著者
横山 俊治 水口 真一 藤田 勝代 嘉茂 美佐子 菊山 浩喜
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.30-39, 2002-06-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

本論文では, 花崗岩地域において水平地震動によって引き起こされる落石の発生場所や, 落下方向, 落下距離を予測する方法を考察した。多くの落石は, 地震動がおそらく増幅したと思われる尾根や遷急線近傍で発生した。地震被害は風化した岩石や割れ目の多い岩石よりも比較的新鮮で割れ目の乏しい岩石で大きかった。それで地震時落石の卓越する運動タイプは, 尾根上にあった花崗岩巨礫の転倒・転落と, 遷急線近傍に位置する新鮮な岩石が露出している崖で発生する節理で囲まれた岩塊の横跳び, 道路切土法面の頂部付近で発生する強風化花崗岩中の弱風化岩塊の横跳びであった。落下方向は震源断層に直交する傾向がある。道路切土法面から自由落下した落石の到達距離は落石発生場所の高さとほぼ等しくなる傾向がある。これらの特徴に基づいて, 花崗岩地域の地震時落石発生場所の選定ツールを提案した。
著者
古谷 尊彦 大倉 博
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.29-36, 1992
被引用文献数
2 2

The relationships between the differential erosion topography and the slope failures on the Mt. Kano-zan and its environs in the Boso peninsula, Japan have been discussed. The results are as follows.<BR>The geology consists of sedimentary rock formations can divided into two types. First one is sandstone rich formation type and the other type is mudstone rich formation. The former area is formed high relief, low slope angle and low valley density. The later is formed low relief, high slope angle and high valley density. It is considered that the main facter is based on the low potential of erosion derived from decreasing surface stream which caused on permeability of unconsolidated sandstone.<BR>The phenomena of slope failures are main agency of the processes beneath the surface layer on the mountain slope of the Kano-zan and its environs. The distribution of the slope failures are consolidated on the mountains which composed of low relief, high slope angle and valley density. This is very important phenomena of the main agency of the aifferetial erosion topography in the humid temperature area.
著者
山野井 徹
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.307-318, 2002-12-25
参考文献数
11
被引用文献数
3

道路開設によって現れた地すべり地の頭部の露頭の堆積物 (砂質層と黒土層) が解析された。地すべりが発生すると頭部のIII Aブロックには, その凹凸を埋めるように砂質層が堆積し, 平坦化されると黒土層が堆積した。それらの堆積物の荷重が次の地すべりを生むというサイクルが数次にわたりくり返されていた。このブロックの地すべりの進展は地すべり地全体が地形的な老年期化に向かう中で位置付けられた。こうした地すべり地の歴史的変遷の解明の上に予防対策について言及された。
著者
斎藤 豊
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.1-5, 1982
被引用文献数
1

The Obasute debris flow deposits, distributed in the Obasute area of Koshoku City, are produced by mass movements from older debris deposits. The older debris deposits form the depositional plane which ranges in altitude from 750 to 850 meters above sea level. Based on the stratigraphical relationship with the Omachi tephras distributed in this area, it is evidented that the age of older debris deposits is estimated as about 100, 000 years before present. The ages of the Obasute debris flow deposits were determined as 13, 500&plusmn;460 yr. B.P. and 3, 250&plusmn;260 yr. B.P. by radiocarbon dating. The fact indicates that the intermittent occurrences of twice mass movements are distinguished among the Obasute debris flow deposits.
著者
岡林 直英 栃木 省二 鈴木 堯士 中村 三郎 井上 公夫
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.3-10_1, 1978

1975年・1976年の台風5号ならびに17号時の豪雨に伴い, 高知県中央部では多数の土砂災害が発生した。この土砂災害について, 地形・地質条件, および2つの台風における降雨状況との関係について, 考察した結果を報告する
著者
山本 哲朗 瀬原 洋一 中森 克己 森岡 研三
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.41-50_1, 1997-12-15 (Released:2011-02-25)
参考文献数
16

山口県宇部市における三郡変成岩からなる丘陵地の斜面で発生した地すべりの特徴を明らかにするために, 地質学・岩石学・土質工学の立場から斜面の調査を行った。その結果, 斜面地盤は蛇紋岩のホルンフェルス, 透角閃石岩の破砕片と風化土が互層をなす透水性が比較的高いことが素因となり, また斜面末端部の切取りと豪雨が誘因となって, 地すべりが発生したと判断された。地すべり面の緑泥石からなる粘土の不撹乱試料の残留強度は, 通常の逆算法で求めた値と一致した。最後にスケンプトンの残留係数を用いてすべりの発生機構を考察した。
著者
福本 安正
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.30-37, 1995-03-15 (Released:2010-03-16)
参考文献数
67
被引用文献数
2

