著者
前田 洋一 大野木 裕明
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.23-30, 1994-06-10 (Released:2018-05-08)

中学1年生351名(男子173名,女子178名)を対象に,教師作成テストと知能検査から得られるいくつかの知的指数の関連性を調べたところ,以下の結果を見いだした。(1)教師作成テストはB式知能偏差値よりA式知能偏差値との相関が高い。教科間で各偏差値との関連性を検討した結果,男子群で,B式知能偏差値と高い相関を示す教科として理科・数学が得られた。(2)知能検査から得られる知的指標の内,創造的思考を表す指標である[流暢性]と[柔軟性]について教師作成テストとの相関を検討した結果,これらの2指標と教師作成テストとの相関は著しく低かった。教科ごとに各知的指標との相関を検討した結果,女子群では[認知]との相関が高かった。(3)教師作成テストから教科の構造を見るためにクラスター分析を行った結果,男子群では中学校1年段階で理系教科と文系教科に分類することができるが,女子群では未分化であった。
著者
大野木 裕明
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.97-107, 2010-12-30

太宰治の小説「瘤取り」(『お伽草紙』所収)に現れる登場人物2名のキャラクターを心理学的方法によって把握するために、研究1では分析ツールとして「ジョハリの窓」理論を用いて作品中のキャラクター記述の箇所を分類整理した。研究2ではSD 法(5件法12尺度)を大学生男女合計181名に対して実施し、彼らが読後にイメージとして抱いた登場人物2名のプロフィールを検討した。
著者
大野木 裕明
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間生活学部篇 (ISSN:21853363)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.53-61, 2009-12-30
被引用文献数
1

親子間の心理的離乳に関して2つの研究を行った.研究1では親子間の心理的離乳と心理的距離の定義・測定方法を文献的に検討し次の結果を得た.1)心理的離乳と心理的距離は非常に似た概念として扱われ概念上の区別を明確にした研究は見出されなかった.2)心理的離乳の過程のうち自立や尊敬・軽蔑といった心理面を心理的距離の語によって表現する研究がいくつか見出された.研究2では女子青年301名に対して質問紙調査を実施し次のような結果を得た.3)親子間の呼称変化の時期は中学生かあるいは変化しないという2極化傾向にあった.4)呼称変化に関する自由記述から反抗期,お互いの照れ,対等の大人,他者の目・暗黙の圧力・世間体,気分・対人的スキル,間合い・距離感の6つの呼称変化の理由が得られた.5)心理的離乳に関する自由記述には,好意,嫌悪,親密,疎遠,尊敬,軽蔑,既知,未知,関心,無関心,依存,独立,信頼,不信などの語が多く書かれていた.これにより,西平(1990),落合(1995)らの心理学的離乳の仮説が,本調査の回答者の素朴な記述と概ね矛盾しないことが確認された.6)時間的距離(時間間隔),空間的距離,心理的距離の3側面について親子の距離感を5件法で尋ねたところ,3つの距離間には有意な正の相関が得られた.また,3つの距離得点ともに,父親よりも母親に対する距離の方が有意に近かった.