- 著者
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山本 由徳
- 出版者
- 日本作物学会
- 雑誌
- 日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
- 巻号頁・発行日
- no.22, pp.5-11, 1985-12-25
水稲の主稈の第2〜12節の各節1節にのみ分げつを残して,節位別の分げつの生産力を調査するとともに,対照(無処理)区との生育・収量を比較した。一次分げつの発生から止葉展開および出穂まで日数は,残存節が上位節ほど短くなり,主稈葉数は多くなったが,一次分げつの葉数は威少した。そして,それに伴って二次以上の分げつ発生数が低下し,穂数が少なくなって穂重は劣った。しかし,一次分げつ穂重および二次以上の分げつの平均1穂重,さらに主稈穂重には分げつ残存節の影響がほとんど認められなかった。また,対照区では主稈の第2〜11節に分げつが発生したが,処理区の同節位の一次分げつにくらべて,発生から止葉展開および出穂まで日数は短くなり,栄養生長量は劣ったが,とくに第6節以上の差が大きかった。一方,各処理区の株当り穂重は,穂数の差によりいずれも対照区にくらべて劣ったが,1穂重の増加により穂数にくらべて穂重の低下割合は小さかった。また,対照区にくらべて各処理区の1穂重の増加割合は主稈>一次分月>二次以上の分げつの順に大であった。そして,対照区の節位別一次分げつ穂重は,上位節ほど軽くなる傾向にあり,節位による差異がみられなかった処理区と著しく異なった。以上により,主稈の節位別分げつの生産力は穂数の差により下位節分げつほど高いが,節位による1穂重の差は小さいことが明らかとなった。また,主稈の1節にのみ分げつを残存させた場合には節位にかかわりなく対照区にくらべて1穂重が重くなり,また,有効分げつ歩合も高くなる傾向がみられたことから,少数の主稈節に分げつを確保することによって増収する可能性が示唆された。