著者
福井 春雄 藤原 公 村岡 高志 次田 隆志
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.26, pp.1-8, 1989-12-25

キチンとはカニ・エビなどの甲殻類,昆虫などの甲皮,きのこ,細菌細胞壁などに広く分布する天然高分子多糖であり,その脱アセチル化物がキトサンである。それらの化学構造は,木材などの構成成分であるセルロースに似ているが,セルロースの構成単位がグルコースであるのに対し,キチンはグルコースにアセトアミド基がついたN-アセチルグルコサミンが構成単位となっている。キトサンはキチンのアセトアミド基からアセチル基が取れたものである。当社では,冷凍食品,特にエビフライの製造工程で排出されるエビ殻から得られるキチン・キトサンの有効利用研究を行っており,その一つである農業分野への利用として,さまざまな方法でキトサン処理を施した植物の生長促進効果に関する研究を推進している。高等植物はキチン・キトサンをその構成成分として有さないにもかかわらず,それらの分解酵素であるキチナーゼやキトサナーゼを持っている。これらの酵素の植物における機能は,未だ充分には明らかにされていないが,平野らによれば,病虫害に対する植物の自己防護機能に関与しているとされている。また,植物種子をキトサン被覆することにより種子発芽過程においてキチナーゼ活性が誘導されることや,キトサンが植物カルス形成におけるキチナーゼ活性を誘導するとともにカルス形成を促進することが報告されている。さらに,ダイコンの種子被覆により,収量が7〜13%高まったといっ報告もある。すなわち,キトサンにより,外敵に対する植物の自己防護機能が作用し,さらに細胞の活性化機構が働くことによって植物の生長が促進されるというメカニズムが推測されており,キトサンの有するこの機能を応用して,植物生産を人為的に高める新しい手法の開発が期待される。本研究は,種々の方法でキチン・キトサン処理した野菜とくに根菜類の生長状況と植物体中のキチナーゼ活性および無機成分含量を調べることによって,植物に対するキチン・キトサンの生長促進効果とその作用性を明らかにすることを目的として実験を行った。
著者
近藤 日出男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.29, pp.41-42, 1992-12-25

近年作物改良の基盤となる在来種の見直し調査が行われると聞くが,本報告もその1例である。四国産山地には明治末期瀬戸内海側山地で衰退した焼畑農耕が吉野川,銅山川,仁淀川,四万十川水系の中,上流域で1965年までわずかに残存していた。今回調査した赤かぶはかつて焼畑出作り地において見られた在来種である。其の成立は1877年土佐に天王寺かぶ系の「弘岡かぶ」より古く「大崎かぶ」「田村かぶ」1〕として記載されているが,栽培特性については明らかにされていない。筆者は十数年前に入手し,系統保存をつづけてきたが,今回試作した結果を報告する。
著者
宇都宮 隆
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.13, pp.39-41, 1976-12-25

ステビアの収穫期は,ステビオサイド含有率の推移等からみて,開花期直前が適期とされている。したがって開花期の早晩は生育・収量に影響する主要特性の一つである。実生個体群における観察では,平均開花期は9月20日前後であるが,稀には7月28日と非常に早いものから,10月2日と遅いものまで幅広い変異がみられ,きわめて変異に富んでいる。また越年株においては,稀に萌芽後間もなく着蕾・開花する個体が生ずる。このようなことから花芽分化要因を検討した。
著者
福井 春雄 正田 敏幸 藤原 公 村岡 高志 次田 隆志
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.26, pp.9-16, 1989-12-25

前報においては,根菜類のモデルとしてハツカダイコンを用い,各種濃度のキトサン溶液による種子被覆および,キチン・キトサンを土壌混和してポット栽培試験を行い,キチン・キトサンによる作物の生長促進効果とその作用性を調べた。その結果,0.01%キトサン溶液の種子被覆によって顕著な根部肥大効果が認められ,またキトサンの種子被覆および土壌混和によって,ハツカダイコンの根部および葉部におけるキチナーゼ活性が賦活された。さらに,根部への窒素およびカリウムの吸収量増加が認められ,キトサンによる作物への作用性が示唆された。しかし,キチンの土壌混和による根部肥大等の効果は見られなかった。そこで本報では,前報で根菜類に対する生長促進効果の認められたキトサンに注目し,種々のキトサン処理を施した各種の作物について圃場における栽培実験を行い,各種作物への栽培適用性を検討した。
著者
末沢 一男 多田 正敏 村尾 幸三
出版者
日本作物学会四国支部
雑誌
日本作物学会四国支部紀事
巻号頁・発行日
no.3, pp.42-45, 1967

ドライコゼットの製法は晴天に恵まれば天日乾燥も可能であるが曇天,雨天の場合は人工乾燥を施さなければならない。その場合出来得る限り短時間に充分乾燥する方法を用いることが肝要である。貯蔵は,ポリエチレン等の吸湿性のない容器を使用し,貯蔵中において吸湿なき場合は糖度の減少は殆んど招かず,貯蔵可能な見透しがついた。
著者
福見 良平 堀内 悦夫 福山 寿雄 秋好 広明 天野 勝司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.13, pp.12-14, 1976-12-25

第2報において,牛ふんの多量施用がナス・甘藷の生育.収量に及ばす影響について報告したが,本報ではダイコン・トマトについて試験を行ったので,その結果の概要を報告する。
著者
佐藤 亨 杉本 秀樹 堀内 悦夫 川合 通資
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.21, pp.6-11, 1984-12-25

