著者
伊藤 裕夫
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学会〈日本〉論文集 (ISSN:09194738)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.2, pp.131-134, 1996-03-20 (Released:2009-12-08)
参考文献数
7

これは、1993年2月に文部省の委託で実施した「我が国の文化の動向に関する調査」にて、芸術活動の直接的な担い手である芸術家 (及び芸術団体) と芸術文化の享受者である一般国民に共通に行った、芸術文化の振興への要望に関する質問の回答において、両者の間にかなりの差が見られたことから、今日のわが国における芸術文化振興のあり方を再検討したく思い、一つの問題提起としてまとめたものである。すなわち、芸術文化の振興のために国や地方公共団体に望むものは、芸術文化の享受者では、まず「文化施設」、次いで「文化事業」「鑑賞教育」と続くのに対し、その創造者では「補助金」が最も多く、次いで「寄付金制度」「鑑賞教育」と続いている。また、企業メセナなど、民間による芸術文化支援についても、国民の間では芸術家・団体ほど関心は高くない。今日、芸術文化振興が叫ばれ、国や地方公共団体の文化予算も大きく増加している中で、芸術文化の創造サイドと享受サイドの間に少なからずの要望の差があるとき、文化政策はどこにその基点を求めるべきなのであろうか。