著者
川名 純平 諏訪 竜也 関 庸一
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.23-44, 2018 (Released:2018-12-27)
参考文献数
12

本研究では,経営主体横断的に収集されたスーパーマーケットの大規模ID付きPOSデータの分析法を提案する.これにより,店舗や顧客の販売や購買の類型をとらえ,顧客行動とその遷移傾向を明らかにする.まず,月次の商品カテゴリ上での販売額・購買額分布に注目して,これに自己組織化マップ(SOM)を適用することで,店舗販売類型,顧客行動類型を抽出する.この際,カテゴリごとの金額が桁違いであるので,Box-Cox変換を利用した.次に,店舗グループごとに,顧客の購買行動類型の構成比,月間の類型間遷移の頻度,新規顧客の加入数などに注目し,その特徴を明らかにした.その結果,顧客のロイヤリティや年齢層が異なる店舗グループの間では,米,精肉,鮮魚といった商品購買行動の傾向や遷移が異なることが明らかになった.提案法は,店舗間の顧客層の差異を発見するために有効であると考えられる.
著者
川上 幹男 楠田 浩二
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.175-203, 2021 (Released:2021-09-28)
参考文献数
23

宿泊・飲食サービス業の就業者数の重回帰予測モデルを,予測高精度,速報性,説得力,政策決定支援力のEBPMに資する4要件を満たすモデルとして構築する.四半期毎に2四半期先までの就業者数を予測する平常時モデルに加え,今般の緊急事態宣言のような不測の事態の影響を織り込める非常時モデルを重回帰モデルの説明変数予測にVARモデルのインパルス応答分析を利用して構築する.非常時モデルは就業者数が世界金融危機時以来の低水準にまで低下することを予測しており,当該業界向けの支援策が喫緊の課題であることを示している.
著者
大槻 知史 愛須 英之 田中 俊明
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.30-55, 2010 (Released:2017-06-27)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

現在多くの鉄道事業者では,経験豊富な熟練者が膨大な時間を割いて一定期間の車両運用の基本計画を作成し,またダイヤ乱れが発生する度に計画修正している.本稿ではこの車両運用計画作成の自動化を目的とする制約充足解法を提案し,実問題に基づく評価では汎用ソルバーCPLEXよりも高速に求解できることを確認した.また提案解法は基本計画作成・修正計画作成のいずれにも利用可能であり,かつ評価関数の設計の自由度が高いため,多くの鉄道事業者に対し適用可能な汎用解法となる可能性がある.
著者
高木 郁子 松浦 隆文 沼田 一道
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.149-160, 2012
参考文献数
8

複数種類のジョブと各ジョブ種の必要処理回数が与えられたとき,循環的な単位時間枠の並びに対して各ジョブをできるだけ均等に割当てるスケジューリング問題をcyclic Fair Sequence Problem(cFSP)という.cFSPは均等性を明確に定義付けていないので様々な指標が考えられている.Response Time Variability Problem(RTVP)はcFSPの代表的な問題の一つで,全ジョブ種に関して理想的な出現間隔と実際の出現間隔の差の二乗の和を最小化する問題である.Corominasらは出現間隔を直接的に列挙変数で線形表現した定式化-求解モデルを提案し,それにより単位時間枠並びの長さが40程度までの問題例についてRTVPの厳密解が求まることを報告している.しかし,この定式化は複雑で求解可能な問題サイズの拡張や他指標への応用が見込めない.本研究では出現間隔を基礎とした様々な指標に柔軟に対応でき,かつ,より大きなサイズの問題例に対して厳密解が求まる定式化-求解モデルを提案する.
著者
沓名 拓郎 甲斐 良隆 福島 雅夫
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.62-88, 2006
参考文献数
9

