著者
細萱 敦
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.683-690, 1993

日本語で「漫画」というと,政治や社会を風刺するポンチ絵のようなものから劇画までその表わすところは多様であり,その出版部数は諸外国に例を見ないほど他のジャンルを圧倒している。また,そのうちの多くの作品が,テレビや映画でアニメーション化されたり,実写ドラマ化されている。これらの作品の特質,主題,読者や他の作家への影響を研究する場合,作品を映像的に分析することは有効な1方法といえる。川崎市民ミュージアムの漫画部門は,元々漫画の美術館としてのみ発想されたものではあるが,こうした漫画に関する研究を行っていくには,美術館の機能に加え,画像データベースシステムなどを備えた図書館的機能が必要となっている。
著者
安岡 孝一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.487-495, 2005

日本の漢字情報処理における難題のひとつに,異体字処理の問題がある。当用漢字表およびそれに続く常用漢字表が,固有名詞を埒(らち)外としてしまった結果,人名における漢字と,地名における漢字が,それぞれ異なる字体を持つに至った,という現実が,この問題をさらに複雑なものとしている。この問題を解決するには,Unicodeのような「漢字統合」を主眼とする文字コードでは力不足であり,むしろ日本国内向けに特化された文字コードが望ましい。本稿で紹介するAdobe-Japan1-6は,Adobe Systems社が日本向けに開発した文字コードだが,日本市場でのニーズ,特に異体字処理を,非常に強く意識した文字コードとなっている。
著者
大木 洵人
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.234-242, 2014-07-01 (Released:2014-07-01)
参考文献数
4
被引用文献数
1 2

本稿では,情報技術を駆使した聴覚障がい者向けサービスを紹介する。日本の聴覚障がい者が直面している社会課題を取り上げ,その解決に情報技術がどのように役立つのかを著者が代表を務めるシュアールグループの事例を中心に説明する。(1)聴覚障がい者や手話に対する理解の低さ,(2)聴覚障がい者と聴者における機会提供の格差,(3)聴覚障がい者に向けたサービスの限界などの社会的背景から,(1)手話通訳者の不足,(2)手話から引く辞典の欠如,(3)手話による娯楽の不足といった社会的課題に直面している。これらの課題を解決するために,シュアールでは,(1)遠隔手話通訳,(2)手話キーボード,(3)手話ガイドアプリ,(4)手話ポッドキャストの4つのサービスを提供している。これらすべてのサービスは近年の情報技術の発展がなければ生まれなかったものであり,まさに情報技術が社会課題の解決に寄与する実例である。
著者
和田 光俊 久保田 壮一 尾身 朝子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.63-68, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
5
被引用文献数
3 4

JSTが提供している科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)は,日本の学協会が発行する学術論文誌等を公開するための電子ジャーナルサイトである。2006年2月末現在,269誌のジャーナルと90種の予稿集が公開され,登載論文数は約17.6万件である。総ページアクセス数は月間100万件を超え,毎月30万件以上の論文がダウンロードされている。J-STAGEへのアクセスの約7割は海外からであり,国別では120か国に及んでいる。また,論文へのアクセスの約6割は他サイトからのリンク経由であり,そのほとんどはPubMed等の文献データベースから論文本文へのリンクによるものである。過去に発行された論文へのニーズも高く,2005年度からは,主要なジャーナルを創刊号にまで遡(さかのぼ)って電子化して公開する電子アーカイブ事業が開始されている。
著者
牟田 昌平 小林 昭夫
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.477-483, 2002 (Released:2002-10-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1

アジア歴史資料センターは,2001年11月30日,独立行政法人国立公文書館の組織として開設された。アジア近隣諸国との相互理解促進のために,政府が所蔵する戦前の公文書から,アジア諸国との関係資料をインターネットで「いつでも」「どこでも」「だれもが」「無料」で検索し画像データとして利用できる本格的なデジタルアーカイブである。閣議決定から開設まで2年間,最新の技術動向を踏まえながらも,できるかぎり既存の確立した技術を応用し,手書き文書も含めた文字情報の内容検索と閲覧,印刷,画像データダウンロードに機能を集中した情報提供システムである。本論では,センターの情報提供システムの特長と言える最新の画像圧縮技術を導入した画像提供システム,歴史用語と英語に対応する専門辞書,検索情報を充実させるための原文情報や英文検索対応の目録システムを中心に紹介する。
著者
田口 宣行
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.171-180, 2011 (Released:2011-07-01)
参考文献数
34
被引用文献数
1

