著者
水野 均
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.273-294, 2004-12-31

『朝日新聞』は1970年における日米安保条約の延長問題について,「ベトナム戦争での米軍の在日基地使用や核持ち込み疑惑等,安保条約に対して世論の抱く不満を解消する」ことを条件に同条約を容認するという姿勢で臨んだ。具体的には,日本の対米軍支援が行き過ぎないように警鐘を発する一方で,世論や安保条約反対勢力には安保条約の廃棄を求めるような運動を沈静化するように務めた。これは,安保条約の自動延長及び1972年における沖縄の「核抜き・本土並み」返還をもたらすこととなった。しかし,「極東」の範囲,「事前協議」の対象,「非核三原則」の実効性等,安保条約上の問題は曖昧なまま残った。その結果,「日本が対米防衛を明示しないまま米国に対日防衛を依存する」という構造を残したまま,日米安保条約は期間と適用地域を延長することとなった。
著者
近藤 恭子
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.1-77, 2004-09-30

本論文は「日本はどのように西洋(特に英国,米国)のメディアによって報じられているか」に関する観察と分析である。娯楽用としか思えない歪曲,誇張された内容の記事が一流の高級紙の紙面をかざることを問題とする。そうしたソフト・ニュースを対象とした論文である。外国報道には様々な思惑としたたかな計算とがある。こういった記事が何故書かれるのか。どうしてその国の人々にとっての「娯楽」となり得るのか。そこに散りばめられているステレオタイプ・イメージはどういう歴史を持っていて,なぜ再生されて生き続けるのか。New Journalismと名付けられるこういったメディアの特徴を整理する。ここに登場する日本は外国が手に掲げる「歪んだ鏡」に写し出された日本である。日本はそれを放置すべきか,また何らかの手を講ずるべきか。

3 0 0 0 IR 奪われた王妃

著者
花田 文男
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.13-44, 2011-03
著者
花田 文男
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.17-38, 2004-12-31

殺害者がいると死体は血を流す,血を流して殺害者を告発することは中世人にとってはあり得べきことであった。古くから受け継がれた伝承,信仰であると同時に事実の認識であった。中世の歴史家はたびたびその事実を報告している。おそらく死者にも意思が存在するという信仰の名残りであろう。とりわけ非業の死をとげた者ほど強い意思,うらみが残った。このモチーフを文芸作品の中ではじめて用いたのは12世紀後半のクレチアン・ド・トロワである。『イヴァン(獅子の騎士)』では,イヴァンは致命傷を負わせた騎士を追ってかえって城の中に閉じこめられる。魔法の指輪によって姿の見えなくなったイヴァンの前を騎士の遺体が通ると,遺体から血が噴き出す。遺体から血が流れているのに,犯人が見当らないことに周囲の者は不思議に思う。作者がどこからこの想を得たかは不明にしても,殺害者が自ら殺した者の葬列の場に居合わせざるをえないという状況がこのモチーフを用いさせた動機となったのではなかろうか。彼の追随者たちは好んでこの主題を取り上げるが,師ほどの成功を収めることはなかったようだ。
著者
山内 真理/ STOUT Michael
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.83-100, 2012-09
被引用文献数
1
著者
河村 昌子
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.51-64, 2007-12

小品文の提唱者として中国文壇で成功を収めていた林語堂(1895-1976,Lin Yutang)は,英語読者向けに英語で中国文化と中国人の国民性を概説したMy Country and My People,New York:Reynal&Hitchcock,September 1935.によって,アメリカ出版界にその名を轟かせるようになった。林は多くのベストセラーを放ち,「一人の林語堂の存在が,数名の有能な外交使臣をもつことに数倍優る」と称されるほどの影響を欧米に与えた。林の著作は,同時代の日本でも注目を浴び,あいついで邦訳が出版された。林語堂の言論は,内的な深い思索の表出というより,ジャーナリスティックな効果を含みおいて展開されたものだと言える。そのため,林語堂の言論の文字通りの内容だけでなく,彼の言論が受け止められた諸相の方にも見るべきものがあると考えられる。そこで本稿では,林語堂の言論が受け止められた諸相の一ケースとして,戦前の日本における邦訳出版に注目し,林語堂の著作が戦時下の日本でどのように紹介され,林語堂の著作をめぐってどのような動きがあったかを検証した。
著者
相良 陽一郎 相良 麻里 サガラ ヨウイチロウ サガラ マリ Yoichiro SAGARA Mari SAGARA
雑誌
千葉商大紀要
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.37-59, 2006-03-31

