著者
高澤 まき子 猪股 恵美子 保井 明子
出版者
学校法人白百合学園 仙台白百合女子大学
雑誌
仙台白百合女子大学紀要 (ISSN:13427350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.79-94, 2002 (Released:2018-07-20)
被引用文献数
1

果実・種実類および魚介類の旬について女子大生の意識調査を行い,またそれらの出盛り期を市場調査し,あわせて検討し次のような結果を得た。(1)食品の旬のアンケート調査結果から,果実・種実類では,春の「イチゴ」,夏の「スイカ」,「メロン」,秋の「クリ」,「カキ」,「ギンナン」の正答率が高かった。また,魚介類では秋の「サンマ」が最も高い正答率であったが,無回答率20〜38%のものが多かった。(2)提示した食品を用いた料理の出現数の高かったものは,果実・種実類では「イヂゴ」,「リンゴ」,「クリ」,「ギンナン」,魚介類では「カツオ」,「カキ」,「サケ」,「サバ」,「サンマ」,「ブリ」であり,これらは比較的に句の無回答率の低いものであった。旬の正答率と料理出現総数との関係については魚介類において正の相関が認められた(r=0.501, p<0.05)。(3)仙台市中央卸売市場での取扱量を調査した結果,ほとんどの食品は出盛り期がはっきりしていたが,魚介類の「マダイ」,「マガレイ」,「ハマグリ」,「ニシン」,「アワビ」,「シジミ」において取扱量のピーク期と旬とした季節と異なっていた。市場取扱率と旬の回答率との関係は「スイカ」(r=0.974, p<0.05),「カキ」(r=0.996,p<0.01),「クリ」(r=0.999, p< 0.01),「サンマ」(y=0.952,p<0.05)において正の相関性が,「ハマグリ」(y=-0.981, p<0.05)において負の相関性が認められた。(4)季節に関わりなく摂取されている食品の出現率の高いものは,果実類では「バナナ」,「リンゴ」,「オレンジ」,魚介類では「サケ」,「マグロ」,「サンマ」があげられ,これらの魚介類は,取扱変動率が小さくいつでも購入が可能なものであった。特に「サケ」は,家計調査年報によっても,購入量が大きく増加していた。
著者
岩淵 せつ子
出版者
仙台白百合女子大学
雑誌
仙台白百合女子大学紀要 (ISSN:13427350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.69-78, 2002-01-31

市販の代表的な食用油脂13点および人気商品の油菓子とフライ食品から12点を購入し,平成12年現在,日常摂取している油脂の特色・動向について考察した。内部標準法によるガスクロ分析を行い,脂肪酸組成と各脂肪酸の定量値を求め,その結果を解析して以下の知見を得た。 )脂肪酸組成の結果から,食用油脂は飽和脂肪酸型,オレイン酸型,リノール酸型,α-リノレン酸型の4つのタイプに分けられた。ショートニングやマーガリンにMとPの比率が高く,ソフト化が確認された。量的に多く出回っている調合油(サラダ油)を除くと,現在,高オレイン酸型の商品(べにばな油,オリーブ油,なたね油)が多数を占めていた。従来型の高リノール酸型べにばな油は店頭から消え,長い閲読いた「リノール酸ブーム」は終わり,「リノール酸リツヂオイルがプレミアム」として珍重される時代へと,今,移り変わっていることが分かった。 n-6/n-3 の適正比率の観点からα-リノレン酸の摂取をもっと推奨すべきとの研究成果を反映して,バランスオイルやしそ油商品が市場に出始めたが,使い勝手の点で問題も多く今後の動向が注目される。2)油脂利用食品の脂肪酸組成を解析した結果,飽和脂肪酸比率(30〜50%)とオレイン酸比率(40〜50%)の高い点が特色としてあげられた。これらの食品は加工食品としての性格を持つため飽和脂肪酸比率を変えるのが難しいものと推察した。3)油脂利用食品1単位当たりの脂肪酸量(g/単位)を算出してみた。マックナゲットとマックポテトをセットで食べたり,ピーナッツを2個食べることはよくあることだが,その程度で1日の飽和脂肪酸プラスー価不飽和脂肪酸を併せた推奨値36gの1/2以上に相当することが分かった。今回とり上げた油脂利用食品12点は身近にある食品で日常的に食されている。この点を考慮すると,1回に食べる適正量を考え,多量摂取を避ける習慣を身につけることが健康面から大切であると結論された。本研究テーマは,仙台白百合女子大学人間学部人間生活学科健康栄養専攻の当時4年生だった岡田典子さん,児珠昭子さんおよび田母神純子さんの卒業研究として共に行ったことを記します。
著者
宮下 ひろみ
出版者
仙台白百合女子大学
雑誌
仙台白百合女子大学紀要 (ISSN:13427350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.117-123, 2002-01-31
被引用文献数
1

