著者
藍 真澄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.725-734, 2017-04-10 (Released:2018-04-10)
参考文献数
29

高トリグリセライド(triglyceride:TG)血症,低HDLコレステロール(high density lipoprotein-cholesterol:HDL-C)血症はそれぞれ動脈硬化促進因子である.高TG血症ではレムナントやsmall dense LDL(low density lipoprotein)などの動脈硬化を促進するリポ蛋白が増加する.スタチンによる脂質低下療法を行っても残存する高TG血症や低HDL-C血症に対する治療は特に重要である.エネルギー摂取量の適正化を基本とした食事療法や運動療法とともに,ストロングスタチンやフィブラート,ω-3系脂肪酸製剤の有効性が示され,アポリポ蛋白C-IIIに作用する新規薬剤の開発も進んでいる.
著者
山野 嘉久
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.7, pp.1404-1409, 2017-07-10 (Released:2018-07-10)
参考文献数
11

HTLV-1関連脊髄症(HTLV-1-associated myelopathy:HAM)は,ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)感染に起因する両下肢痙性対麻痺を主徴とする神経難病であるが,その症状・経過には個人差が大きく,疾患活動性に応じた治療が必要であり,そのバイオマーカーとして髄液中ネオプテリンやCXCL10の測定が重要である.現在,ステロイドやインターフェロン(interferon:IFN)αによる治療が主軸であるが,近年,病因であるHTLV-1感染細胞を標的とした抗体療法の治験が実施されており,新規治療法として注目されている.
著者
池田 康夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.793-794, 1996-06-10
被引用文献数
1
著者
濱田 篤郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1455-1462, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

渡航医学(travel medicine)とは海外渡航者の健康問題を扱う領域で,その発生を未然に防ぐための予防に重点が置かれる.こうした健康問題は移動中や滞在先の環境の変化に起因するものであるが,途上国に滞在する者にとっては感染症が重要な問題になる.この中でも旅行者下痢症やA型肝炎などの経口感染症は最も頻度が高く,デング熱やマラリアなどの蚊媒介性感染症も滞在地域によってはリスクが高くなる.この他に性行為感染症(HIV(human immunodeficiency virus)感染症,B型肝炎)や狂犬病などが注意を要する感染症である.このような感染症の中にはワクチンで予防できるものも数多くあるが,どのワクチンを接種するかは,渡航者の滞在地域,滞在期間,滞在先でのライフスタイルなどを参考に判断する.最近は日本から海外に渡航する者だけでなく,日本を訪れる外国人が増加しており,内科医にとって渡航医学の知識は日常診療において欠かせないものになっている.
著者
亀田 秀人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.10, pp.2886-2892, 2012 (Released:2013-10-10)
参考文献数
7

RAにおける疾患活動性とは,関節を中心とした臓器障害の時間微分値であり,逆に活動性の時間積分値が関節破壊や関節機能障害に相当する.活動性の評価には関節所見を含めた包括的(総合的)活動性指数が用いられ,DAS28,SDAI,HRAS38などが提唱されている.いずれの指標も臨床的に有用であるが,限界を認識しながら用いることが大切である.
著者
上野 浩晶 中里 雅光
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.3, pp.753-759, 2014-03-10 (Released:2015-03-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

日本を含めた世界中で肥満者が増加しており,その結果として2型糖尿病,脂質異常症,高血圧,脂肪肝,脳卒中,虚血性心疾患などを合併した肥満症患者が増加している.肥満症患者では3%の体重減少でも糖脂質代謝や血圧などの改善がみられるため減量が重要であるが,現実的には食事運動療法のみでは減量できない場合が多く,抗肥満薬の必要性が出てくる.現在,日本ではマジンドールのみが抗肥満薬として認可されているが,リパーゼ阻害薬であるセチリスタットが最近製造承認を受けた.欧米ではリパーゼ阻害薬のオルリスタット,中枢性食欲抑制薬であるロルカセリンやtopiramateとphentermineの合剤などが使用されおり一定の減量効果を認めている.他にも多数の抗肥満薬が開発または治験中であるが,本稿では世界での抗肥満薬の現状と開発状況について概説する.
著者
白浜 雅司
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.2, pp.377-380, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2
著者
鈴木 克洋
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.1058-1066, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
33