モーゲージ担保証券(Mortgage Backed Securities, MBS)とは,多数の住宅ローンを寄せ集めてローンプールを作り,その返済キャッシュフローを原資として発行される証券である.近年,住宅金融公庫によるこれまでの融資業務の段階的縮小と,民間住宅ローンの証券化支援業務の開始が決定された.これにより,今後日本においてMBSはますます普及すると考えられる.住宅ローンでは,基本的に毎月の決められた返済以外に繰り上げ返済が認められており,繰上返済により返済キャッシュフローが変化する.このため,MBSには期前償還リスクが存在する.現在発行されている公庫MBSはパススルー方式であり,流れ込む返済元利金は(繰上返済分も含んで)そのまま投資家に渡される.これに対し,返済キャッシュフローを人為的に再編成し,リスクの異なる複数の債券に分離して販売する方式(Collateralized Mortgage Obligation, CMO)が考えられている.本研究の目的は,優先劣後構造を用いた最適なCMOを設計するための手法を提案することである.期前償還リスクの影響下で不安定な返済キャッシュフローを,期前償還リスクの低い安定した部分(優先債券)と,期前償還リスクの高い不安定な部分(劣後債券)の2つのクラスに分ける.その際,より多くの優先債券を発行するため,各時点において返済金の一部分を次の時点までリザーブできると仮定する.本研究では,優先劣後構造を決定する問題を数理計画問題に定式化する.そして,シミュレーションに基づいた手法を用いて問題を近似し,その問題が等価な線形計画問題に再定式化できることを示す.さらに,提案した基本モデルおよびその修正モデルに対して数値実験を行い,それらのモデルの有効性を検証する.
著者
泉 武志 小中 英嗣
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.21-37, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本稿では2015年からJリーグが導入する2ステージ+ポストシーズン制度についてシミュレーションを行い,ポストシーズンが3,4,5チームで争われる確率がそれぞれ約62%, 35%, 3%(平均約3.4)であるとの結論を得た.シミュレーションには対戦チームの平均得点および平均失点を反映させたモデルを使用した.平均得点および平均失点を得点に反映させるため,過去5シーズンの対戦データから回帰分析を用いてモデルを作成した.このモデルに基づき,10万シーズンのシミュレーションを計算機上で行い上記の結果を得た.またこの結果から,新しいシステムはポストシーズン進出の条件設計が不適切であり,2ステージ制ではなく本質的には1ステージ制+ポストシーズンの制度であることを明らかにした.
著者
枇々木 規雄 尾木 研三 戸城 正浩
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.42-65, 2012
参考文献数
21

小企業向けの信用スコアリングモデルは主に財務指標から個別企業のデフォルト確率を推定する統計モデルである.デフォルトは固有ファクターだけではなく,すべての企業に共通するマクロファクターの影響も受ける.推定デフォルト確率(推定PD)と実績デフォルト率(実績DR)の一致精度を高めるにはマクロファクターを説明変数に加えることが望ましいが,デフォルトに関する時系列データの蓄積が不十分なため,回帰分析などによって具体的な指標を特定することが難しいという課題がある.一方で,2007年頃から始まった急速かつ大幅な景気悪化によって,実績DRが推定PDを上回る状況が続いており,マクロファクターを加味することの必要性が高まっている.そこで,本研究では日本政策金融公庫国民生活事業本部が保有する約54万件の豊富なデータを用いて時系列データの不足を補い,具体的な指標の選択を行った.その結果,マクロファクターとして前月デフォルト率が有効であり,前月デフォルト率を説明変数に追加した新モデルを構築すると,推定PDと実績DRとの乖離が最大で0.72%ポイント縮小するなど,推定PDの一致精度を改善することができた.
著者
尾木 研三 戸城 正浩 枇々木 規雄
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.134-159, 2016

<p>小企業向けの信用スコアリングモデルは,財務指標とデフォルトとの相関関係を利用したロジットモデルが主流である.ただ,小企業は大企業や中堅企業に比べて財務指標とデフォルトとの相関が低いため,モデルの精度も低くなるという問題がある.そこで,枇々木・尾木・戸城(2010)は,財務指標以外のファクターとして業歴に着目し,2004年度から2007年度の4年間に公庫が融資した約48万件の小規模な法人企業のデータを用いて業歴とデフォルトとの関係を分析した.その結果,業歴別のデフォルト率を3次関数で定式化した業歴関数をモデルの説明変数に追加すると,AR値が改善することを明らかにした.しかし,枇々木ら(2010)は,業歴別デフォルト率が何を表しているのかについては明らかにしていない.さらに,データ数が不十分で観測期間が短かったため,業歴関数の統計的な有意性や時系列での頑健性が確認されていないという問題点がある.そこで,本研究はこれらの問題点を解決するため,観測期間を8年に延ばしたうえ,約100万件の法人企業のデータに加えて約32万件の個人企業のデータを使用して分析を行った.膨大なデータをさまざまな角度から分析した結果,業歴別デフォルト率は経営者の個人資産額と関連があり,その代理変数として利用可能であることを明らかにした.さらに,業歴関数の統計的な有意性と時系列での頑健性を確認し,枇々木ら(2010)の分析に比べて実務での汎用性を高めることができた.</p>
著者
林田 智弘 西崎 一郎 菅生 雄矢
出版者
The Operations Research Society of Japan
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.27-43, 2014

