を使用して防除を行った場合のクマネズミの死鼠発生場所を,ビル内の飲食店舗で調べた.2015年の店舗解体時には,厨房機器の裏で2個体,天井裏で1個体が発見された.これとは別に2007年から2015年における定期点検中に天井裏で5個体が発見された(この間に64個体が粘着シートで捕獲された).なお,この8年間に異臭や害虫の発生,あるいは中毒したネズミの徘徊による苦情はなかった.したがって,抗凝血剤による死鼠の多くは回収可能な天井裏で発見される傾向が見られた.
著者
谷川 力
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.29-30, 2010-05-31
著者
角野 智紀 齋藤 はるか 市岡 浩子
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.13-15, 2006
参考文献数
8

愛知県海部郡蟹江町の港湾地帯にある倉庫でトルキスタンゴキブリ<i>Blatta lateralis</i>の若虫と成虫が2005年6月から10月にかけて捕獲されたが,これは愛知県では初記録であった.本種の生態と生活史を考え合わせ,当該倉庫内に定着している可能性があると判断した.今後,空調が完備した建築物等での本種の繁殖および害虫化が危惧される.
著者
辻 英明
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.67-71, 2007-10-15

既報のアリーナ内実験では,タバコシバンムシ成虫は夕方から潜伏場所から出て20時過ぎに活動のピークを示し,5月には歩行によって暗い方向に移動する傾向があり,7〜8月には明暗差別なく歩行移動し,8月には明るい方向に飛翔移動する個体も多かった.今回,より広い空間で観察する目的で,540mm×360mm×高さ250mmの室内の中央で成虫とシェルターの入った放飼カップを設置開放し,周囲に設置した餌入りの捕獲カップ14個と,水または蜂蜜水を含んだ脱脂綿の入った捕獲カップ14個への侵入状況を調査し,床や壁に残された個体の回収も行った.2006年6月4〜5日(実験A)と16〜17日(実験B)の各一昼夜の実験の結果,周囲の容器への侵入は,人為的振動の多い放飼カップ設置直後を除けば,夕方から夜間にかけて多くみられた.放飼カップを離れた個体のうち,周囲の捕獲カップに侵入した個体の割合は実験Aで11%,実験Bで29%,捕獲カップ以外で翌朝回収できた個体は実験Aで13%,実験Bで8%,その他は行方不明であった.餌場以外での活動も多いことは既報のアリーナ実験と共通の結果と言える.侵入した捕獲カップの位置にはある程度の方向性があり,散光ガラス窓(南側)に対面する明るい白壁(北側)の方向は少なかった.むしろ散光ガラス窓の下の逆光となる壁側(南側)に侵入が多かった.餌入りカップと水入りカップが同数の実験Aでは,侵入した成虫のうち8%(=1/12)が水入りカップに侵入し,餌カップと蜂蜜水入りカップが同数の実験Bでは,20%(=4/20)が蜂蜜水入りカップに侵入した.成虫は幼虫の餌に産卵するためだけでなく,自身の栄養摂取や水分摂取のためにも移動侵入すると言える.