著者
小田桐 忍 オダギリ シノブ Shinobu Odagiri
雑誌
実践女子短期大学紀要
巻号頁・発行日
vol.32, pp.49-59, 2011-03-20

法哲学者は教育学者の仕事に不案内である。従って、筆者の尾高朝雄をめぐる評価(以下「尾高論」という)も、これまでは法哲学者としての側面のみに注目し、検討を進めてきた観を否めない。ところが、教育学の世界に目を転ずると、そこには、文部省著作教科書『民主主義』の筆者に携わった尾高を取り上げる、もうひとつの尾高論が存在したのである。小論の目的は、そうした理論状況を受けて、一方に与して、他方を排するという方法に陥ることなく、尾高という学究について総合的立体的に考察することの意義を明確にすると同時に、これからの尾高論の進むべき途を開拓することに存する。
著者
飯野 智子 イイノ トモコ Tomoko Iino
雑誌
実践女子短期大学紀要
巻号頁・発行日
vol.31, pp.59-76, 2010-03-20

セクシュアリティ表現と商品化の場においては、長らく女性が商品であり男性が消費者であったが、女性のためのセクシュアリティ文化も近年広がりを見せている。ボーイズラブコミックやレディスコミック、バトラーズカフェ等のポップカルチャーや、キャバクラ、ホストクラブといった性が商品化される場において、男女のセクシュアリティ表現にどのようなジェンダー差、非対称性が表れるのか。仮構の世界に求められる恋愛と性の検証を通して、セクシュアリティ文化におけるジェンダー構造を分析する。
著者
大竹 智
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.125-140, 2010-03-20

ファミリー・グループ・カンファレンス(FGC)は1989年NZで開発された。このFGCは、要養護児童の処遇を決定する上で、家族参画が最も具現化されたシステムとして、オセアニア、ヨーロッパ、北米、アジアの一部の国などから注目され、導入されている。そこで、わが国への導入に向けて、NZでの現状と課題を把握した結果、FGCの開催を法的に位置づけること、財源を確保すること、司法との連携が重要であることが明らかになった。
著者
越野 由香 コシノ ユカ Yuka Koshino
雑誌
実践女子短期大学紀要
巻号頁・発行日
vol.31, pp.49-58, 2010-03-20

自律神経機能の調整手段としてのマッサージの効果について、近年の調査研究を再考した。その結果、発達障がいをもつ子ども達にとってマッサージは、1)自立神経の調整に役立ち、さらに攻撃的行動や対人関係に変化をもたらす、2)親(身近な大人)との情緒的絆を築く助けとなり、触れられることに耐えるといった基本的な自己コントロールの力をもたらす、ことが示された。そのことから、触れられる体験の必要性および緊張(警戒状態)からの回復という点で、発達障害を抱える子ども達に対する早期からの足裏マッサージは有効と考えられた。
著者
藤原 正道
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.59-68, 2013-03-19

本論の目的は、主観的事態把握と客観的事態把握を基本に、人称代名詞を明示しない場合の英語と日本語の丁寧表現について分析することである。英語と日本語の事態把握の違いが、丁寧表現にも反映されていること、話し手と聞き手と事態との位置関係の重要性、そして主語や目的語を表さないことによって、なぜ丁寧さを表せるのか、さらに日本話者はなぜ聞き手に対して様々な呼称を用いるのかを明らかにしている。
著者
今 防人
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.91-102, 2011-03-20
著者
薗田 碩哉
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.21-34, 2010-03-20

現在の日本社会の特徴はコミュニティの衰退にある。それは不揃いな街並みを見れば一目瞭然であり、近隣関係の貧弱さや地域の教育力、福祉力の低下となって現れている。それはまた、子どもたちの社会化を妨げ、独居老人の孤独死をもたらしている。これからの課題はコミュニティ意識を取り戻し、それを基盤に地域の商業や文化活動やレクリエーションの活性化を図ることである。そのために大学が果たす役割も決して無視できない。短大や地域での筆者の活動を踏まえながら、これからの社会でコミュニティの果たす役割を検討する。
著者
越後 敬子
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.1-12, 2012-03-19

幕末の大通細木香以は、戯作者や狂歌師、俳諧師、商家の主人、幇間などを多くの取巻連を引き連れて、花街に芝居にと派手な遊びにうつつを抜かした。俳諧師其角堂永機もその一人で、豪勢な遊びに随行し、金銭的な援助を受けてきた。香以を取り巻く人的ネットワークは、のちの永機に多大な影響を与え、「明治最後の大宗匠」と称されるほどの華やかな人脈を作り出したのである。
著者
大塚 みさ
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.13-20, 2010-03-20

語の多義性の下位分類としてCruse(2000他)が提唱するmicrosensesに注目し、「長い単位」の適用とコーパスデータの利用によってその本質をとらえ直すことを試みた。microsensesの代表例とされるknifeとcardについて、microsensesとしての典型例に限らず、他の用法も含めた全体を分析対象としてコーパス分析を行った結果、microsenses以外の用法においては語彙的なパターン(collocation)が、またmicrosensesでは統合的なパターン(colligation)が、読みを決定づける要素として有効に機能する傾向が認められた。