部分ゲーム完全均衡は展開型ゲームに対する均衡概念であり,多くの展開型ゲームにおけるプレイヤーの行動のベンチマークとして用いられている.しかし,展開型ゲームの一種であるムカデゲームに対する被験者実験では,部分ゲーム完全均衡から逸脱する行動が多く観測されたことが報告されている.均衡理論では利得最大化の意味での合理的なプレイヤーが仮定されているが,ゲームが繰り返される場合,被験者は1回のゲームの利得の最大化ではなく,むしろ累積利得を考慮した長期的な視野に基づいた行動選択をしていると考えられる.本論文では,ムカデゲームに対して適応型エージェントを用いたシミュレーションにより,累積利得を考慮した長期的視野および被験者間での非対称性,利得に対するリスク態度などにより被験者の行動が説明できることを示す.
著者
安井 雄一郎 藤澤 克樹 笹島 啓史 後藤 和茂
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.58-83, 2011
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

最短路問題はネットワーク上の経路探索などの多くの応用を持ち,また他の最適化問題の子問題として用いられることも多く,適用範囲の広い組合せ最適化問題である.そのため最短路問題を高速に解くことの重要性は非常に大きくなってきている.最短路問題に対する解法としてはダイクストラ法などの安定的かつ効率的な高速アルゴリズムが存在するが,実問題は非常に大規模になるためさらなる高速化が不可欠である.そこで本論文では大規模最短路問題に対し,計算機のメモリ階層構造を考慮しつつ汎用的かつ効率的に高速化を行うための実装方法を示す.さらに論文中では計算機のメモリ階層構造における律速箇所の特定を行うための汎用的な解析方法を示し,高速化の有用性を検証していく.本手法により実装されたバイナリ・ヒープを適用したダイクストラ法は,実行性能,安定性,メモリ要求量などを他の実装と比較すると総合的に最も優れているといえる.また本実装を用いた大規模最短路問題に対するオンライン・ソルバーについても説明を行う.
著者
池上 敦子 森田 隼史 山口 拓真 菊地 丞 中山 利宏 大倉 元宏
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1-24, 2008
参考文献数
41
被引用文献数
4 1

本研究では,運賃設定の異なる複数の鉄道会社を含む鉄道ネットワーク上の運賃計算を正確かつ高速に行えるネットワーク表現とアルゴリズムについて報告する.鉄道運賃は,利用者の乗車経路が明らかであるとき,多くの場合,その経路に含まれる各鉄道会社が定めた運賃を足し合わせることによって得られる.一方,利用者の乗車経路が明確でない場合,利用可能経路の中で最も安い経路を利用したとみなし,その運賃を採用することが一般的である.しかし,鉄道運賃は,基本的には「距離が長くなればなるほど高く」なるように設定されているものの,同じ距離でも,会社によって異なる料金が設定されていることや,乗車区間によって割引ルールや特別運賃が設定されていることなどから,物理的距離に基づくショーテストパスが最も安い経路になるわけではない.よって,与えられた2駅間の正しい運賃を計算するためには,その2駅間の可能経路の運賃をすべて,もしくは,その1部を列挙して比較判断する必要があることがこれまでにも報告されてきた.本研究では,物理的構造に基づくネットワーク上での経路探索を行う代わりに,ダイクストラ法が利用可能な運賃計算用ネットワークを構築し,ダイクストラ法と,少ないケースではあるがK-shortest paths問題用のアルゴリズムを利用することにより,複数社を含む鉄道ネットワーク運賃計算の大幅な高速化に成功した.
著者
森田 隼史 池上 敦子 菊地 丞 山口 拓真 中山 利宏 大倉 元宏
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.1-22, 2011-12

