著者
関 巴瑠花 三浦 哲都 向井 香瑛 工藤 和俊
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.111_2, 2018 (Released:2019-01-18)

緊張や不安を感じながらも大観衆の前で美しく踊るバレリーナには、どのような心理生理学的な反応が生じているのだろうか。これまでパフォーマンス不安による心理生理学的な反応は、主に実験室での模擬的な環境内で測定されてきており、実環境におけるパフォーマンス本番での測定は極めて少ない。また、パフォーマンス不安に関する研究は楽器演奏をする音楽家や低強度運動時のスポーツ選手を対象にしたものが多く、同様の結果が中から高強度で運動をする人にも当てはまるかどうかは不明である。そこで本研究ではパフォーマンス不安が、中から高強度運動時の心拍数にどのような影響を与えるのか検討した。実際の観衆(400名以上)の前で踊るプロのバレリーナ1名が、中から高強度の運動強度で踊っている最中のR-R間隔を心拍計により計測した。心拍数はR-R間隔より算出した。舞台上でのリハーサルと本番での心拍数を比較した。その結果、本番での最大心拍数は180拍/分を超えており、リハーサル時よりも本番中の方がおよそ10拍/分心拍数が高かった。これらの結果から、中から高強度運動時においても、パフォーマンス不安により心拍数が増加することが明らかになった。
著者
工藤 龍太
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.71_2, 2018 (Released:2019-01-18)

講道館柔道創始者の嘉納治五郎は様々な武術を研究し、「武術としての柔道」を生涯にわたり探求し続けた。柔道が競技スポーツとして普及していく一方で、柔道の武術性が失われていくことを危惧した嘉納は、修行者に形と乱取稽古の併修を説いた。昭和2(1927)年までに嘉納が完成させた精力善用国民体育の形(以下「精力善用の形」)は、2人で行う相対動作に加えて1人で行う単独動作が含まれている点で、柔道の形としては画期的なものであり、集団体操としても採用されるなどの展開があった。先行研究では、この形が国民体育の実施と当身技の習得といった体育的・武術的観点から、柔道をより優れたものにするために嘉納が創案したものであり、嘉納にとって理想の柔道の形であったことが指摘されてきた。本発表では、嘉納の理想的な柔道を具現化した精力善用の形が戦前の体育や武道の世界に与えた影響や、様々なレベルの実践者たちの反応がどのようなものであったかを資料に基づき調査しながら、戦前の精力善用体育の形の展開過程を明らかにしたい。
著者
中澤 篤史
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.81_3, 2018 (Released:2019-01-18)

発表者は、日本の学校運動部活動が歴史的にどのように形成され、拡大してきたのか、そして現在においてどのように維持されているか、というその形成・拡大・維持過程を探究している。本発表の目的は、その一環として、日本中学校体育連盟の財務状況の推移を、とくに1989年の財団法人化のプロセスに注目しながら明らかにすることである。日本中学校体育連盟(中体連)は、中学校運動部活動の競技大会を運営する団体である。では中体連は、競技大会に必要な資金をどのように集めたのか、その財務状況はどのように変遷してきたのか。また中体連は、1989年に任意団体から財団法人へと変わったが、そのプロセスで財政的基盤をどのように整えたのか。先行研究が十分に検討できていないこの問いに、本発表は取り組む。資料は、日本中学校体育連盟の年度報告書『会報』などを用いる。
著者
日野 克博
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.53_1, 2018 (Released:2019-01-18)

