- 著者
 
          - 
             
             上野山 怜子
             
             西川 俊夫
             
             宮崎 雅雄
             
          
 
          
          
          - 出版者
 
          - 公益社団法人 日本農芸化学会
 
          
          
          - 雑誌
 
          - 化学と生物 (ISSN:0453073X)
 
          
          
          - 巻号頁・発行日
 
          - vol.59, no.9, pp.435-440, 2021-09-01 (Released:2022-09-01)
 
          
          
          - 参考文献数
 
          - 20
 
          
          
        
        
        
        蚊は,人類の大敵である.蚊に吸血されると,かゆみが生じるだけでなく,生命を脅かすさまざまな伝染病,たとえば熱帯地域では,マラリアなどに感染する恐れもある.そこで人類は古くから植物からの抽出物を使って蚊を化学防御してきた.このような生存戦略をとった動物は,人類だけではない.たとえばオマキザルやハナジロハナグマなどの動物は柑橘類の果実の皮を身体に擦り付け,その忌避効果を利用していることが知られている(1).つまりヒト以外の動物も進化の過程で病原体を媒介する蚊から身を守る化学防御術を身に着けてきたようである.本稿では,ネコでよく知られたマタタビ反応も実は蚊の攻撃から身を守る重要な行動であるという予想外の知見が得られたので(2),この発見に至った経緯を紹介する.