非結核性抗酸菌(NTM)は結核菌群以外の培養可能な抗酸菌の総称であり,同菌による肺の感染症が肺NTM症である.肺M. avium complex(MAC)症は同症の80%以上を占め,画像により結節・気管支拡張型と線維空洞型に分類される.近年50代以降の女性の結節・気管支拡張型肺MAC症が顕著に増加している.NTMは環境寄生菌であり,ヒトからヒトへの感染は否定されている.逆に検体からのNTM検出のみでは診断できず,診断基準を満たす必要がある.その概要は肺NTM症に合致する画像所見があり,喀痰から2回同一NTMが培養される事である.肺MAC症の治療はクラリスロマイシンを中心とする化学療法で行うが,その成績は満足できるものではない.従って空洞や気管支拡張などが切除可能範囲に限局している場合,化学療法に外科療法の併用を考慮する.
著者
佐藤 勉 小船 雅義 加藤 淳二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.1272-1276, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
12

アポトーシスのシグナルはカスパーゼファミリーやミトコンドリアを介して伝達されるが,その経路においてreactive oxygen species(ROS)は必須の役割を果たす.一方鉄は,エレクトロンドナーとしてROS産生に関わることで,アポトーシスシグナルを正方向に調節している.アポトーシス細胞死が肝細胞傷害の本態となるC型慢性肝炎では,鉄過剰が病態を増悪させることが明らかとなり,除鉄療法が有効な治療法になることが示されている.
著者
筒井 裕之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.9, pp.2328-2333, 2014-09-10 (Released:2015-09-10)
参考文献数
14
著者
榊原 博樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.12, pp.3089-3095, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
19

アスピリン喘息は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の共通した薬理作用であるアラキドン酸シクロオキシゲナーゼ阻害作用(→プロスタグランディンE2の減少)がトリガーになり,主としてシスティニル・ロイコトリエンの増加が過敏反応を惹起する.アスピリン喘息は他の薬物過敏症と比べて著しく有病率が高く,鼻・副鼻腔疾患の合併が多いなどの特徴的な臨床像をもち,喘息の一つのタイプと考えるべきである.アスピリン喘息はNSAIDsによる突発的な重症発作や死亡リスクを負った存在であり,慎重な対応が必要である.
著者
大島 茂 渡辺 守
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.81-85, 2015-01-10 (Released:2016-01-10)
参考文献数
10

腸管は,栄養の消化吸収を行っていると同時に,外来異物に対する生体防御の最前線でもある.腸内細菌は1×1014個にも及び,腸管免疫系の発達に作用するだけでなく,Th17細胞の分化を誘導したり,制御性T細胞の数および機能を高めたりすることで,腸管の生体防御における恒常性を維持している.腸内細菌の構成異常は免疫異常につながり,各種疾患発症に関わっているのみならず,腸管免疫系を介し腫瘍形成にも関与している.
著者
斎藤 清二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.92, no.10, pp.2053-2058, 2003-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
12

近代医学は生物科学的側面を過剰に重視するあまり,患者の心理社会的側面を含む全人的な配慮をおろそかにしてきた.このような近代医学の偏りを補償するムーブメントの一つとして, Narrative Based Medicine (NBM:物語りに基づく医療)が提唱され,注日を集めている. NBMは,ポストモダンなパラダイムである社会構成主義をその理論的背景とし,人類学,社会学,心理学などの関連領域との学際的な連携をその特徴とする.一般医療におけるNBMの特徴は, 1)個々の患者の病いの体験と人生についての物語りの尊重, 2)語り手としての患者の主体性の尊重, 3)医療における多元性の尊重, 4)非因果論的観点の重視, 5)治療としての対話の重視,などにまとめられる.また, NBMとEvidence Based Medicine (EBM)とは,互いに補償しあう,患者中心の医療実践のための車の両輪的方法論であると言える.
著者
佐々木 毅
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.2499-2506, 1999-12-10
参考文献数
30
被引用文献数
1

ヒトパルボウイルスB19 (B19)は,小児の伝染性紅斑(りんご病),成人での急性多発性関節炎,あるいは胎児水腫等を起こす.また,赤芽球障害(Aplastic crisis,赤芽球勞).更には肝障害,急性腎炎,血球貪食症候群発現にも関与しうる.我々は,慢性関節リウマチ(RA)の活動時病変を有する関節滑膜組織において, B19が活性化され,かつB19がTNFα, IL-6らの炎症性サイトカイン産生を惹起することを見出した. B19はRA関節滑膜細胞(SVC)の中でもマクロファージ,芽中心の樹状細胞, T, Bリンパ球に発現し,オートクライン,パラクライン機転で炎症細胞, SVCの活性化と増殖を促すと推定される.この事は自己免疫病(慢性関節リウマチ)発症における免疫系細胞をターゲットとしたB19持続感染の役割を示すものであろう.
著者
徳田 安春
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.505-509, 2017-03-10 (Released:2018-03-10)
参考文献数
3