著者
藤田 勝代 横山 俊治
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.Supplement, pp.S89-S107, 2009 (Released:2012-01-26)
参考文献数
46
被引用文献数
1 2

多くの風化花崗岩には,ミリメートルオーダー間隔のクラック群であるラミネーションシーティングが発達し,ラミネーションシーティングに取り囲まれた未風化核岩がしばしば分布している.ラミネーションシーティングは地形・構造(節理)・岩石(岩相)・鉱物と,スケールの異なる因子に規制されて形成されている.本見学会では,ラミネーションシーティングと未風化核岩を観察し,これらの規制因子について議論する.小豆島には大坂城改築城時の丁場跡が多数点在し,矢孔で穿かれた種石や切石(残石)が散在する.風化花崗岩の地質・岩石構造と地形の観点から,当時の採石の立地条件と方法について観察し,当時の石工道具や運搬用具をみなとオアシス大坂城残石記念公園で見学する.また,現在稼業している小豆島石の採石丁場で石工職人から石目と石割りの方法について伺う.
著者
横山 俊治 水口 真一 藤田 勝代 嘉茂 美佐子 菊山 浩喜
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.30-39, 2002-06-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

本論文では, 花崗岩地域において水平地震動によって引き起こされる落石の発生場所や, 落下方向, 落下距離を予測する方法を考察した。多くの落石は, 地震動がおそらく増幅したと思われる尾根や遷急線近傍で発生した。地震被害は風化した岩石や割れ目の多い岩石よりも比較的新鮮で割れ目の乏しい岩石で大きかった。それで地震時落石の卓越する運動タイプは, 尾根上にあった花崗岩巨礫の転倒・転落と, 遷急線近傍に位置する新鮮な岩石が露出している崖で発生する節理で囲まれた岩塊の横跳び, 道路切土法面の頂部付近で発生する強風化花崗岩中の弱風化岩塊の横跳びであった。落下方向は震源断層に直交する傾向がある。道路切土法面から自由落下した落石の到達距離は落石発生場所の高さとほぼ等しくなる傾向がある。これらの特徴に基づいて, 花崗岩地域の地震時落石発生場所の選定ツールを提案した。
著者
横山 俊治 柏木 健司
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

四国山地では付加体の硬岩が滑っている.四国山地の尾根は、至る所で、約100年に一度発生する南海地震によって裂けている.この裂け目に流れ込んだ雨水が特定の岩相の地層を劣化させ、劣化した地層には初生地すべりのすべり面が醸成されていく.付加体地すべりは尾根の裂け目から滑り出し、地すべり末端の侵食がなくても滑動を続ける.
著者
諏訪 浩 齊藤 隆志 横山 俊治 高谷 精二 高谷 精二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、地震や豪雨によって起こる崩壊や土石流が、河川を閉塞して地すべりダムを形成する条件と決壊に至る条件、ならびにそのメカニズムを検討するために、崩壊や土石流が発生した現地の地形・地質を調査分析し、採取した土試料の分析、空中写真や地形図、数値標高モデルを用いた水文地形解析、ビデオ映像記録や地盤振動データの解析などをおこなった.その結果、崩壊位置の特定方法、地質構造が崩壊の素因として果たす役割、崩土の材料特性と運動特性の関与、河川形状の特異性と地質の違いが地すべりダム形成・決壊に果たす役割とメカニズムについて、斬新な知見をもたらした.
著者
横山 俊治 村井 政徳 中屋 志郎 西山 賢一 大岡 和俊 中野 浩
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.S137-S151, 2006
被引用文献数
3 1

小出(1955)の定義による破砕帯地すべりは今日の知識からすれば付加体分布地域で多発している.破砕帯地すべりは地すべり性崩壊であると小出(1955)が記述しているように,崩壊時に破壊された地すべり移動体は山津波となって谷を流下し,しばしば末端では河川を堰き止める.見学地である阿津江の事例には,このような破砕帯地すべりの特徴がくまなく現れている.<br>見学は末端部から発生域へと進めていこう.末端部では,坂州木頭川渡った山津波が対岸の斜面を50 mほどの高さまで乗り上げている.ここでは,山津波の流れを記録する樹木に刻まれた流下痕跡を観察し,一旦は斜面に乗り上げた土砂や構造物の大部分を洗い流した強い引きの流れの存在,山津波の一部が坂州木頭川を跳び越えている状況を確認する.発生域では,崩壊頭部のクラック群・緊張した樹根,崩壊壁の地質を,発生源の谷底では新旧の土石流堆積物,破砕帯,断層を観察する.<br>