学習指導要領改訂を契機として、教職課程の質保証や教員の資質能力の向上を意図した教職課程の見直しが図られている。教員養成系大学では、教職課程コアカリキュラムに基づく再課程認定の手続きが進められており、学習指導要領の理解や具体的な授業場面を想定した授業設計等の知識や技能を身に付けるなど、「教科の指導法」科目の充実が期待されている。そこでは、「学習指導要領」「教材研究」「指導案作成」「模擬授業」等の内容をバランスよく指導することが求められており、その指導にあたっては、学問領域として「体育科教育学」が基盤になっていること、「体育科教育学」の種々の研究成果が指導内容に反映されていることが重要になってくる。しかし、「体育科教育学」の知見や成果をどのように反映させればいいか、各授業科目での達成基準との整合性、授業時間数等の条件、具体的な授業展開の方法など実践上の課題も少なくない。そこで、本シンポジウムでは、教職課程の見直しについて概説し、愛媛大学での「保健体育科教育法」の実践事例を紹介しながら、教員養成における「体育科教育学」の役割や指導のあり方について提案する。
著者
崎田 嘉寛
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.72_1, 2018 (Released:2019-01-18)

1943年2月に『国有鉄道体操教範草案』(鉄道省)で制定された、いわゆる国鉄体操は、職種を問わず40~50万人を対象として実施されている。そのため、戦前期に乱立した体操の中でも、モデルケースの一つとして評価されている。この組織的な展開が可能となった背景には、各局・工場・教習所が、それぞれの職場で創案・実践してきたニルス・ブック由来のデンマーク体操方式を、集約・統合して国鉄体操が完成したという経緯がある。そして、1930年代後半からの現業部門を基盤とした国鉄体操の拡充と指導体制が、敗戦後直ちに国鉄体操の再開を可能にした要因の一つとなっている。本研究では、1940年代を中心とした国鉄体操の動向について、既存研究を新資料で再構成しながら記述することを目的とする。具体的には次の課題を複合的に考察する。①国鉄体操の制度的変遷を概観し、教範制定に至る現場等での取り組みを通覧し把握する。②国鉄体操とはどのような動きの体操であったのかを記録映画から分析し、どのように実施されていたかを個人資料を含めて事例的に検証する。③齋藤由理男、GHQ体育担当官、森田徳之助の果たした役割と影響について検討する。
著者
鈴木 秀人
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.83_1, 2018 (Released:2019-01-18)

暴力的行為(体罰やしごき)が繰り返されてきた運動部の過去を振り返ると、それを行使する側の問題を問う必要があることは勿論であるが、結果的にそれを長期間にわたって許してきた側の問題を問うことも必要ではないか、というのが本研究の根底にある問題意識である。 暴力的行為を許してきた側を問う視点として発表者が着目してきたのは、かかる行為とその行使の基盤となっている監督と選手間や上級生と下級生間の封建的な上下関係の起源を旧軍隊の行動様式に求める「軍隊起源説」という俗説である。 発表では、当の軍隊が消滅してしまった後々まで、軍隊に起源があるとされる行動様式がなぜ運動部の中で継承されたのかを説明できないという弱点を持つにもかかわらず、我が国の多くの人々がこの説を共有してきた理由を明らかにし、暴力的行為を許容してきた側に見られる問題を新たに提起する。
著者
増澤 拓也
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.97_2, 2018 (Released:2019-01-18)

バランス能力を向上させる手法として、2点間に張った平らなロープ上でバランス維持するスラックライントレーニング(SL)と、体幹部の堅牢性を高める体幹トレーニング(CT)が、近年注目を集めている。この両者のトレーニングはいずれもバランス能力の向上を目的としているが、SLは重心位置を動かすことで積極的に安定点を探る制御方法をとり、CTは重心位置を動かさず支持基底面から逸脱させない制御方法をとるため、制御様式が大きく異なる。本研究の目的は、SLおよびCTが姿勢安定性向上に及ぼす効果を明らかにすることである。実験参加者をSL群、CT群および統制(CO)群に配置し、15分間のトレーニングを週2回のペースで合計8回実施した。その訓練前後において重心動揺計とビデオカメラを用い、姿勢安定性の評価・分析をおこなった。分析の結果、SL 群は片・両脚の安定面と不安定面上それぞれで重心動揺が改善され、CT群は両脚時のみ重心動揺が安定化した。