出版社,代理店,購読機関の三者は,学術雑誌の購読契約を通じて,学術情報の流通という同じ目的に対して協力関係を構築した。ところが,出版社による学術雑誌の毎年の価格高騰によりこの関係が不安定なものとなった。本稿では,学術雑誌ビジネスの主たるステークホルダーである出版社,代理店,購読機関の関係を概観し,三者による新たな協力関係の構築の可能性を検討する。また,学術雑誌ビジネスの特異な市場構造を考察し,価格高騰が続く要因を示す。さらに,学術雑誌ビジネスの実態について,過去の状況を含めて概観し,学術雑誌ビジネスと学術情報流通の将来を予測する。
著者
宮入 暢子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.80-89, 2014
被引用文献数
2

Galaxy ZooやeBirdに代表されるシチズンサイエンスでは,基礎研究データの効率的な整備や新たな知識の生産に市民が直接貢献している。「開かれた科学」は17世紀後半の科学アカデミーの成立や学術誌の成立に端を発し,今日の科学研究の基本理念である(1)先駆性の確保,(2)科学の集約化,(3)第三者による正当性の担保,(4)著者による説明責任の確立,といった基礎を築いた。サイエンス2.0の到来によって,プレプリント,オープンピアレビュー,オープンデータリポジトリ,科学のソーシャル化によるネットワークを介したイノベーションなど,学術コミュニケーションの多様化が促進された。これまで論文とその引用という形でしか計ることのできなかった研究インパクトに,オンライン上の注目度を定量化するオルトメトリクスが加わり,各国政府の研究データのオープン化の方針が進む中,科学データ流通を促進するための情報基盤の確立は急務である。
著者
古谷 実
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.155-161, 2007 (Released:2007-06-01)
参考文献数
4

「SIST 02-1997参照文献の書き方」と「SIST 02 suppl.-2003参照文献の書き方(補遺)電子文献参照の書き方」の双方を併せて改訂して1冊にまとめた新版『SIST 02-2007』が公刊された。記述ルールをできるだけ単純にすることを目指し,印刷媒体,電子媒体いずれの参照にも対応できるようにした。旧版からの主要な変更点とその考え方について説明し,参照すべき文献種類の多様化に対応して記述例を80に増やした。また,ある主題分野や一部学会で多年にわたり慣用されてきた参照ルールにも目を向け,残された課題や今後必要な作業について述べた。公刊する前にパブリック・コメントを徴し,それを取り入れたことも今回の改訂の特徴である。
著者
新井 紀子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.12-19, 2009 (Released:2009-04-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1

情報・システム研究機構国立情報学研究所では,研究者向けサイエンス2.0基盤サービスResearchmap.jpを公開する。本サービスは研究者に対して,研究ホームページを公開するための領域である「マイポータル」のほか,バーチャルなデスクトップの機能を果たす「マイルーム」,他の研究者と共同研究や委員会活動をするためのコミュニティーを提供する。マイポータルには研究者履歴(Curriculum Vitae)を公開するためのテンプレートのほか,研究ブログ,資料配布用キャビネット,動画配信ツールなどが備えられており,研究者はその中から自分を表現するためのツールを自由にチョイスし,効果的に情報発信を行うことができる。
著者
後藤 敏行
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.752-764, 2008 (Released:2008-02-01)
参考文献数
22

デジタル保存を担うリポジトリ(デジタルリポジトリ)の認証基準,およびデジタル保存の国際プロジェクトの動向を紹介,分析した。RLG・NARA合同タスクフォースはデジタルリポジトリの認証基準を2007年に刊行した。欧米の他のプロジェクトでも認証基準策定の動きが続いている。欧米の認証基準を参考にする場合,法律等のわが国固有の事情に留意が必要である。また,デジタル保存に関する動向として,複数国の機関が参加した国際レベルの取り組みが注目される。主なものにCASPAR,DPE,PLANETS,Alliance for Permanent Accessがある。従来の一国内でのプロジェクトが到達できなかった知見にどれだけ迫れるかが注目される。
著者
松本 優
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.804-815, 2004 (Released:2004-03-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