地すべりの対策技術と調査研究が戦前どのように創められ, どのような経過・発展を辿って終戦を迎えたかについての歴史の解明を試みた。地すべり災害の歴史は極めて古いが, 地すべり防止対策は200-300年前から始められた。また地すべりの調査研究は19世紀末から開始され, 最初は主として地質学者や砂防工学者によって発展してきた。しかし, 1930年ころから土質工学的調査・研究がなされはじめ, 地すべりの発生機構の解明がようやく科学的発展の端緒の段階で終戦となる。
著者
小林 芳正
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.30-38, 1980-06-30 (Released:2011-02-25)
参考文献数
23

The causes of the casualties in the off-Izu-Peninsula earthquake 1974, the near-Izu-Oshima earthquake 1978 and the off-Miyagi-Prefecture earthquake 1978 are investigated and it revealed that the importance of slope hazards has increased remarkably in recent times. Slope hazards classified into those in cuts and fills for hig hways, those in newly developed residential lands and those in almost natural slopes are discussed. It is poin ted out that a more careful planning and designing is desirable not to increase hazard potential unreasonably, and also that an administrative control is necessary in locating various projects or in other respects where technical improvement at present is difficult. Further progress in recognizing slopes with high hazard potential is desirable for minimizing hazards in natural-slopes.
著者
亀井 健史 榎本 雅夫
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.10-16, 1996-09-15
参考文献数
12
被引用文献数
3

地すべり発生のメカニズムに関しては, すべり面に作用している間隙水圧の上昇がその主要因の一つとして考えられており, 地すべり斜面の安定性を検討する際には, 斜面内の間隙水圧を定量的に把握することが重要となる。このことから, 本研究では降雨および斜面上流から流れ込む地下水が斜面内の間隙水圧変動に与える影響を調べるため, 砂および粘性土から構成される四つのモデル斜面を対象に飽和-不飽和浸透流解析を行った。その結果, 斜面の土性および地層構成, 降雨量, 上流側方からの地下水流入量が斜面内の間隙水圧挙動に与える影響を定量的な観点から検討している。
著者
森脇 寛
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.115-122, 2001-09-25
参考文献数
11
被引用文献数
5 5

新しく滑動し始めた地すべり斜面の崩壊危険度を評価するための指標として主滑落崖における地表面移動量に着目し, その有効性を検討した。降雨装置を用いた崩壊実験により, 地表面移動量がある限界を越えると崩壊を生じる, つまり限界移動量の存在を明らかにした。次に, 既往の崩壊実験ならびに現地観測資料を用いて, 崩壊に至るまでの限界移動量を解析し, 限界移動量は崩壊源の斜面長に比例すること, ならびに限界移動量を崩壊斜面長で除した限界ヒズミはおよそ0.006~0.02の範囲に収まることを明らかにした。この限界ヒズミの範囲をもとに, 現場斜面における地表面のヒズミが0.003以下を前兆領域, 0.003~0.006の範囲を警戒領域, 0.006~0.02の範囲を破壊領域, 0.02以上を完全破壊領域として4つに区分けし, 危険度評価を行う手法を提案した。次いで, この指標を用いた現地地すべり事例への応用例をいくつか示した。また, 過去に滑動した形跡を示す地すべり地形の評価にも有効であることを示した。
著者
JIAN LI
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.15-17, 1985-06-15 (Released:2010-03-16)
著者
川原谷 浩 松田 英裕 松葉谷 治
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.48-55, 1999-03-15
被引用文献数
7 8

地すべりが活動する誘因の1つに地すべり崩積土中の間隙水圧の増加が挙げられる。間隙水圧の増加は集中豪雨や融雪水などに起因する場合が多く, 降雨 (雪) 水の地下への浸透や地下水との混合のプロセスを解明することは, 地すべりの防止や予知に重要な情報を提供することが期待される。本論文では様々な水の挙動を把握するために有効な追跡子である酸素・水素安定同位体比を用い, 降水が地下に浸透し涵養域に至るまでの過程を検討した。<br>調査地域として, 地質状況が把握され, 水抜き用集水井が数多く設置されている秋田県・谷地地すべりを選び, 集水井から排水される地下水や周辺の地表水の同位体比を測定した。その結果, 集水井ごとに岡位体比の変化幅がそれぞれ異なることが判明した。このことは降水が地下に浸透してからの地質状況や浸透距離 (時聞) を反映しているものと推定される。そこで降水の季節変動を利用したモデル計算で平均滞留時間を試算したところ, 短期間の地下水で2ヶ月程度, 長期間の地下水で1年程度で流入から排水に至ることが判明した。