著者
田村 哲樹
出版者
山形大学法学会
雑誌
山形大学法政論叢
巻号頁・発行日
vol.76/77, pp.187-223, 2023-03-31
著者
山内 進
出版者
山形大学法学会
雑誌
山形大学法政論叢
巻号頁・発行日
no.54, pp.95-127, 2012
著者
今野 健一 高橋 早苗
出版者
山形大学法学会
雑誌
山形大学法政論叢 = Yamagata University the journal of law and politics
巻号頁・発行日
no.31, pp.47-66, 2004-08-31

はじめに 日本における個人のセキュリティ確保は、ここ数年のうちで犯罪・治安問題が急速に社会問題化したことにより(「安全神話」の崩壊)、政策課題としての重要性を増しつつある。一方、欧米諸国は、日本とは異なって、すでに過去数十年にわたる深刻な犯罪・治安問題を経験しており、その克服のため、旧来の刑事司法の施策の枠を超え、包括的な取り組みが行われてきた。我々の研究の目的は、このような欧米諸国のセキュリティ問題につき比較検討を行うことである。その第一段階として、イギリスとフランスの基礎的な研究に着手し、その成果を別の論文で発表している。そこで示唆したのは、イギリス・フランスでも、その具体的な犯罪統制の態様にニュアンスの差異があるとしても、いかに犯罪問題に対応するかが重要な政治的アジェンダであり続けていると同時に、公的・私的な多様な対応には多くの問題が含まれている、ということである。今回取り上げるアメリカも例外ではない。アメリカは、犯罪の常態化にあえぐ社会の代表的な例である。本論文では、次のように検討を進める。まず、アメリカにおける犯罪の動向とそれに対応する刑事政策の概略、および一般市民の犯罪リスクを明らかにする。次に、市民の犯罪恐怖の上昇と、それをと伴う私的なセキュリティの興隆の状況を取り上げる。第3に、市民の安全確保に関わる警察活動の動向を歴史的に概観した後、代表的なポリシングの形態を素材に、それらの意義と問題点を検討する。
著者
松本 邦彦
出版者
山形大学法学会
雑誌
山形大学法政論叢 = Yamagata University, the journal of law and politics
巻号頁・発行日
no.33, pp.35-73, 2005

はじめに 2004年4月にイラクでおきた国際協力活動家の高遠莱穂子氏と今井紀明氏、ジャーナリストの郡山総一郎氏ら日本人3人の「人質事件」では、被害者とその家族に対して一部の政治家とメディアから集中的に批判・非難がおこなわれた。これについては、「在外邦人保護」をめぐる法的側面から、日本社会論について、またその重要な舞台の一つとなったインターネットについて、など各方面から分析・考察がおこなわれている。この「イラク人質事件」においては「自己責任」論が脚光を浴びたが、国際協力活動にたずさわる当のNGOの側がこの事件をどう受け止めていたかに着目すると、そこには単純な責任の有無ではとらえきれない状況が見受けられるように思われる。本稿は、「イラク人質事件」をめぐる言説について、被害者たちがおこなおうとしていた活動の側面つまり「NGO」「ボランティア」「国際協力」等の側面から整理をおこなうものである。なお文中で引用・参照する文献については、単行本は著者名・発行年『書名の一部』、新聞・雑誌記事は筆者名・掲載誌の発行年「記事名の一部」のような略号で示し、末尾に文献リストを付した。
著者
今野 健一 高橋 早苗
出版者
山形大学法学会
雑誌
山形大学法政論叢
巻号頁・発行日
no.28, pp.88-69, 2003

はじめに 人々は、様々な不安や悩みを抱えながら、日々を暮らしている。病気や事故、失業、貧困、災害、犯罪などに見舞われるという事態は、程度の差はあるにせよ、誰にでも起こりうることである。そうした諸々の脅威から完全に解放されることが不可能であるならば、如何にしてそのリスクを回避しまたは小さくしていくのかが、問われなければならない。20世紀の社会国家・福祉国家は、人間の尊厳に値する生存を人々に「権利」として保障し、その役割を果たすべく各種の法制度を細密に整備してきた。それが、多様なリスクに囲まれた市民個々の生存への配慮を礼会的に行うシステムとしての「社会保障」(SocialSecurity)である。しかし、1990年代から顕著になった経済のグローバル化(globalization)と、それに寄り添う新自由主義が世界を席捲するなかで、日本においても、福祉国家のシステムとその理念は危殆に瀕している。その反作用として、社会的な保護を削り取られた人々は、失業や貧困、病気などの脅威に否応なしに直面させられる。また、グローバル化と新自由主義的政策の展開は、家族や職場、地域など既存の社会的ネットワークを解体しつつある。こうして、社会的・経済的格差の増大と、人々を保護してきた社会的紐帯の弱体化は、人々の間でますます大きな不安感を生み出している。特に見逃せないのは、社会的逸脱としての犯罪事象の増加という現象であり、日本の「安全神話」のゆらぎは、今や何人の目にも明らかになってきている。我々は前稿で、犯罪のリスクが個人のセキュリティ(またはインセキュリティの感情)に如何なる影響を与えているか、個人のセキュリティ確保のために欧米資本主義諸国で如何なる対応が採られているのかを簡略に俯瞰し、その時点での我々なりの見取り図を示した。我々の研究は、日本における犯罪のリスクに対する市民意識の変化のありように着目し、今後さらに予想される個人のセキュリティ要求の高まりを睨んで、現代の日本社会に相応しい個人のセキュリティ確保のありようを見定めることを、最終の目標としている。その目標に至る道筋として、既に個人のセキュリティの問題が社会的に広く認知され、政治的にも重要な争点を形成するに至っている欧米諸国の動向を把握する作業が不可欠となる。本論文では、前稿で示した見取り図を背景としつつ、対照的な法・政治的伝統を有するイギリスとフランスを具体の考察の対象とする。検討の手順は次のとおりである。まず、犯罪率と犯罪恐怖がセキュリティに対する政治と市民の対応に如何なる影響を及ぼすものであるかを明らかにする。次に、警察などの公的部門によるセキュリティ供給の動向を概観し比較を試みる。第3に、イギリスを素材に、非国家的なセキュリティ供給の態様・特徴・問題点を検討する。その上で、昂進するセキュリティの商品化が挙む問題点を明らかにする。