著者
三上 喜貴
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.271-274, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
2

インターネットという情報の巨大な伝送装置を得,おびただしい量の情報に囲まれることになった現代。実体をもつものの価値や実在するもの同士の交流のありようにも,これまで世界が経験したことのない変化が訪れている。本連載では哲学,デジタル・デバイド,サイバーフィジカルなどの諸観点からこのテーマをとらえることを試みたい。「情報」の本質を再定義し,情報を送ることや受けることの意味,情報を伝える「言葉」の役割や受け手としてのリテラシーについて再考する。第2回は各言語のWeb上におけるプレゼンスを計測する「言語天文台」の構想について,言語間デジタル・デバイドについて,情報伝達における「母国語」の役割と多言語社会について考える。
著者
堀 浩一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.250-258, 2015
被引用文献数
3

人工知能の研究が再び注目を集めるようになっている。人工知能の能力が人間を完全に超えてしまう技術的特異点に関する議論も盛んになってきている。人々が人工知能に対して抱く不安も高まってきているように見受けられる。本稿では,人工知能がどのように進歩する可能性があるかではなく,人工知能をどのように進歩させたいかという問題について議論する。抽象的な不安に対して抽象的な回答を返すのではなく,人工知能を今後どのように作っていくかという設計の指針をいくつか提示することを試みる。
著者
小澤 岳昌
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.37-42, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)

日本分析化学会発行の国際分析化学論文誌である『Analytical Sciences』は,1985年に創刊された英文月刊誌であり,年200~300報の分析化学に関する科学技術論文を世界に発信してきた。2001年以来,本誌は完全なオープンアクセス誌として,誰もが自由に閲覧できるシステムを採用している。本稿では,本誌の情報発信強化戦略として取り組んでいるジャーナル内容の基盤強化,編集委員と学会事務局の協働的取り組み,そして国際分析化学誌との連携による強化策について概説する。
著者
岩澤 由子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.449-456, 2016-10-01 (Released:2016-10-01)
参考文献数
9

近年,医療ビッグデータの利活用が期待されているが,看護に関するデータ収集の取り組みは始まったばかりである。日本看護協会では労働環境の整備と看護の質向上を目指し,2012年度より「労働と看護の質向上のためのデータベース(Database for improvement of Nursing Quality and Labor:DiNQL,ディンクル)事業」に取り組んでいる。本事業は看護の質と労働環境のベンチマーク評価を通じて,看護管理者のデータマネジメントを支援するもので,2016年度は583病院4,964病棟が参加している。看護に関するデータが,月単位かつ病棟単位で組織横断的に集約されているデータベースとしては国内最大規模である。本稿では,本事業の背景を概観したうえで,本事業の取り組みと意義を紹介し,最後に課題と今後の展望を示す。
著者
原田 洋平
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.359-365, 2016-09-01 (Released:2016-09-01)
参考文献数
4

国土交通省では,高齢者や障害者,訪日外国人を含めたあらゆる人がストレスなく自由に活動できるユニバーサル社会の構築に向けて,ICTを活用した歩行者移動支援サービスの普及に取り組んでいる。2020年を念頭に,歩行者の移動に必要なデータをオープンデータ化するための環境を整え,利用者のニーズに合致した多様なサービスがさまざまな主体から提供されるよう取り組みを進めている。
著者
細川 聖二
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.156-164, 2016

電子ジャーナルの安定的利用と長期的保存に対応するため,世界中の図書館や出版社がさまざまなアーカイブ・プロジェクトに取り組んでいる。本稿では,グローバルなダーク・アーカイブの代表的な事例として,学術コミュニティー(大学図書館,出版社)による共同運営事業であるCLOCKSSについて,どのような仕組みでアーカイブを実現しているのか,その概要を説明するとともに,日本において国立情報学研究所や大学図書館がCLOCKSSに参加し,電子ジャーナル等の長期的保存の一翼を担うに至った経緯について紹介する。
著者
高木 善幸
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.218-225, 2016-06-01 (Released:2016-07-01)
参考文献数
1

知的財産情報管理は世界知的所有権機関(WIPO)の戦略4本柱,新条約作成,グローバル保護登録サービスの提供,技術援助と人材養成,グローバルインフラの構築に反映されている。情報管理のためのシステムはプラットフォーム構築を中心に推進され,国際登録・出願のためのPCTやマドリッド制度の生み出す知財情報を流通させるシステムやネットワークとともに,途上国のデジタル情報作成普及のためのIPASや先進国特許審査国際協力のためのCASEなどのWIPOの新しいプラットフォームが,多国間の知財情報シェア・流通のための基盤として利用され,国際条約を補完する国際調和の推進力として期待されている。
著者
吉田 耕一郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.113-122, 2016

朝日新聞フォトアーカイブは2010年に発足した。朝日新聞社が所蔵する明治時代以降の歴史的な写真(ネガ,紙焼き,ガラス乾板など)約2,000万枚をデジタル化する作業を進め,最新のデジタル写真と合わせて約240万枚をWeb上で公開している。デジタル化に当たっては,写真の裏面のメモなどを頼りに書誌を確認するのが難題で,手間と時間がかかる。写真の書誌情報(見出し,写真説明,撮影場所,撮影日)に補助キーワードなどを加えることで,利用者の写真検索を容易にしている。Webサイトは2014年に大幅改修し,検索のためのオプションや提示型の特集機能の充実を図った。朝日新聞フォトアーカイブに登録されている写真は,教科書・教材やテレビ番組,書籍・雑誌,企業の社史などに多方面で利用されている。動画の取り組みも強化している。著作権の保護期間が満了した写真の扱いは大きな課題だ。朝日新聞フォトアーカイブでは,古い写真を死蔵することなく広く活用してもらうために,積極的に公開している。その際,データ提供料として適正な利用料金を頂く方針で,利用規約を整備した。近現代史を生き生きと伝える貴重な歴史写真を多くの人に見てもらうことは,新聞社の役割の一つだと考えている。