著者
MEDDINGS Kirsty
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.140-144, 2010 (Released:2010-06-01)
参考文献数
8
被引用文献数
7

剽窃は学術出版においては目新しい問題ではないが,インターネットとデジタル出版の時代を迎え,ますます大きな問題となりつつある。こうした時代では,発表論文が単に増加したというだけでなく,オンライン・データベースや出版社のWebサイト,機関リポジトリからの文献の情報検索がかつてないほど容易になった。しかし,コンテンツの数とその利用可能性が増大するにつれ,査読者は,専門分野の全資料を読むことが難しくなり,オリジナルでないコンテンツの検出が一段と困難になっている。この問題に対応するため,CrossRefは学術出版社向けの剽窃検知サ―ビスCrossCheck(http://www.crossref.org/crosscheck.html)の提供を開始した。
著者
松田 成正
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.387-394, 2014-09-01 (Released:2014-09-01)
参考文献数
10

企業活動の急速なグローバル化や環境変化により,正確かつ円滑な情報発信力が強く求められる時代背景のもとで,一般財団法人日本特許情報機構は関係機関や各界専門家の協力を得ながら「産業日本語」の研究と普及を進めてきた。「産業日本語」は,「産業・技術情報を人に理解しやすく,かつ,コンピュータ(機械)にも処理しやすく表現するための日本語」と定義されている。本稿では,特許明細書作成の実務をガイドし,コンピューターによる特許ライティング支援機能を実現するための基礎情報となる「特許ライティングマニュアル」を中心に,「産業日本語」の取り組みを紹介する。
著者
三輪 唆矢佳 安藤 聡子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.833-841, 2014

進化を続ける世界のサイエンスコミュニティーの中で,各大学が独自性を「見える化」し,内外からの評価を向上させるには,一貫したポリシーに基づく戦略が必要である。その戦略策定の各段階において,エビデンスデータの活用が必須となっている。本稿では,現在の日本の状況を概観するとともに,国内5大学(名古屋大学,東京大学,慶應義塾大学,山口大学,岡山大学)における実際の先進的な分析,活用事例を紹介する。さらに,研究分析に用いるエビデンスデータの中核の1つを成す,ビブリオメトリクスの可能性や名寄せについても言及する。
著者
高木 聡
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.257-265, 2014-07-01 (Released:2014-07-01)
参考文献数
1
被引用文献数
1

近年,「3Dプリンター」が急速に注目を集めている。経済産業省では,2013年10月から2014年2月まで「新ものづくり研究会」を開催し,付加製造技術について議論した。付加製造技術は,(1)精密な工作機械としての発展可能性(付加製造装置)と,(2)個人も含めた幅広い主体のものづくりツールとしての発展可能性(3Dプリンター)の2つの方向性をもち,航空機分野や医療分野といった先進分野での応用が期待されるだけでなく,多くの人々のアイデアがつながることで,これまでにない新しい製造業のかたち(インディーズ・メーカー)を実現する可能性がある。2020年における付加製造技術の経済波及効果は,総額で約21.8兆円に達することが予想され,わが国も「3次元造形システム」の研究開発によって,装置,ソフト,材料の開発を進めつつ,普及を促すうえで知的財産権や製造物責任等の課題がないか,昨今の事例も踏まえて引き続き検討していく。
著者
永田 治樹
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.370-380, 2010 (Released:2010-10-01)
参考文献数
31

情報社会における図書館の運営方針は,必ずしも明確になってはいない。本稿は,大学図書館の領域で多く展開されているインフォメーション・コモンズを公共図書館に焦点をあて論じようとする。そのためにまず,「共有資源」に関するコモンズの理論において,情報共有のための社会的装置としての図書館がどのように位置づけられるかを確認した。またデジタル化の進展が「デジタル・ジレンマ」といった現象をもたらした状況を把握し,その上で,デジタル資源にも対応できるインフォメーション・コモンズの整備について,公共図書館における現状と今後について言及した。
著者
ウォルパート アン J
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.780-788, 1999

