著者
田中 道弘 滝沢 真智子 Michihiro TANAKA Machiko TAKIZAWA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.341-346, 2010-12-01

人間は、過去、現在、未来という時間軸とその広がりの中で、自己を捉えることが可能である。さらに、過去や現在、未来をいかに捉えるかによって、自己評価や将来展望などが変化する。これまでの時間的展望に関する研究では、主に現在から未来に視点を向けた研究が中心であり、過去に対する視点の研究が少なかった。その一方で、過去のとらえ方と精神的健康との関係では、主に自己受容に関する研究から行われてきた。しかし、人間は、自分の過去についてすべて自己受容できなくとも、人は前向きに生きることができるのではないだろうか。また、過去の自分の至らない点を振り返りながら、現在の自分とを比較することで、自己成長を認識することもあるだろう。そこで、本研究では、過去に対する自己肯定感尺度の開発を試みることにした。その結果、過去に対する自己肯定感尺度は、主成分分析から1因子構造にまとまり、α=.829 と高い信頼性が確認された。時間的展望体験尺度との関係からは、基準関連妥当性も確認され、概ね実用可能であると判断された。
著者
上野 昌之 Masayuki UENO
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.231-243, 2012-12-01

消滅の危機に瀕する言語といわれるアイヌ語は、近年アイヌ復興の動きの中でニーズも増えてはおり、学習者も増加はしている。しかし、アイヌ語の復興再生を想定した時、残念ながら現状では目に見えた成果が上がっているとは言い難い。 そこで本論では、アイヌ民族の人々にとってアイヌ語とはどのような意味をもつ言語であるのかという視点から、彼らのアイヌ語への意識を探るとともに、近年の北海道の動向を踏まえて、アイヌ語学習の可能性を求めていくことにする。そこではアイヌ語を民族言語としてのみ考えるのではなく、日本の文化的財産としてとらえる多文化教育的な視点も考慮していく。そして、アイヌ語を日本における先住民族の言語としてとらえたとき、どのように位置づけ発展させていったらよいのか、近年採択された先住民族の権利に関する国際連合宣言を踏まえて、先住民族の言語権という視点からも考察していきたい。
著者
古澤 照幸 小野寺 孝義 Teruyuki FURUSAWA Takayoshi ONODERA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.11-19, 2002-12-01

This article was discussed on the orientation to martial arts of young people.These martial arts that women wanted to learn mostly were karate or aikido. This is bipolar orientation. For example, it is hard or soft. Overall, people who wanted tolearn "kick and punch" type martial arts were more than "wrestle" type. About TV viewing, people watched more TV program of "kick and punch" type martial arts than "wrestle" type. Positive correlations were obtained between sensation seeking and the amount of TV viewing, and more between sensation seeking and interest in martialarts. These correlations show "risk taking" factor about martial arts. Referring tothese results, we intend to develop scales about martial arts.
著者
布村 育子 Ikuko NUNOMURA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.77-89, 2015-12-01

2015年6月、選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が公布された。この動きに連動する格好で、高等学校教育における生徒の政治的教養のあり方に関して、「政治の解禁」と「政治の抑制」との二つの相反する動きが存在している。近い将来、現場の具体的な個別の教育実践に関して、事件化や問題化される事例が生じてしまう可能性を否定できない。こした事件化や問題化をどう考えたらよいのだろうか。本稿では、まず教育公務員の政治的行為と政治教育に関する法制度の仕組みを確認する(第2節)。そのうえで、今後予想される事態の先行事例といえる1954(昭和29)年の教育二法の成立時の経緯を掘り下げて、ある性格をもった物語化の機制がそこで働いていたことを示す(第3節)。そこでの知見をふまえて、第4節では現在の政治教育解禁/抑制の動きを考察し(第4節)、近い将来に起こるかもしれない「事件化/問題化」をどう考えるべきかについて論じる(まとめ)。
著者
服藤 早苗 Sanae FUKUTO
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.342(27)-327(42), 2011-12-01

十世紀から十二世紀にかけて、新嘗祭・大嘗祭に舞った五節舞姫で名前や出自がわかる44人を検討した。十世紀初期は公卿層でも実子を舞姫に献上していたこと、十世紀から十一世紀中頃にかけて現存の受領層女が公卿層の舞姫になっていたこと、殿上五節舞姫は十世紀後半以降も実女の可能性が高い事、十一世紀中期以降は、大嘗祭献上舞姫叙爵が実際に行われた事、十二世紀には公卿献上者の高位の親族や近臣女性が舞姫になっていたこと、等を指摘した。
著者
若宮 由美 Yumi WAKAMIYA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.151-163, 2015-12-01

The piano socre of a potpourri based on Abert’s opera “Astorga” that was arranged by Josef Strauss was published as No.105 of the series named ‘Anthologie Musicale’ by the Viennese publisher C.A. Spina. The original German opera “Astorga” by J.J. Abert was premiered in Stuttgart on May 27, 1866, and was performed in Vienna on July 30, 1870. This opera was praised in Germany, but wasn't accepted in Vienna. Although Josef Strauss with the Strauss-Orchestre performed fragments from “Astorga” on June 18 and 21, 1867 in Viennese Volksgarten, there is no evidence that Josef’s potpourri based on “Astorga” was played. The potpourri was constructed by motifs of six numbers in the first and second acts of the opera, and the motifs from third act were not citied. It is unclear why did Josef Strauss arrange this potpourri, and the publication process of this potpourri was very peculiar in the series of ‘Anthologie Musicale’ which handled popular and famous works.
著者
伊野 連 Ren INO
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.15-28, 2020-12-01

ハイゼンベルクは、弟子フォン・ヴァイツゼッカーらと、様々な哲学的議論をおこなっている。晩年の対話篇的著書『部分と全体』(1969)から、プラトンおよびカントについての興味深い討論を検証してみる。