若年女性の調理可能なレパートリー調査をしていく過程において,比較的調理経験の浅い対象者にとって,料理の「できる」「できない」という実態または判断にはどんな要素がどのように関与するものなのか,検討の余地が残されている。ここでは,料理の難易度はどのような要因に起因するのか,難易度の基準となるものはどのようなことなのかを探ることを目的として,これまで調査票に取りあげた34種のうちご飯物の6品の料理についてその食材数と調理過程を詳しく分析することを試みた。結果はご飯ものの場合,食材数は赤飯の5食品を除き,おおよそ10食品前後が使用されていた。食材の数と調理操作数をみると,ちらし寿司のように食材の数,調理操作数共に多い料理もあれば,赤飯のように食材数が少なくても調理操作数が比較的多い料理もみられた。調理操作数が同じ29のチャーハンと赤飯でも学生の調理可能者数の割合には大きな差がみられた。今後の課題として,調理過程の分析にはそのもととなる調理過程を設定するにあたり,家電調理器の普及や市販のインスタント調味料類や加工品の使用状況を把握したり,共存する調理法を標準化していく必要がある。
著者
遠藤 弘美 目黒 美紀 宮地 洋子
出版者
仙台白百合女子大学
雑誌
仙台白百合女子大学紀要 (ISSN:13427350)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.133-140, 1999-01-29
被引用文献数
1

塩味嗜好と調味との関係を検討するため,本女子大学健康栄養専攻の学生52人を対象に調査した。その結果は次の通りである。1)食塩味覚検査を行った結果,0.6%濃度で知覚できたものが52人中50人(96.2%)で,味覚感受性が高いと考えられる。2)塩味に対する意識と感度には正の相関性(r=0.38,p<0.01)が得られ,塩味意識が「薄い」と認識している者はそうでない者と比べて塩味感度「鋭い」と認識している傾向が認められた。3)0.4〜1.2%の5試料の食塩濃度のうちすまし汁としてもっとも好まれだのは,0.8%濃度で22人(42.3%),ついで1.0%で19人(36.5%)であった。被検者が5試料に与えた順位の一致度はw=0.48(p<0.01)であり被検者の塩味嗜好に一致性が認められた。塩味意識との間に正の相関性(r = 0.45, p<0.01)が認められ,「薄い」味を意識している者は塩味嗜好においても薄い塩味を好むことが明らかになった。4)被検者に調味させたすまし汁の食塩濃度は0.67〜1.51%の範囲にあり,平均値は1.01土0.21%で,塩味嗜好濃度より高値を示した。 0.6〜0.9%のすまし汁として適塩範囲内に調味している者は21人(40.4%)であった。塩味意識との関係は「薄い」から「濃い」になるにしたがい,調製食塩濃度も高値を示し,両者間に正の相関性(r=0.29,p<0.05)が得られたが,塩味嗜好との間には相関関係は認められなかった。5)12種類の料理における塩味嗜好の結果,コンソメスープ及び茶碗蒸しにおいて有意差が得られ,塩味意識が「濃い」とする者が「薄い」「ふつう」より評点が高かった。料理の嗜好度では全ての料理が好まれ,塩味意識別に有意差がみられたのはスクランブルエッグ及びかぶときゅうりの即席漬であった。終わりに,官能検査にご協力下さいました本女子大学健康栄養専攻の学生の皆様に感謝いたします。なお,本報文の概要は,日本家政学会東北・北海道支部第43回大会において発表した。