株式会社リコーで,知識コミュニティの元祖といわれるユニークなナレッジ・マネジメントDB&メルマガ「おじさん通信」を主宰し,定年後の現在も委託を受けてコンテンツ提供を続けている筆者が「ナレッジ・マネジメントの本質」について解説した後,筆者の元所属した株式会社リコーの販売部門におけるナレッジ・マネジメント実践事例を紹介。事例内容は,(1) 上記の1人ナレッジ・マネジメント「おじさん通信」の事例 (2) 営業の情報共有活用の仕組み「MA情報カードシステム」の事例および (3) その他の事例を紹介。さらに販売部門以外に設計・生産部門の事例,研究・開発部門の優れた事例にも触れる。
著者
金子 周司
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.24-35, 2006 (Released:2006-04-01)
参考文献数
5
被引用文献数
5 4

ライフサイエンス辞書(LSD)とは,筆者が主宰するLSDプロジェクトが1993年以来作り上げてきた生命科学領域の電子辞書である。この辞書の最大の特徴は,英語および日本語のいずれも大量の学術テキストを計量的に解析した独自のデータに基づいていることである。本稿では現在,公開している辞書サービスの概要とLSDデータベースの構築法を紹介し,併せて現在取り組んでいる対訳オントロジーの構築作業から見えてきた英語と日本語の学術用語の相違点について述べたい。
著者
倉地 亮
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.690-700, 2018-01-01 (Released:2018-01-01)
参考文献数
13

近年,自動車はさまざまな機器と接続されることにより,新しい価値を生み出すことが期待されている。今後は自動運転に向けて,V2Xと呼ばれる通信機能の搭載が予想されており,ますますIoTとしての重要な位置づけとなる。しかしながら,一方で現在販売されている自動車の多くが,セキュリティー対策が不十分であることが指摘されている。このため,今後はセキュリティー強化が必要とされている。本論では,自動車を取り巻くIoTと情報セキュリティーの課題について概説する。
著者
高木 尚哉
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.525-533, 2015-10-01 (Released:2015-10-01)

特許庁と独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)は,「特許電子図書館」(IPDL)を刷新し,新たな特許情報提供サービス「特許情報プラットフォーム」(Japan Platform for Patent Information: J-PlatPat)を2015(平成27)年3月23日より提供している。本稿では,「ぷらっと」寄って,情報を「ぱっと」見つけられるユーザーフレンドリーなサービスであるJ-PlatPatのコンセプトや主なサービス,機能を紹介する。
著者
児玉 晴男
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.109-119, 2014-05-01 (Released:2014-05-01)
参考文献数
12

情報ネットワークとWeb環境において,著作物またはコンテンツが活用されている。それは,著作物(著作物を伝達する行為を含む)とメディアのかかわりから,アナログ環境とデジタル環境の諸相と対比される。わが国では,その権利の関係には,「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」と「著作権法」および「著作権等管理事業法」が関与する。それら3つの法律が対象とする権利は,「著作権」,「著作権と関連権」,「著作権等」と表記が異なっている。本稿は,著作権,著作権と関連権,著作権等の権利管理の対象の違いについて解説する。それら3つの権利と権利管理との関係は,わが国の著作権法における映画製作者の3つの権利の帰属に見いだすことができる。
著者
山崎 慎一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.335-344, 2011 (Released:2011-09-01)
参考文献数
13

高等教育機関が,教育研究の質の向上と,社会に対して説明責任を果たすことは,日本のみならず世界の先進国が共通に抱える課題である。この課題について,アメリカでは州立大学を中心に,2007年からボランタリー・システム・オブ・アカウンタビリティー(VSA)という取り組みが行われている。VSAは,大学情報の公開を通じて,大学改革を促し,同時に社会に対して適切な情報の提供を目的としている。そのために,共通化された大学情報のフォーマットであるカレッジ・ポートレイトを用い,高等教育界が自発的に問題解決を試みているものである。本報告では,VSAの取り組みの紹介を通じ,日本における今後の大学情報の収集および公開方法のあり方を検討している。