鉄道運賃は,基本的に乗車距離が長くなればなるほど高くなるように設定されているが,同じ距離でも,会社によって,さらには同じ会社内でも地域や路線によって異なる料金が設定されている.さらに,乗車区間によっては割引ルールや特定の運賃が設定されていることなどから,最短経路の運賃が最安になるわけではない.運賃計算では,利用者の乗車経路が明確でない場合,乗車可能経路の中から最も安い運賃となる経路を利用したとみなし,その運賃を採用するルールが設定されている.そのため,与えられた2駅間の正しい運賃を計算するためには,その2駅間の乗車可能経路の運賃を全て,もしくはその1部を列挙して判断する必要があると考えられてきた.これに対し,我々は2008年,複数の鉄道会社を含む鉄道ネットワークにおける最安運賃経路探索用ネットワークFarenetと探索アルゴリズムを提案し,これを利用した自動改札機用運賃計算エンジンの実用にいたった.本論文では,Farenet構築の基盤となった1会社内の運賃計算,具体的には,首都圏エリアで利用可能であるICカード乗車券Suica/PASMOの適用範囲に含まれるJR東日本510駅の全2駅間(129,795組)に対して行った運賃計算について報告する.4つの対キロ運賃表と複数の運賃計算ルールが存在するこの運賃計算において,異なる地域・路線を考慮した部分ネットワークとダイクストラ法を利用することにより,多くの経路を列挙する従来の運賃計算方法において数時間要していた計算を,約1秒で処理することに成功した.論文の最後では,アルゴリズムの効率を示すとともに,対象ネットワークが持つ運賃計算上の特徴についても報告する.
著者
大槻 知史 愛須 英之 田中 俊明
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.30-55, 2010
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

現在多くの鉄道事業者では,経験豊富な熟練者が膨大な時間を割いて一定期間の車両運用の基本計画を作成し,またダイヤ乱れが発生する度に計画修正している.本稿ではこの車両運用計画作成の自動化を目的とする制約充足解法を提案し,実問題に基づく評価では汎用ソルバーCPLEXよりも高速に求解できることを確認した.また提案解法は基本計画作成・修正計画作成のいずれにも利用可能であり,かつ評価関数の設計の自由度が高いため,多くの鉄道事業者に対し適用可能な汎用解法となる可能性がある.
著者
篠原 章宏 山下 英明
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.82-102, 2009-12

本稿は,各工程のカンバン枚数と基礎在庫量を決定する生産計画と,この生産計画に必要な資金を除いた余剰の資金を運用する運用計画を同時に策定し,運用で得られた利益を組み込んだ次期の資金をもとに,次期の生産計画と運用計画を同時に策定する多期間計画問題を考える.一般にこの問題の実行可能解の数は膨大で,最適解を求めることが難しい.一方,生産計画問題と資金運用計画問題を分離して,独立に解こうとすると,問題間のトレードオフによって,精度の良い近似最適解を得られない可能性が高い.そこで,本稿では共進化GAの考え方を用い,比較的精度の良い近似最適解が得られる解法を提案する.
著者
川村 秀憲 大内 東
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.48-65, 2005-12
被引用文献数
6

本論文では, ネットワーク外部性の働く製品市場のモデル化とプレゼント戦略の評価を行う.エージェントベースモデルを用いることにより, 消費者間の相互作用ネットワークを明示的にモデルに取り込むことが可能である.本モデルは, 消費者間のネットワークの構造とネットワーク外部性の効果の関係について明らかにすることが出来る点に特徴がある.シミュレーションでは, 企業の視点に立つことにより, 競争が重要な意味を持つネットワーク外部性を有する製品の市場において, 企業が独立に操作可能なマーケティング変数であるプレゼント戦略を導入し, その有効性の検証を行う.実験結果より, ネットワークの構造と有効なプレゼント戦略には密接な関係があり, 同じ数のプレゼントを行っても構造に応じて効果的な戦略が存在することを示す.