ディジタル情報時代における図書館のディジタル・リソース供給者としての役割について述べた。特に図書館がディジタル・リソースを提供する際に直面するマーケティングの問題に焦点を当てた。また,ディジタル情報時代に対応した図書館員の教育プログラムについても,現場教育が必要であると述べている。最後に,ディジタル環境下の図書館においては,(1)コレクションの新しい評価基準,(2)ディジタル環境用の新しい経済モデル,(3)新しい形態での学術コミュニケーションのための戦略,の確立が求められていることを述べた。
著者
平尾 啓
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.284-293, 2013-08-01 (Released:2013-08-01)
参考文献数
3

筆者は,2001年からキリンビール社技術開発部の情報調査担当として,また2012年からはキリンホールディングス社知的財産部においてキリングループ全体(医薬除く)に視野を拡大して情報調査および調査環境の整備を行ってきた。その取り組みは会社,部門の状況に応じて試行錯誤の連続であった。当初は調査担当者がほぼすべての調査を行っていたが,次第に調査担当者と研究者は調査の種類によって役割分担をすべきであることに気がついた。しかし,研究者に対する声掛けと説明会だけでは研究者による調査は浸透しなかった。そこで,調査担当者として,「情報調査とは本来誰がすべきなのか」そして「どのような調査環境を整える必要があるのか」などさまざまな取り組みをしてきた。現在進行形の取り組みをも含め紹介する。
著者
佐藤 正樹 加藤 治 堀江 隆 黒沢 努 森 卓也
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.899-909, 2013-03-01 (Released:2013-03-01)
参考文献数
9

現在,科学技術情報流通の世界では,IT技術の発達や科学技術情報の世界規模での広がり等を要因として,外資系企業を中心に世界的な販売展開がなされている。JSTの情報事業のみならず,情報提供事業を行う機関は,自国内で展開する事業展開だけでなく,グローバルな視点の事業展開の立案が必要になっている。そこで2012年に,アジア諸国・地域の科学技術情報流通に関する状況を調査した。まず,アジア各国・地域における科学技術情報流通のポテンシャルを調査した。次にアジア諸国・地域で,日本の科学技術情報ニーズを調査した。最後に,今後どのような形態での科学技術情報の流通が求められるかを調査した。それらの結果を報告し考察する。
著者
江渡 浩一郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.489-501, 2012

ユーザー生成コンテンツの世界には多種多様なコンテンツが存在しており,中にはユーザーが創意工夫によって新技術を開発し,独創的なシステムを作り上げたものもある。そのような事例の中には研究として高く評価しうる内容が含まれていることもあるが,従来は研究者コミュニティーとの接点は薄く,埋もれた存在となっていた。そこで,ユーザー参加型という理念を基本とした新しい学会「ニコニコ学会β」を立ち上げ,プロフェッショナルとアマチュアが共に研究発表を行う場を作り上げた。2011年12月に第1回のシンポジウムを開催し,2012年4月には第2回のシンポジウムを開催した。本稿では,背景と理念,および開催したシンポジウムの概要について解説する。
著者
長神 風二
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.77-85, 2009 (Released:2009-05-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

筆者らは生命科学系最大規模の学会において,科学研究情報の流通に関するフォーラムを開催した。フォーラムは集客も多くなく必ずしも成功裡に終わったとは言い難いが,いくつかの成果を上げることができた。シリアルズクライシス,機関リポジトリ,オープンアクセスなど,生命科学研究者にとっては耳にする機会の少ない概念を提示し,科学と社会をつなぐコミュニケーションを考えるうえでも,あるいは,研究を発展させていくうえでも情報流通が重要であることを示した。また,社会とのコミュニケーションの視点を軸に,科学研究情報の流通を考えると,研究者が公表した研究成果をセルフアーカイブすることの重要性,またそれを推進するための組織的・資金的な支援の必要性,大型研究機関における機関リポジトリの必要性や,ファンディングエージェンシーのより重要な役割が浮かび上がってきた。現状の問題点を一つ一つ解決していく提案を行い,研究と社会にとってより良い研究情報の流通のあり方を考えていく。