本研究では,青年期前および青年期全般における自己愛と攻撃性の関係について横断的に検討するため,572名の小学生・中学生・高校生・大学生を対象に,NPI-SとBAQにより自己愛傾向と攻撃性を測定し,下位尺度を含めた両尺度間の相関を年齢群ごとに検討した。その結果,自己愛が高いと攻撃性も高くなるという,先行研究と一致した結果が得られたほか,これまであまり検討されていない発達的な側面についての知見も得ることができた。しかし新たな問題も見出されたため,今後検討すべき課題についても指摘した。
著者
杉浦 一雄
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.102-87, 2008-09
著者
水野 均 ミズノ ヒトシ Hitoshi MIZUNO
雑誌
千葉商大紀要
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.67-87, 2005-06-30

『朝日新聞』は1970年に日米安保条約が自動延長された後,「極東の範囲の明確化」や「事前協議制度の強化」等を,「日米安保条約を容認するための条件」として主張し続けた。しかし同紙は,それらを実現するための具体案を提示することはなかった。他方の日本政府は,「日本が安保条約で対米防衛義務を負わない代償としての対米便宜供与を続ける」形で日米安保条約を運用する方法を採り,同条約の自動延長が繰り返された。さらには世論のみならず,社会党等安保条約反対勢力の中からも,安保条約の「条件付き容認」論が提示されるようになった。しかし,その過程で日米両国間の防衛協力は,期限を延長したのみならず,適用範囲も日本の領域を越えて太平洋地域に拡大し,さらには部隊の共同作戦運用といった内容面でも強化されていった。それは日米安保条約が,「極東の範囲」や「事前協議」制度の対象及び拒否権に関わる曖昧さを残している以上,当然の帰結であった。
著者
中村 晃
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.1-19, 2003-12-31
被引用文献数
1

本研究では,千葉商科大学の学生の性格傾向の変化を,1980年代,1990年代,2000年代と年代を追って,YG性格テストにより性別および学科を考慮に入れ,検討することを目的とした。その結果,大学生の性格傾向は変化してきており,感情的な繊細さ,行動面における積極性のなさ,対人関係における消極性が増したことなどが,主な特徴として挙げられた。このような変化は,社会でよく語られる最近の若者の変化と一致する結果であったが,必ずしも否定的なものとは捉えられないことが示された。また一般に,女子学生の積極性と男子学生の消極性が対比されることが多いが,男女別に検討した結果,男女とも消極的な方向に変化していることが示された。また,学科別に検討した結果,年度ごとの学科間に一貫した性格的な傾向は認められなかった。これは,商学科,経済学科,経営学科はいずれも商経学部という単一の学部の中の学科であり,学ぶ授業に大きな差がないためであることが予想された。このように,全体として大学生の性格傾向は変化しており,今後の教育を考える上で,このような性格傾向の変化を考慮に入れた生徒への対応を考えていく必要性が示唆された。
著者
若林 明彦 ワカバヤシ アキヒコ Akihiko WAKABAYASHI
雑誌
千葉商大紀要
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.335-352, 2004-12-31

1960年代後半から1970年代にかけて環境問題に取り組む思想は人間中心主義から人間非中心主義,つまり環境主義へと転換した。後者には様々な思想が含まれるがその中でもアルネ・ネスが提唱したディープ・エコロジー運動は思想だけでなく実際の環境保護運動にも大きな影響を与えた。本稿は,ネスのディープ・エコロジーの概念及びそれを基礎づける彼の環境哲学を概観するものである。彼は,人間中心主義的なシャロー・エコロジーに対して生命圏中心主義,生態系中心主義としてのディープ・エコロジーの原則を,それがどのような思想を持つ者でも同意できる八項目のプラット.ホームとして提起する。そしてそのプラット・ホームがどのように究極的規範から合理的に導出され,どのように環境保護のための実践的規則へと合理的に展開されるかを示す「エプロン・ダイアグラム」という図を呈示することによって,ディープ・エコロジー運動がいかに根源的かを示す。また,プラット・ホームを導出する究極的規範は,同一のものである必要はなく,各自がそれを宗教や哲学に求めてもかまわないとされる。そこでネスは,「自己実現!」を究極的規範とする彼固有の環境哲学「エコソフィT」を展開する。それは,利己主義的な自己(self)の枠組みを突破して行き,最終的には生命圏全体を包括する自己(Self)にまで自己を拡大することを意味している。