直播水稲(やや晩播)の生育相を普通期移植のそれと比較し,とくに根の発達の様相と関連させて明らかにしようとした。移植・乾田直播・湛水直播の3区を設け,それぞれ5月16日(6月23日移植)・6月14日・6月17日に播種し,生育と根群(モノリス法による)の様相を調べた。1.地上部の生育(草丈・茎数)は移植区が大であるが,直播区の初期生長は旺盛で,移植区に対し播種期のおくれをとり戻すような形をとる。2.直播区の根数は生育初期から急速に増加し,その速度は移植区よりはるかに大である。3.乾田直播では初期の根の生長は湛水直播に劣るが、濯水すると旺盛になる。直播区の根群の発達は良好で,土壌の表層に分布が密になる。4.生育後期になると,直播とくに湛水直播区の根および地上部の生育が鈍化し,秋落的な傾向をとる。この生育を旺盛に保つには根の活力を維持することが肝要である。
著者
安部 秀雄 神前 芳信
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.7, pp.10-14, 1969-12-25

ウシオコムギを用いて播種量と追肥時期の差異が倒伏と玄麦収量にいかに影響するかを検討した。1)追肥時期と玄麦収量との関係は全量元肥と2月28日の早い追肥のものが多収を示した。2)追肥時期と倒伏との関係は2月28日〜3月20日の間の追肥が最も大であり,窒素の追肥量が4kgよりも8kgの多肥が倒伏に影響が大であつた。3)倒伏と節間長との関係は全量元肥区と4月20日追肥区は第5節間長が短くなり倒伏も少なくなるが,追肥量,追肥時期と節間長の関係は明らかでなかつた。4)倒伏と止葉葉面積との関係はr=0.73,r=0.83の有意な正の稲側か認められた。5)倒伏と止葉生葉重の関係は4月20日の調査ではr=0.77,5月20日ではr=0.79の有意な正の相関が認められ,止葉生葉重の重いものが倒伏が大であつた。以上総括すると小麦の全面全層播栽培では止葉の大きさが倒伏に影響するので,収量を増加させて止葉を小さくするには全量元肥の施肥方法が安全であると思われた。
著者
末沢 一男 小西 薫 西村 昭司郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.3, pp.8-12, 1967-06

1.籾の乾燥効果 試験結果の乾燥効果は顕著で,立毛水稲の籾水分を16〜17%まで下げ得るのは容易に出来る。2.籾及び茎葉の乾燥状況 枯れ上りの熟位は籾,茎葉ともに灰白位となり,稍色状が不良である。3.刈取及び脱穀の難易 散布後日を経るに従い,穂首の垂れ込みを生じ刈取作業が困難となるが,籾水分16〜17%になるには3日程度であるからさほど困難を感じない。脱穀の難易については,一部では穂首の折損,調整に困難な点が見られたが大部分は特に問題は認めない様である。4.気象と乾燥効果 散布後の天候の良否は乾燥効果に影響が大きく,降雨がないか少ない場合は高温下であり効果が顕著であるが曇雨天が多ければ籾水分16〜17%程度になるのにも或る程度時日(4〜5)を要する。しかし降雨があった場合でも一旦水分を吸収して戻るが,天候が恢復した時の乾燥は無散布のものに比し遥かに早く戻る。5.収量に及ぼす影響 散布薬量が多ければ若干減収が認められる。又散布時期も早い場合は若干の減収が認められるが成熟期の2〜4日前処理では殆んど減収は認められたい様である。6.茎葉の利用について ワラの利用については,変色が見られるためワラ加工の利用は稍困難と思われる。又家畜飼料としての利用は今後検討することが必要である。7.薬臭の残存程度 本剤は人畜に対し無害と云われているが一種特有の臭気があり,収穫後も籾及び茎葉に悪臭が残る。しかし籾は玄米になると臭気が無くなり,茎葉も1週間〜10日位で殆んど無くなるようである。8.散布置と散布後の刈取適期 10アール当概ね2〜3kgの散布量で足りる。刈取は天候其の他によるが略々散布後3〜4日目に刈取るのが適当のようである。
著者
山本 由徳
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.22, pp.5-11, 1985-12-25

水稲の主稈の第2〜12節の各節1節にのみ分げつを残して,節位別の分げつの生産力を調査するとともに,対照(無処理)区との生育・収量を比較した。一次分げつの発生から止葉展開および出穂まで日数は,残存節が上位節ほど短くなり,主稈葉数は多くなったが,一次分げつの葉数は威少した。そして,それに伴って二次以上の分げつ発生数が低下し,穂数が少なくなって穂重は劣った。しかし,一次分げつ穂重および二次以上の分げつの平均1穂重,さらに主稈穂重には分げつ残存節の影響がほとんど認められなかった。また,対照区では主稈の第2〜11節に分げつが発生したが,処理区の同節位の一次分げつにくらべて,発生から止葉展開および出穂まで日数は短くなり,栄養生長量は劣ったが,とくに第6節以上の差が大きかった。一方,各処理区の株当り穂重は,穂数の差によりいずれも対照区にくらべて劣ったが,1穂重の増加により穂数にくらべて穂重の低下割合は小さかった。また,対照区にくらべて各処理区の1穂重の増加割合は主稈>一次分月>二次以上の分げつの順に大であった。そして,対照区の節位別一次分げつ穂重は,上位節ほど軽くなる傾向にあり,節位による差異がみられなかった処理区と著しく異なった。以上により,主稈の節位別分げつの生産力は穂数の差により下位節分げつほど高いが,節位による1穂重の差は小さいことが明らかとなった。また,主稈の1節にのみ分げつを残存させた場合には節位にかかわりなく対照区にくらべて1穂重が重くなり,また,有効分げつ歩合も高くなる傾向がみられたことから,少数の主稈節に分げつを確保することによって増収する可能性が示唆された。